獣使い育成学校

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担任

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「はい、それではホームルームを始めまぁーす。早く席に着いてくださぁーい」

 校長先生の家庭菜園の話を半分寝ながら聞き終わった後、サワはEクラスの教室へ移動し待機していた。そこへやって来たのが、茶髪でポニーテール、なんともやる気のない表情の女児。

『女児』と表現したが、それは彼女の身長が低すぎることに起因している。教机の前に立っている彼女の目から下は隠れているほどだ。「小学三年生です」と言われれば、なるほどそうなのかと頷くことができる容姿をしていた。

「えーっと、みなさん席に着きましたねー。それでは自己紹介から始めまぁーす」

 そう言って彼女は黒板の方へ向くと、ポケットから宝石のようなものを取り出し、

「おいでー、ガブリンチョ」

 と呟いた。そのとたん、彼女の右側に小ぶりなトラが出現した。数名の生徒は驚いたような声を上げたが、獣使いの学校なだけあってそのまま事は進行している。

 唯一空いた口が塞がらない人物、窓側の後ろから二番目に座っている男子生徒。香月サワだ。

「ちょ、ちょっと待ってください! なんで平然とトラの上によじ登ろうとしているんですか! 黒板に届かないからトラに乗るとか危なすぎるでしょう! トラが暴れ出したらどうするんですか!」

「この子の名前はガブリンチョだよぉ。すっごく私に懐いてるから、暴れ出したりしませぇーん」

 そんなことを言いながら、黒板に文字を書き始める。なるほどガブリンチョはおとなしく乗られていた。

 黒板に名前を書き終えると、何の合図もなしにガブリンチョが180度回転した。従ってその上に立っている女児がこちらを向く形になる。

「私の名前は水樹マリコでぇーす。一年間あなたたちの担任をするので、よろしくぅー」

 とまぁなんともやる気のない声を響かせる。本当にこの人で大丈夫なのだろうかという顔をクラスの大半の人がしていた。

「私に質問がある人ー。なんでも答えるよぉー」

 定番の質問コーナーだ。ここで普通は「結婚しているんですか?」とか「彼氏いるんですか?」とか聞くのが学園ものの定番と言っても良いだろうが、そのような質問をする者は誰1人おらず、みんなが気になっていたのはひとつだったようだ。

「先生って何歳ですか?」

 クラスの中でもやんちゃそうな、赤髪をスポーツ刈りにした目つきの鋭い男子生徒が尋ねた。

「あぁ? てめぇ後で職員室こいや」

 周りの空気がピンと張りつめた。水樹先生がまとっていたふわふわした雰囲気はなくなり、赤髪の男子生徒を睨んでいる。そしてその激情を読み取ったかのようにガブリンチョも威嚇するような低い声を上げている。

赤髪の男子生徒は額から汗を垂らしながら、

「あ、いや、その、なんでもないです。ほら、先生お綺麗だなぁって・・・」

 それじゃあ質問になっていないのだが、これで水樹先生は気を良くしたらしく元のふわふわした雰囲気を取り戻した。

「なぁーんだ。私の聞き間違いかぁー。ガブリンチョの食事代が浮くと思ったんだけどなぁー」

 質問をした赤髪の生徒だけでなく、教室中が恐怖に包まれた。見た目がロリなことに触れてはいけないということがわかった良い質問だったのかもしれない。

「それでは出席番号1番の人から自己紹介をしてくださぁーい。名前と、好きな獣、今後の抱負をお願いしまぁーす」

 ここでサワは考える。受けを狙いに行くか、難なく済ませるか。「好きな獣は人間です。人間は異性を前にするとみんな獣になるからね!」なんてしょうもない下ネタも考えたが、これは事故ること間違いない。

 しかし、オドオドして普通のことを言うのもなんだかつまらない気がするのだ。遅刻の件でみんなからの評価は落ちているに違いない。ここはウケを狙って一発かましてやろうじゃないか。落ちるとこまで落ちてしまえ!!

「僕の名前は香月サワです。好きな動物はウサギです。ウサギは常に発情期なので男子高校生に似ていると思いました。僕はウサギのように快楽でショック死したりしないので安心してください。以上です」

 男子の含み笑いと、女子の凍てつくような視線を全身に浴びながら席に着いた。

 
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