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ここで、サワが昨日手にした生徒手帳に記されている校則について述べよう。と言っても、大半の部分は普通の高校と変わらない内容なのだが、獣関係の部分は書いておかなければならないだろう。
まず、校内に獣を連れ込むこと、獣を出現させることは基本的に禁止されていない。しかし、1.5mを越える大きさの獣については連れ込み、出現共に禁止されている。さらに1.5m以下の獣であっても、他の生徒、先生に危害を加えることは禁止されており、獣同士の戦いも禁止されている。例外は、審判を付けた競技としての闘技だけである。
昨日は間違って1時間遅くセットしてしまっていた目覚まし時計を正常の時間に戻していたため、登校1日目は寝坊することはなかった。目覚まし時計によって強引に夢から引きずり出されたサワは、自分の獣について考えていた。
闘技をするにあたってスピードの速い獣を使うことは有利になるのだが、中学校の頃は帰宅部で、スポーツはあまり得意でないサワは果たしてどのような獣に選ばれるのだろうか。空を飛ぶ系の鷹や鷲であれば、毎日の登下校が楽になるなぁ。。なんて考えていると、家のチャイムがなった。
「はぁーい、今行きまーす」
「よお! 今日は遅刻しないように迎えに来てやったぜ」
ドアを開けると、朝のテンションとは思えないほど溌剌としたジュンが立っていた。昨日は一緒に帰ったので、家の場所を知られてはいるのだが、まさか迎えに来るなんて。。
「おい、そういうのは美少女ヒロインがすることなんだよ。幼馴染の可愛い女の子が起こしに来てくれるとか、まあ俺に幼馴染の可愛い女の子はいないのだが、朝一で見る顔が男というのもテンション下がるんだよ」
「起こしに来てやったのにつれねぇなー。ま、いいけどよ。早く準備してこいよ。遅れちまうぜ」
さすがに二日連続で遅刻というのもゾッとしないので、早々と準備をして家を出た。
チラホラと上級生が獣に乗って登校している姿が見受けられるが、これも禁止されていない。朝から叩き起こされてご主人を運ぶというのも酷な話ではあるが、サワは非常に憧れている。
と、その時後ろからものすごいスピードで何かが迫ってくる感覚があった。本能で道の脇に避け、何事かと見てみれば女児がトラの上に乗って疾走している。
「あんなにスピード出したら危ないのにな」
そう言った直後、去っていく女児の背中を見ていたジュンが、
「あれって、水樹先生じゃなかったか?」
言われてみれば、小柄なトラに女児という組み合わせで思い浮かぶ人物はあの担任しかいない。 先生の獣使いとしての技量を疑っていた自分がいたが、さすがは教える立場にいるだけの技量は持っていたようだ。いや、車だったらスピード違反だけどな。
実際、あの先生は何歳なのだろうか。彼女自身から聞き出すことは確実に不可能であっても、『学校新聞』みたいなやつで、教師紹介の欄とかに載っていないだろうか。
そんなことを考えながら学校に着き、席に座るとちょうどいいタイミングでチャイムがなった。
「おはようございまぁーす。みんな席に着いてくださぁーい」
朝から気の緩むような挨拶を交わし、生徒が席に着く。
「今日は、自分の獣を決めてもらいたいと思いまぁーす」
大きく期待するような真似はしたくない。サワは、この歳になって希望だけを抱いているような夢見がちな人間になったつもりはない。そりゃあ少しは、かっこいい獣がいいなとか思ったりもするのだけれど、今まで自堕落に過ごして来た人生、そんなに上手くはいかないだろうと思っている。
期待が外れてしまった時のショックを受けるけとを回避しているだけなのだが、自分は大人な対応をしているという勘違いも甚だしい。しかしサワはそこまで気づけていない。サワが気づいている、と言うか感付いでいることは、自分は大した獣を獲得できないのではないかということだった。
獣を決める方法は、無垢な結晶石に向かって呼びかけた時に出てきた獣が自分のパートナーになるという仕組みだ。自分の獣を決める、というより獣が自分を選ぶと言ったほうが正しいだろう。
つまり、有能な人は有能な獣を獲得でき、無能な人は無能な獣しか獲得できないという話だ。しかし戦い方によって向き不向きがあり、一概に有能無能で語れる話ではないのだが、それこそハムスターと虎では越えがたい壁が存在する。
その壁を越えるための技術を学ぼうというのが、獣使い育成学校の目的である。
おっと、話のスケールがどんどん大きくなってしまったが、話を戻そう。自分の獣を決めるという話だ。
生徒は体育館に集まり、続々と結晶石が渡されていく。ひし形で透明の結晶石を手にし、先生の掛け声かとともに生徒が一斉に呼びかける。
『出ておいで!』
全ての生徒の前に獣が出現した。あちらでは虎が、あちらではカンガルーが、いろいろな獣が見受けられる中、サワの前にいたのは、
チラリと覗く前歯、短い尻尾、白い毛並みで大きな目、特徴的な長い耳を持った小柄な獣。
ウサギだった。
まず、校内に獣を連れ込むこと、獣を出現させることは基本的に禁止されていない。しかし、1.5mを越える大きさの獣については連れ込み、出現共に禁止されている。さらに1.5m以下の獣であっても、他の生徒、先生に危害を加えることは禁止されており、獣同士の戦いも禁止されている。例外は、審判を付けた競技としての闘技だけである。
昨日は間違って1時間遅くセットしてしまっていた目覚まし時計を正常の時間に戻していたため、登校1日目は寝坊することはなかった。目覚まし時計によって強引に夢から引きずり出されたサワは、自分の獣について考えていた。
闘技をするにあたってスピードの速い獣を使うことは有利になるのだが、中学校の頃は帰宅部で、スポーツはあまり得意でないサワは果たしてどのような獣に選ばれるのだろうか。空を飛ぶ系の鷹や鷲であれば、毎日の登下校が楽になるなぁ。。なんて考えていると、家のチャイムがなった。
「はぁーい、今行きまーす」
「よお! 今日は遅刻しないように迎えに来てやったぜ」
ドアを開けると、朝のテンションとは思えないほど溌剌としたジュンが立っていた。昨日は一緒に帰ったので、家の場所を知られてはいるのだが、まさか迎えに来るなんて。。
「おい、そういうのは美少女ヒロインがすることなんだよ。幼馴染の可愛い女の子が起こしに来てくれるとか、まあ俺に幼馴染の可愛い女の子はいないのだが、朝一で見る顔が男というのもテンション下がるんだよ」
「起こしに来てやったのにつれねぇなー。ま、いいけどよ。早く準備してこいよ。遅れちまうぜ」
さすがに二日連続で遅刻というのもゾッとしないので、早々と準備をして家を出た。
チラホラと上級生が獣に乗って登校している姿が見受けられるが、これも禁止されていない。朝から叩き起こされてご主人を運ぶというのも酷な話ではあるが、サワは非常に憧れている。
と、その時後ろからものすごいスピードで何かが迫ってくる感覚があった。本能で道の脇に避け、何事かと見てみれば女児がトラの上に乗って疾走している。
「あんなにスピード出したら危ないのにな」
そう言った直後、去っていく女児の背中を見ていたジュンが、
「あれって、水樹先生じゃなかったか?」
言われてみれば、小柄なトラに女児という組み合わせで思い浮かぶ人物はあの担任しかいない。 先生の獣使いとしての技量を疑っていた自分がいたが、さすがは教える立場にいるだけの技量は持っていたようだ。いや、車だったらスピード違反だけどな。
実際、あの先生は何歳なのだろうか。彼女自身から聞き出すことは確実に不可能であっても、『学校新聞』みたいなやつで、教師紹介の欄とかに載っていないだろうか。
そんなことを考えながら学校に着き、席に座るとちょうどいいタイミングでチャイムがなった。
「おはようございまぁーす。みんな席に着いてくださぁーい」
朝から気の緩むような挨拶を交わし、生徒が席に着く。
「今日は、自分の獣を決めてもらいたいと思いまぁーす」
大きく期待するような真似はしたくない。サワは、この歳になって希望だけを抱いているような夢見がちな人間になったつもりはない。そりゃあ少しは、かっこいい獣がいいなとか思ったりもするのだけれど、今まで自堕落に過ごして来た人生、そんなに上手くはいかないだろうと思っている。
期待が外れてしまった時のショックを受けるけとを回避しているだけなのだが、自分は大人な対応をしているという勘違いも甚だしい。しかしサワはそこまで気づけていない。サワが気づいている、と言うか感付いでいることは、自分は大した獣を獲得できないのではないかということだった。
獣を決める方法は、無垢な結晶石に向かって呼びかけた時に出てきた獣が自分のパートナーになるという仕組みだ。自分の獣を決める、というより獣が自分を選ぶと言ったほうが正しいだろう。
つまり、有能な人は有能な獣を獲得でき、無能な人は無能な獣しか獲得できないという話だ。しかし戦い方によって向き不向きがあり、一概に有能無能で語れる話ではないのだが、それこそハムスターと虎では越えがたい壁が存在する。
その壁を越えるための技術を学ぼうというのが、獣使い育成学校の目的である。
おっと、話のスケールがどんどん大きくなってしまったが、話を戻そう。自分の獣を決めるという話だ。
生徒は体育館に集まり、続々と結晶石が渡されていく。ひし形で透明の結晶石を手にし、先生の掛け声かとともに生徒が一斉に呼びかける。
『出ておいで!』
全ての生徒の前に獣が出現した。あちらでは虎が、あちらではカンガルーが、いろいろな獣が見受けられる中、サワの前にいたのは、
チラリと覗く前歯、短い尻尾、白い毛並みで大きな目、特徴的な長い耳を持った小柄な獣。
ウサギだった。
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