1 / 4
俺が執事になったワケ
しおりを挟む
意匠を凝らした豪奢で煌びやかなシャンデリア、落ち着いた雰囲気を醸し出しつつも部屋の主の気品を高めるに十分な働きをこなすアンティーク調のインテリア。
俺の眼前で椅子に腰を下ろす少女の手には俺たちのような人間が使うには高すぎると素人目にもわかるほどのティーカップが握られていた。
「うんうん、良く似合ってるじゃない。いいわ、気に入った」
「俺としてはなんだか堅苦しくて落ち着かないんですが」
「仕事着だもの、落ち着かれては困るわ。ほら、目線頂戴。撮影するから」
「やめてくださいよ見世物じゃないんですから。確かにお仕事の話をいただけたのはありがたいと思ってます。むしろ初対面の誰かのところで働くより以前から面識があるお嬢様の下で働くのは俺としてもうれしい限りというか助かっているというか」
「でしょ?だったらこっちに目線を…」
「ですから!俺が疑問を提唱しているのはまさにこのことでですね!」
俺が声を張り上げるときょとんとして愛らしく首を傾げるお嬢様こと木之崎瑞樹。木之崎財閥の令嬢にして才色兼備、眉目秀麗の完璧お嬢様と名高い美少女。
どんな人ごみの中にいても存在感を遺憾なく発揮しあらゆることをそつなくこなす万能の鬼才。一度助言をすれば環境が劇的に変わるという広い視野を持ち、それを実行させてしまう説得力も持ち合わせる。
人柄は温厚でお淑やか。まるで絵にかいたような完璧美少女ぶりに日本どころか世界が驚嘆したのは記憶に新しい。
品行方正を体現したような彼女はゆったりとした印象を与えながらも決して隙が無い。付け入る隙を模索しているうちに彼女に主導権を握られ、追い込まれた政治家や資産家も多いと聞く。
それが。どうして。
「なんであんだけ完璧だって噂されてるお嬢様が俺みたいな素人の執事なんて雇ってるんですか!もっと本職の方がいらっしゃいますでしょう!?」
「何を不思議がっているのかしら。言ったはずよね、貴方が気に入ったから。いえ、この際だからもっと言うわ。あなたの事が好きだからよ」
…なんでこんな簡単にそのような爆弾発言ができるのだこのお嬢様は。俺が勘違いをしないような人間であったから言外に含まれた友達としての意味だということに気が付けたが、相手によっては交際を申し込まれていると勘違いしてしまっても文句は言えない。執事となるにあたって彼女にはその辺の言動を改めてもらわなければ。
普通の少女でも大問題なのにましてや彼女は財閥の令嬢。一つの問題発言ですべてが塗り替わってしまう世界なのだ。慎重に言葉は選ばなければならない。
「一応変な気を回す貴方の事だからどうせ友達…とか思っているんでしょうけれど違うわよ。恋愛的によ」
「そんなバカなことをおっしゃらないでくださいお嬢様。流石に俺もそんなこと言われて平静を保ってられるほど器が完成していなんです。眉一つ動かさずそんなことを言うお嬢様でもときめくものはときめくんです」
「そ、そう?表情が硬かったかしら…?」
そういって一度向こうを向いて不安そうな声を漏らすお嬢様。何を言っているかは生憎聞き取れなかったが何かを心配していたことだけはわかった。
後ろを向いたまま一つ大きく肩を動かすほどの深呼吸。その吐息が若干色っぽくなっていたのは気のせいか俺の妄想かだと信じたい。欲を言えば妄想だという説も信じたくないがこの際そこは目を瞑ろう。
「悪かったわ…お父様が基本的に思っていることは口に出しても顔には出すなとおっしゃっていて感情を表情に反映させないようにと厳しく躾けられたのよ。
こういう事もたくさん言わされたからその時の経験が残っていたみたい」
振り向いて上目遣いで俺と目を合わせたお嬢様は端的にいって別人だった。
美少女であることには変わりはない。だが先ほどと大きく異なっているのは彼女の表情だった。
先ほどの平然とした余裕たっぷりの表情はどこへやら。羞恥によって肌は耳まで真っ赤に染まり、目は若干うるんでいるようにすら感じられる。先ほどまでの役者然とした美しさとは異なり、小動物のような愛らしさを感じさせる。
…これがギャップ萌え。
「やめてください惚れてしまいます」
「いいのよ惚れて。あなたなら私が養ってあげるわ」
「そんな自分のプライドをなげうつような真似俺には難易度が高いです。でもお嬢様。簡単にそんなこと言ってはいけませんよ。俺を信頼してくださっているのかはわかりませんが俺がお嬢様の敵であった場合、今の発言は餌にしかなりません。都合のいいように切り取られて悪い方向に解釈されるような発言は俺に対しても慎んでください」
「もう、せっかく恥ずかしい思いを前面に出したのだからもう少し狼狽えてくれても良いと思うのよ」
「多分この程度で混乱していてはお嬢様の執事など勤まらないと思いまして」
俺の眼前で椅子に腰を下ろす少女の手には俺たちのような人間が使うには高すぎると素人目にもわかるほどのティーカップが握られていた。
「うんうん、良く似合ってるじゃない。いいわ、気に入った」
「俺としてはなんだか堅苦しくて落ち着かないんですが」
「仕事着だもの、落ち着かれては困るわ。ほら、目線頂戴。撮影するから」
「やめてくださいよ見世物じゃないんですから。確かにお仕事の話をいただけたのはありがたいと思ってます。むしろ初対面の誰かのところで働くより以前から面識があるお嬢様の下で働くのは俺としてもうれしい限りというか助かっているというか」
「でしょ?だったらこっちに目線を…」
「ですから!俺が疑問を提唱しているのはまさにこのことでですね!」
俺が声を張り上げるときょとんとして愛らしく首を傾げるお嬢様こと木之崎瑞樹。木之崎財閥の令嬢にして才色兼備、眉目秀麗の完璧お嬢様と名高い美少女。
どんな人ごみの中にいても存在感を遺憾なく発揮しあらゆることをそつなくこなす万能の鬼才。一度助言をすれば環境が劇的に変わるという広い視野を持ち、それを実行させてしまう説得力も持ち合わせる。
人柄は温厚でお淑やか。まるで絵にかいたような完璧美少女ぶりに日本どころか世界が驚嘆したのは記憶に新しい。
品行方正を体現したような彼女はゆったりとした印象を与えながらも決して隙が無い。付け入る隙を模索しているうちに彼女に主導権を握られ、追い込まれた政治家や資産家も多いと聞く。
それが。どうして。
「なんであんだけ完璧だって噂されてるお嬢様が俺みたいな素人の執事なんて雇ってるんですか!もっと本職の方がいらっしゃいますでしょう!?」
「何を不思議がっているのかしら。言ったはずよね、貴方が気に入ったから。いえ、この際だからもっと言うわ。あなたの事が好きだからよ」
…なんでこんな簡単にそのような爆弾発言ができるのだこのお嬢様は。俺が勘違いをしないような人間であったから言外に含まれた友達としての意味だということに気が付けたが、相手によっては交際を申し込まれていると勘違いしてしまっても文句は言えない。執事となるにあたって彼女にはその辺の言動を改めてもらわなければ。
普通の少女でも大問題なのにましてや彼女は財閥の令嬢。一つの問題発言ですべてが塗り替わってしまう世界なのだ。慎重に言葉は選ばなければならない。
「一応変な気を回す貴方の事だからどうせ友達…とか思っているんでしょうけれど違うわよ。恋愛的によ」
「そんなバカなことをおっしゃらないでくださいお嬢様。流石に俺もそんなこと言われて平静を保ってられるほど器が完成していなんです。眉一つ動かさずそんなことを言うお嬢様でもときめくものはときめくんです」
「そ、そう?表情が硬かったかしら…?」
そういって一度向こうを向いて不安そうな声を漏らすお嬢様。何を言っているかは生憎聞き取れなかったが何かを心配していたことだけはわかった。
後ろを向いたまま一つ大きく肩を動かすほどの深呼吸。その吐息が若干色っぽくなっていたのは気のせいか俺の妄想かだと信じたい。欲を言えば妄想だという説も信じたくないがこの際そこは目を瞑ろう。
「悪かったわ…お父様が基本的に思っていることは口に出しても顔には出すなとおっしゃっていて感情を表情に反映させないようにと厳しく躾けられたのよ。
こういう事もたくさん言わされたからその時の経験が残っていたみたい」
振り向いて上目遣いで俺と目を合わせたお嬢様は端的にいって別人だった。
美少女であることには変わりはない。だが先ほどと大きく異なっているのは彼女の表情だった。
先ほどの平然とした余裕たっぷりの表情はどこへやら。羞恥によって肌は耳まで真っ赤に染まり、目は若干うるんでいるようにすら感じられる。先ほどまでの役者然とした美しさとは異なり、小動物のような愛らしさを感じさせる。
…これがギャップ萌え。
「やめてください惚れてしまいます」
「いいのよ惚れて。あなたなら私が養ってあげるわ」
「そんな自分のプライドをなげうつような真似俺には難易度が高いです。でもお嬢様。簡単にそんなこと言ってはいけませんよ。俺を信頼してくださっているのかはわかりませんが俺がお嬢様の敵であった場合、今の発言は餌にしかなりません。都合のいいように切り取られて悪い方向に解釈されるような発言は俺に対しても慎んでください」
「もう、せっかく恥ずかしい思いを前面に出したのだからもう少し狼狽えてくれても良いと思うのよ」
「多分この程度で混乱していてはお嬢様の執事など勤まらないと思いまして」
0
あなたにおすすめの小説
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした
セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。
牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。
裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる