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◇◇◇ 【第二章】魔法使いと時間の杭 ◇◇◇

天才剛毛ロリ童女を添えて~巻き込まれるチンチクリンもあるよっ!

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 看守とローブ姿の女が戻ると、後ろから看守と同じく青い制服に身を包んだ男たちがこの鉄格子の前に並んで停止する、一人の高身長の男が俺を見下ろす。フチなし眼鏡でも隠しきれないキツい目つきにセンター分けの深い青髪に碧眼、病的なほど蒼白な肌にシュッとした体躯は、だがその身長も相まって、ガリガリというほどの印象を与えなかった。
 センター分けの男は腰だけを曲げ胡坐をかき鼻くそをほじる俺をまじまじと眺めると、再び戻り。

「彼に使者をやらせます、準備を」
 
 そう言って看守たちに目配せをした。
 よーし作戦成功だ、予想通りバカで助かった。

「なっ! おいおい、やめておいた方が良いぞ!? こいつを信用してはだめだ!」

 今まで黙っていた乳山がそんなことを…おいうるさいぞ、これでナシになったらどうすんだ。

「良いんですか? 私が進言しておきながら申し訳ないのですが正直…」
「ええ、構いません、この流れを変えることが出来たならばこちらにとって利益でしかありません、――それに、もしも虚言ならば彼ら(オーク)が始末してくれるでしょう手間が省けて助かります」

 そんな物騒なことを言うセンター細メガネは、目の前の鉄格子の扉をガチャリと開ける。看守やセンター分けにじろじろと見られながら俺は鉄格子をくぐるようにして出ると、ローブ姿の女が俺に没収していた所持品を渡してくる、俺の愛しのマジックアイテムちゃん! それぞれを指にハメていると、センター分けの男は鉄格子を締めようとする看守を静止し。

「リリ・リマキナ、あなたも出なさい」
「え、…え?」

 そう告げた。




「急げ! こっちだ!」
「魔物が来るぞー!!」

 市街地、多くの人間が防壁から離れるように家財や荷物を持ち逃げる中、俺たちは逆側、市街地から外側に向かっていたのだが。

「あ˝あ˝あ˝あ˝あ˝! おかしい、何故だ! 何故こんなことになるのか!」
「あ? 結果的に外出れたんだから万々歳だろうが」
「普通に釈放されただけならね!? キミが! キミが余計なことを言うからこんなことにいいいいい!!」

 リリィは小さな頭を抱え、ごわごわな金髪を搔きむしりぼさぼさにしていく。
 看守とローブ姿の女それとリリィ、四人一組になり街中を移動する中、ローブ姿の女はリリィに近づくと、リリィは正気を取り戻したようにお互い挨拶を交わしていた。

「わたしキラベルの呪詛専攻でして、アルマって言います学位は一応O-3っす」
「え、あ、ああよろしくアルマ君、一等級なんだなスゴイではないか、ジーコ先生は元気かね?」
「ヘヘッ、すごいだなんて…あ、ジーコ先生は元気っすよ、この間もリリィさんの話してたっす、心配だとかどうとか」
「そうか、迷惑かけたな」

 はたから見れば、このアルマとか言うローブ姿の女に話しかけられているリリィは妹か親戚の子にしか見えない、ましてや敬いや敬意を持ってさん付けで呼ぶような間柄には見えない。だが事実、コイツはアルマや俺の前を走っている看守に、何故かさん付けで呼ばれている。

「なあおい、このちんちくりんはそんなにえらい奴なのか? 正直そうは見えねーが」
「なっ! 何を言ってるんすか貴方は! このリリィさんは世界唯一の高度教育機関、キラベルきっての天才魔術師なんすよ! 本来私なんかが話して良い相手じゃないんす!」

 …このボロ布を着こなしてるチンチクリンが? 若干鼻を高くしているリリィに疑いの目を向ける。キラベルってのもよく分かんねーが、まあ別に疑うようなことでもねーか、今重要なのはさぞかし使えそうってことだ、この先戦闘になったらコイツの陰に隠れておこう。
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