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◇◇◇ 【第二章】魔法使いと時間の杭 ◇◇◇

天才剛毛ロリ童女を添えて~オークの大軍を説得で帰らせる、もあるよっ!

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「ん? 隊長、なにやら、こっちに歩いてくる輩が…」
「あん?」
「……」

 俺の背中では小さくなり、さらにアルマの陰に隠れたリリィが「何を馬鹿なことをしている!」と呼び止める声が聞こえ。

「ん…? あいつ、人間じゃない、魔物ですね隊長」
「…なんだと?」

「たのもーーー!!!!」


 俺はそれを無視し、大声でそのオークに話しかけた。

「なっ! 何をしているんだキミは!」
「死にたくない! 死にたくないっす!!」

 俺の今やるべきこと、それは、――このオークの大軍を<説得>し、引かせること。

「…なんだ、あいつ?」
「さあ、この街のヤツでしょうか?」
「そちらの礼儀や流儀は存ぜぬが、けふの戦の事柄について、始末を付けに来た! どうかそちらの長に話しをさせてもらえないか!」
「…」
「…なんだと? ならぬ! 話は既についておる! それに、魔物とはいえ貴様のようなどこの骨ともわからぬ輩に、長は会わせられん!」

 それに、と隊長オークの隣でこちらに返答を返してきていた髭を蓄えたオークは「控えている兵は何のつもりか! それがそちらの礼儀か!」とつづけた。
 …あ? 兵? 俺は後ろを振り向く――、家だったものの残骸を蹴散らしながら青い制服に身を包んだ数十人で構成された兵たちが隊列を組み、隊長オークの正面でいがみ合うように停止する、――俺を挟んで。
 ……勘弁してくれ。俺は前後を挟まれるような形で二つの脅威に晒されていた、交渉の最中にこんな兵隊共が来やがるとは、クソがっ!

「違う! これは街を守るための兵だ! いまし等に危害を加えるものではない!」
「かっ! 同じことよ、我らの進行の邪魔をする輩は全て敵、そこを退け! でなければ殺す!」

 クソッ…駄目か!
 オークの兵が武器を構え、同時に、後ろにいる兵たちも武器を構え、一触即発、そんな雰囲気のなか、後ろの兵から男の声が聞こえる、背の高い、センター分けの男がこちらに向かって歩いてくると、オークの隊長は自分たちの兵を静止させ、センター分けの男はそれを見ると、軽く一礼し話しかける。なんだ? どうなっている。

「今日はどの様なご用件かな?」
「はっ、見れば分かるだろう、戦だ」
「ふむ……前回の使者はお気に召さなかったようですね」
「あの戯けを送ったのは貴様か、バーゼル」
「…早速で悪いのですが、このものを次の使者に任命しました、連れてゆきなさい」
「……。」

 オークの隊長はそのいかつい顔でまじまじと俺のことを見ると、鼻をボフゥウと鳴らす。お気に召さなかったようだな。

「冗談だろ」
「いえ、本気です」
「だとしたらバカだな、はあ、何度やっても同じだ早くおわらせちまおう」

 隊長が腕を振り上げると、周りで静止していたオークたちが、武器を構え、ボフボフと鼻を鳴らし、今にもこちらへと突っ込んでくる勢いで猛りだす。バーゼルと呼ばれたセンター分けの男は小声で「これだから野蛮な魔物は…」と眉間にしわを寄せ、攻撃に備え、反撃の構えをとる。リリィ達は俺の後ろでアワアワと辺りを見回し、焦った様子で身を隠せるところを探していた。
 そんな時、俺は両手を広げると。

「俺は魔族だ!!!!」

 と大声で宣言した。
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