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◇◇◇ 【第二章】魔法使いと時間の杭 ◇◇◇
天才剛毛ロリ童女を添えて~後日談、もあるよっ!
しおりを挟む「ねえ見てアレが例の…」「思ってたよりも小さいわね」「あの魔族が…」「しっ…! 聞こえるぞ」「本当に戦争を退けた立役者なのか?」「バーゼル賢者も他のキラベル生徒も言ってたぞ」「ああ、俺実際見たって奴に聞いたんだが、家よりもデカい魔族を一瞬にして消したとか」「何だよそれ…でも、それがホントならおっかないな」
~後日談~
俺は、あの元同僚をこの街から退け、この街の英雄として生涯奉られることになる、はずだったんだが…。
この世の中そんな優しくできているわけじゃねーようで、わざわざ戻ってきたかいがねーなと、買い出しに行かされた帰り道、俺はまだ復旧作業中の大通りの真ん中を、つまみ食いしながら考えていた。
「はあ…、おい何見てやがんだ、その汚ねえ作業着ケツに突っ込んで、奥歯ガタガタ言わされてーか? あ?」
「ヒッ! すっ、すみません!」
一体何のつもりで見られているか分からねーが、とにかくうっとおしかったので追っ払おうとそんなことを言った後、あのチンチクリンの言葉を思い出した。
「いいかい、人間と共存していきたいのなら、まずその言葉遣いを改めることだね、キミは確かにこの街の英雄だ、けれどそれ以上に以外に、皆キミのことを知らないのだよ」
クソッ! めんどくせー…。確かにこの街に戻って来たのは人間と共存するためだ、だがそれは俺が自堕落に生活するためで、なんで他の奴なんかに気を使わなきゃなんねーんだ。大体アイツら、俺の功労会だ何だと言いながら何で俺が買い出ししなきゃなんねーんだ! おかしいだろ! つーかこの街を救った英雄だぞ!? なんでパーティ会場がリリィの家なんだよ、普通こういうときってもっパーっと出来る所でやんだろ、なんであんなゴミ屋敷でなんか…!
……あ?
道の真ん中でイライラと悶えていると、誰かが俺の裾を引っ張るのを感じ、振り返ると、そこには小さな子供(ガキ)とその横には母親らしき女が立っていた。
「あ、あの、あのね…」そのガキはもじもじとしながら俺を見上げるが、俺は突然のこと過ぎてどう反応を返せばいいかと悩んでいるところに、何処からか取ってきたのだろう一輪の花をこちらに向かって差し出してきた。
「魔族さん、ありがとう!」
「…………あ?」
感謝された。
その小さい手に持っていた花を、両手のふさがった手で何とか受け取る。
「本当に、助けていただきありがとうございました、あのこれ、家で作っているハーブティなんですけど、どうか持って行ってください」「あ? えっ、ちょっ…」そう言うと母親は、俺の答えも待たずに抱えていた荷物の上にそれを置き、子供の手を引きながらそそくさと頭を下げながら大通りを上っていく。
…………。
分からねえ、これは貢物的な意味合いか? そうでなきゃあ、純粋な感謝?
俺がポカンとその場に突っ立っていると、それを見ていただろう大通りの店から住人たちが大勢俺のもとへ駆け寄ってくる。
「ウチの魚持ってとくれよ!」「魔族さん! うちのパイは絶品だよ!」「ほら今から寒くなるからウチのマフラーも持ってとくれ!」「こんな小さな魔族さんが倒したんて信じられないねー」「ありがとうね魔族さん! 良かったらウチの酒場寄ってってくれ! 安くしとくよ!」「これ! この果物、艶もよくて良いだろう? 持ってってくれ!」
「あ˝!? ちょっ待てお前等! 落ち着け! 持てねー! そんな持てねーから!!」
パンッ! パパン、パンッ!! クラッカーのリボンが大量に乗せられた荷物に掛かる。
「主役の登場だぞ」「お帰りなさいっす、ジンさん」「ジン君、どうだねこの飾り付けは…って、なんだその荷物!」「うおっ! あの金でよくもそんなに買えたものだな、このお買い物上手めっ!」
前すら見えないほど高く積まれた荷物に、既に限界を超えていた腕と足を震わせながら玄関で倒れこむ。
「だ、大丈夫かね!!」
「だ、大丈夫じゃねーよ、街の奴らが勝手にどんどん積むもんだから、最終的にこんな荷物に…」
「この街に馴染めたようで良かったですね、私も啓蒙活動にいそしんだかいがありました」部屋の奥からのんきに、口に付いたジャムをふき取りながら出てくるバーゼルに嫌味の一つでも言いたい気分だったが、そんな気力はとうに無くなっていた。
「みんなジンさんに感謝してるっすよ! 中に入って、一緒に食べるっす!」
「グッ…動けん」
「ったく、だらしないな、ほらっ掴まれ」
乳山の肩に手を回し、部屋の奥へと進むと、そこには大きな膝の高さほどの丸机に、豪華な食事と、辺りには一面の飾り付け、ココまで来る途中、アルマにかぶせられたパーティハットと、この陽気な眼鏡は気に入らないが、同時に食べさせられた鳥の足は今まで食べたどの料理よりもうまく、さっきの疲れも吹き飛び、流石の俺もテンションが上がっていた。
「では、今日の主役から一言、貰おうじゃないかね」
リリィや他のメンツは着席し、こちらを見上げながらグラスを手に持っていた。
「あー、正直、コンパはいつまでたっても開催されねーし、乳山は揉ませてくれねーし、酒池肉林がこんな規模かよとか、こんなもんで気分良くなって、他の約束を忘れるほど俺はバカじゃねーが…」
皆、さっきまでの顔がひきつっているのがわかる。
「ケケッ…ま、今日のところはこれで勘弁してやる……カンパーーイ!」
「「「カ…カンパーイ」」」
「なんなんだね! もう少し言い方というものがあるのではないかね!」「そうっすよ! この料理も美味しいっすから文句言わないっす!」「お前は相変わらずだな…ちょっ何どさくさに紛れて揉もうとしているんだ! やめっ、止めないか!!」「あ、暴れないでください! ワインが掛かります!」「お前ら! 暴れるならまた牢屋にぶち込む――ちょっわあああああ!!」
「大人しくしやがれ! 揉みずれーだろうが!!」
「キミ達! いい加減にしたまえ!!!!」
きっと。
きっとこの時の俺は幸せを感じていたのかもしれない。下らない、端にも棒にもかからない、そんな下らない幸せを。
愚かにも、この時を、この時間を、止めておきたいと過ぎてから思うのだから。
応援ありがとうございます!
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