奇病患者は綺麗に歌う

まこと

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4話

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病室の戸が開き、開いた戸の方向を見た。
そこに立っていたのは、1人の患者。
腰のあたりまである綺麗なストレートの茶髪に、美女と言い表してもいいような整った容姿。そこに青のグラデーションの瞳も相まって、思わずじっと見つめてしまう。
だがそれはすぐに、来ていた衣服から覗く手足や首に向けられる事となる。彼女の腕は、腐ったような跡と、継ぎ接ぎで埋め尽くされていた。
しばらくの間沈黙が流れるが、それは華河によって破られる。

「あ、北河くん!おかえりー。どこ行ってたの?」

「また腕が腐っちゃったから、繋げに行ってたんだ。…ところで、その人は誰なんだい?信孝」

何やら華河と親しげに話す患者。どうやら北河と言うらしいこの人物。そういえば、ここの同室患者の名前も北河だったよな…
仮に同一人物だとしても、カルテに載っていた写真は髪は長くなく、むしろ短い方だった。本当に本人なのか、疑わしいところはある。

「えとね、新しい担当医さんのサトルってゆうの!北河くんもご挨拶しないといけないんだよ」

「そうだね、紹介が遅れました。僕の名前は北河 伸と言います。奇病はゾンビのように体が腐っていく病気で、基本的には死 んだりしません。後、誤解される事が多いので言っておきますが、僕は男です」

…男だったのか、その見た目で…
というか、あのカルテ情報ガバガバすぎだろ。
写真ぐらい新しいの撮っておけよ、全く…

「北河か、まぁさっきも言われたが、俺は新しくここの担当医になった鷹村覺だ。よろしくな」

軽く自己紹介をした後ふと時計を見ると、あと少しで事務仕事に行かなければ行けない時間だった。

「って、もうこんな時間!華河、北河。悪いが俺はもう戻るから、なんかあったらナースコール押しとけ」

そう告げ、病室を後にした。
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