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第二章 冒険者で行こう

第十八話 この盾なんの盾、気になる盾

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「ムーロさん一体何を運んでるのかしら? 普通の盾ではありませんわよね」

 流石にこんな面倒な相手に狙われるような盾ですので普通の盾ではないはずですわ、いくら魔法の盾といいましてもね。

「流石にどんな盾か教えてほしい所ですわね」
「そ、そうですね。わたしも知っておきたいです、どんな盾なんでしょうか」

 ムーロさんは少し考えて話し出しましたわ。

「……そうですな、こうなってしまっては話しておいた方がよいでしょうな」

 ワタクシ達は全員でムーロさんの話に耳を傾けます。

「魔法の盾ではあるのですが、この盾はかつて『魔王カステリオ』の副官魔人将『ゾルバディ』が使っていた剛魔の盾なのです」
「ゾルバディ? やだ、それ二三〇年前の人魔戦争の魔王軍の総司令官じゃないのよ」

 カステリオとゾルバディ、どうやら昔いた魔王とその配下のようですわね。その魔王が昔人間と戦争してたという事ですわね。

「カステリオは穏健派の魔王でしたが人間たちに攻め込まれて滅んでしまった魔王ですね、カステリオの領地だった場所が現在のチヨルカンになっています」

 マウナさんがカステリオを説明してくれましたわ、でも何故魔王でなくその配下の持っていた盾を狙うのでしょう?

「何故、カステリオでなくゾルバディの持っていた物を欲しがるのでしょう?」
「ああ、それはですな。カステリオより実力ではゾルバディの方が上だったのですよ」
「確かゾルバディは死ぬ前に自分の盾に念を込めていたなんて話もありますね」

 いわくつきの盾なんじゃないんですのそれ?

「その盾を使って何らかの方法でゾルバディを復活させるという事ですの?」
「ど、どうなんでしょう。そんな方法があるならその盾の価値は跳ね上がりますよね」

 ワタクシ達の話を聞いてたムーロさんが。

「縁の品を媒体にしての召喚術や復活の儀は流石に聞いたことありませんなぁ」

 ムーロさんが否定しますが盾を狙うのにはやはり理由があるはずですわよね。
 しかしここでずっと話していても仕方ありませんわね。

「さて、ここでずっと話し合っていても答えは出ませんわ、皆さま先に進むとしましょう」
「そうですな、なるべく早く森を抜けた方が良いでしょうな」

 こうしてワタクシ達は皆馬車に乗り込みまた森の中を進み始めましたわ。
しかしなんでこんなルートにしたのでしょうねぇ、一応森の先に村があるようでそこで休む予定ではありますがすんなりと森を抜けれるとは思えませんわね。


――
――――

 予想に反して案外すんなり森の中を進めておりますわ。

「こうも何も無いと逆に不安になりますね」
「そ、そうですね。わたしなんてもう不安でしかたないですよ」
「先ほどの襲撃に絶対の自信があったとでもいうのでしょうか? うーん、流石にそれはありませんわね」

 しかし事実いまだ何も起こってはおりませんわね、そんな状態のまま時間は過ぎてゆきますわ。本当に諦めた?

「何もおきませんなぁ」
「このまま何もなければいいんだけどねぇ」
「森の中で何もないという事は……おそらく出てすぐと言うのが絶好の襲撃ポイントだと思うんですのよね」
「そうねぇ、次仕掛けるならそこよねぇ」

 森の中で無いとするなら次は出口での待ち伏せですわねとベティさんとの意見も一致したところで警戒しつつ森を更に進みますわ、二度ほどモンスターの襲撃を受けましたが、完全に野良のモンスターの襲撃でしたわね。

 しばらく進んでいきますとそろそろ森を抜けるという所まで来ましたわね、森が少しづつ明るくなってきておりますわ。
 
「モンスターの襲撃は二回ありましたけど、異世界人のいたときのような理不尽さは無かったですね」
「そうですわね、ですが出口付近も十分に注意すべきポイントですわよ」
「さて、そろそろ森をぬけますぞ」

 ムーロさんが前方を指さしておりますね、目視で確認できる範囲では何もありませんが注意せねばなりませんほぼ確実に出口付近で仕掛けてくるでしょうね。

「ムーロさん注意しつつ馬車を走らせてくださいな、ベティさんもムーロさんを守ってくださいまし、アルティアさんは何時でも回復魔法を使えるようお願いしますわ。マウナさん風の魔法で弓での襲撃に備えることはできます?」
「簡単な風の防御幕でいいなら可能ですね、よほど優秀な弓使いが出てこなければ矢をそらすことはできると思います」
「十分ですわ、何も無いよりはマシですからね」

 ワタクシの指示に皆が頷き準備しておりますわ。さあ、ある意味ここが正念場ですわよ。


 森を抜け少し進んだところ、予想通りに十数人の男たちが道を塞ぐように待ち構えておりましたわ。
突っ切っていきたい所ですが相手も馬に乗った男が何人かで道を防いでいたので突っ込むわけにもいかず馬車を停めることになりましたわ。

「ご丁寧にお出迎えですわよ」
「行き成り矢が大量に降ってこなくてよかったですね」
「そこは運が良かったですな」

 男たちは盗賊のようですわね、薄ら笑いを浮かべながらこちらを見ていますわ品定めをしてるところでしょうかね?

「へへ、アイツらの話の通りだったな」
「ああ、しかも女どもは全員上物ときたもんだ売り飛ばせばいい金になるぜありゃ」
「売り飛ばすにしても俺たちが楽しんだ後だろ」
「はは、ちげぇねぇ」

 テンプレ的な野盗集団ですわね、ワタクシ達は馬車から降りて戦闘準備をしますわ。

「やだわー、お姉さん売られちゃうのかしら?」

 ベティさんが盗賊たちの言葉に対して反応してクネクネおりますわ。

「お前どう見てもオッサンだろうが!」

 リーダーらしき男がベティさん相手に叫んでおりますわ、律儀な事ですわね。

「さてさて、ここは通行止めですんで、通行料として有り金と荷物全部置いていってもらおうか」
「はぁ……お約束のようなセリフですわね」

 どこの世界も盗賊やクソヤンキーの類いは似たようなセリフを必ず言いますわよね、これってお約束なんですの?
 仕方ありませんので軽くひねって差し上げますか、そう思っていますと。

「マナカちゃん少し注意した方がいいわよ、彼等確か討伐依頼が出てる盗賊団よ対象は五等級以上の冒険者の依頼よ」
「わ、わたしもその依頼なら見た事あります、カルザド盗賊団ですよね」

 ベティさんとアルティアさんの話を聞いて盗賊団のリーダーらしき男が笑いながらこちらに話しかけてきますわね。

「そこのオカマのオッサンと眼鏡の姉ちゃんは俺たちの事を知ってるようだな」
「ワタクシはあなた方なんてまーったく知りませんわ、知ってるとなんですの?」
「知ってるなら話が早いだろ? 俺たちの恐ろしさも知ってるわけだ、大人しく荷物を渡した方が身のためだろ?」

 たかだか五等級程度の討伐依頼対象になってるような盗賊団がどうしたって話ですわね、ザルバ以下じゃないですの。

「マナカちゃん煽るわねぇ」
「カルザド盗賊団だと賞金首にもなっていますなぁ」

 ムーロさんが盗賊団に賞金がかかってることも教えてくれましたわ、良い小遣い稼ぎにもなりそうですわね。

「貴方がたに渡すモノなんて何もありませんわ、大人しく貴方がたに情報を提供した人物の事を吐いて消えなさいな」
「お嬢ちゃんは状況が分かってないようだな、仕方ねぇなぁ紳士的に話をつけてやろうと思ったんだがなぁ」

 そう言うと盗賊たちは武器を構えましたわ。ま、盗賊が素直に黒幕の名前を吐くわけないですわよね。仕方ありませんわね少し数は多いですが全員ぶっ飛ばすとしましょうかね。

「どうやらあちらの紳士の方々がエスコートしてくださるようですわよ。こちらも淑女としてお付き合いして差し上げましょう」

 ワタクシの言葉と共にムーロさんは馬車に逃げ込みベティさんとアルティアさんが馬車を守りますわ、
マウナさんはワタクシの後ろに付きますと既に魔法の詠唱を始めておりますわ、マウナさんが詠唱をするという事は上位の魔法ですわね。

 こうしてワタクシ達とカルザド盗賊団の戦いの火ぶたが切って落とされましたわ。
 

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