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第三章 昇格試験と国の特産物

第二十七話 コルリスよ! ワタクシは帰ってきた!

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「なんだか凄く久しぶりな気がしますわー!」
「そうねぇ、往復で一週間くらいのはずなのに凄く久しぶりに感じるわねぇ」

 ワタクシ達はコルリスの街に戻ってまいりましたわー。
 横井〇一さん的に言えば「恥ずかしながら帰って参りました」って所ですわね……別に恥ずかしくないからコレは違いますわね。

「さあ、まだ日も高いうちにブレンダさんに会いに行きますわよ!」
「そ、そうですね、ギルドに無事に終わったことをほ報告しないといけないですね」

 馬車も返さないといけないためにワタクシ達は街に帰ってきた足でそのままギルドに向かいましたわ。

「ブレンダさーん! 貴女のマナカさんが帰ってきましたわよー」

 ワタクシがそう言いながらギルド内に入っていきましたがブレンダさんが見当たりませんわ、代わりにいたのが以前ガリアスさんに叱られてたジュリとかいう小娘ですわね。

「む、ブレンダさんがおりませんわね」

 ジュリは以前に叱られてたのにもかかわらずまたネイルをデコっておりますわね、そしてジュリの隣ではオッサン職員が死にそうな顔で冒険者たちの相手をしておりましたわ。

「あの職員相変わらずですね……」

 マウナさんがジュリを汚物を見るような冷たい目で見ておりますわ。

「あー、ジュリちゃんが今日は担当してるのね。という事はブレンダちゃんは今日お休みね」

 ベティさんの発言にワタクシは少し悲しい気持ちになりましたわ、仕方ないのでワタクシはジュリの態度をガリアスさんにチクることで憂さを晴らすことにしますわ。

「ガリアスさんおりますでしょうか? お宅の所のコギャル職員がまたサボっておりますわよー」

 ワタクシの声にジュリが反応してワタクシの方を見るとニヤりと笑いましたわ。

「ふふん、ハゲオヤジは今外出中なんよ、いくらハゲオヤジを呼んでも無駄よムダ」

 と、ジュリが勝ち誇っているとハゲオヤジことガリアスさんが丁度戻ってきましたわ

「ほほう……ジュリ、テメェはまたサボってやがったんだな」
「なんで、もうもどってきてるのよー!」
「思ったより早く用事が済んでなぁ」

 ワタクシとマウナさんはジュリを見てニヤっと笑ってやりましたわ。
 アルティアさんとベティさんも苦笑いをしておりますわ。

「ジュリ、お前は後で覚悟しとけよ」
「そんなー」

 ガリアスさんがワタクシ達を見て。

「随分と大変だったみたいだな、昨日ムーロ氏からの連絡が来て大体の事は把握しているぜ。ま、お疲れさん」
「ええ、アレはどう考えてもワタクシやマウナさんのような駆け出しの仕事内容じゃありませんでしたわよ」
「前にも言ったがお前さん達は八等級の実力じゃないだろうが」

 呆れた顔でガリアスさんが言いますわ、ここで話してるのもなんだという事でギルドの奥の部屋で話すことになりましたわ。

「ムーロ氏が本当に感謝してたみたいだぜ、かなり強烈な襲撃があったようだな」

 ガリアスさんがニヤニヤしながら話しております、ベティさんがガリアスさん相手に。

「笑い事じゃないわよ、あんな奴等の事聞いてなかったわよ」
「組織的な敵だったようだな」
「ガ、ガリアスさんは何かご存知なんですか?」
「いやいや、流石に知らねぇよ」

 ガリアスさんは少し真剣な顔をすると切り出してきましたわね

「お前さん達というかマナカ嬢ちゃんとマウナ嬢ちゃんなんだが昇格試験に挑戦しないか? しかもここだけの話なんだが本部にも掛け合って承認は得ている話だ」
「昇格試験ですか?」
「うふふ、ついに来ましたわね」
「しかも、少し危険な試験内容だその代わり特例での一気に三ランクアップになる」
「何故ワタクシ達だけが特別ですの?」

 聞いた話では二ランクアップはたまにあるようだが三ランクとなると例がない。

「そうだな、まずは俺が見てもお前たちの実力は明らかに八等級じゃないのとムーロ氏の依頼だ。
 ムーロ氏の報告からしてあの依頼の難易度は結果的にだが四等級以上が受ける依頼と同等の依頼として扱うことになった」
「しかし、ワタクシ達二人だけ上がるというのはどうかと思いますわ」

 ワタクシとマウナさんだけが上がるのはどうなんでしょう? どうせなら全員でとは思うのですが……アルティアさんはメンバーじゃないんでしたわね。

「ああ、パーティーメンバーのベティも一ランク上がる事になる、アルティアはどうするんだ?」

 アルティアさんにガリアスさんが問います。

「ど、どうするとは?」
「アルティア、お前はマナカ嬢ちゃん達の正式なメンバーじゃないから昇格試験を受ける事はできるが一人で受ける事になる」
「あ、あぁ」

 アルティアさんは基本がソロですからこういう時は困るでしょうね。
 ワタクシはマウナさんに小声で話しかけます

「マウナさん、ワタクシの提案ですがアルティアさんを正式なメンバーとして勧誘したいのですがどうかしら?」
「アルティアさんなら歓迎ですよ」

 ふふ、決まりですわね。ならばここでハゲオヤジの目の前で勧誘しましょう。

「ハゲ……コホン、ガリアスさんとアルティアさんにワタクシから提案がありますわ」
「今何かハゲって聞こえなかったか?」
「気のせいですわ、そしてそんな些細な事はどうでもよろしいのです!」
「わ、わかった」

 危ないですわねもう少しで心の声が漏れるところでしたわ

「アルティアさん」
「は、はい」
「今ここで決めていただきたいのですが、これからもワタクシ達と固定のパーティーを組みませんこと?」
「あらー、マナカちゃんそれ名案ねぇ」

 ベティさんも賛成のようですわね。

「アルティアさんが良ければ私も歓迎です」
「わ、わたしでいいのですか?」

 アルティアさんも自分に自信があまりない方なのですね……その容姿だけでも十分自信になるというのにしかも治癒魔法のエキスパートですわよ。こんな人材逃すわけがありませんわ。

「まったく! 全然! 問題ありませんっわ!! たとえ反対する輩がおりましてもボコってでも賛成させるので問題ありませんわよ」

 ワタクシの言葉にアルティアさんは考え込みます。

「ただ無理強いはしませんわよ、今回の臨時パーティーでワタクシ達の事を少しは分かっていただけたと思う事ですし、アルティアさん的にワタクシ達とは合わないと思うのなら断っていただいても結構ですわ」

 アルティアさんは首を振っておりますわね

 「い、いえ嫌だなんてそんな事はありません。わ、わたしも皆さんと一緒に冒険したいです」
「と、言うことは?」
「は、はい。こちらこそお、お願いします」

 これでアルティアさんも正式にワタクシ達のメンバーとなりましたわ。

「ようこそ、ワタクシ達のパーティーへ」
「歓迎します」
「いらっしゃいよー」

 アルティアさんが加わったことでガリアスさんに話を戻しますわ。

「アルティアさんを含めたこのメンバーで試験に挑戦しますわ? 問題はありませんわよね?」
「ああ、そいつは構わんよ、しかし三ランク上がるのはマナカ嬢ちゃんとマウナ嬢ちゃんだけだ、アルティアとベティは一ランクアップになる」
「そこは仕方ないですわね……最初からそう言う話ですものね」

 ガリアスさんは紙を一枚取り出すとワタクシ達に差し出してきました、ギルドへのパーティー登録書ですわね? 申請は前に行ったはずですが?

「その紙はなんですの?」
「ああ、パーティー登録は受けてるがメンバーが増えてるから追加申請だな、ついでにパーティー名を決めてほしい」
「あー、あの灰色の虎グレイタイガーみたいなヤツですわね」
「ああ、名前があると色々便利でな」

 正直面倒ですわねぇ、適当でいい気もしますわね。

「マナカさん! パーティー名ですよ凄くカッコイイ名前を考えましょう!」
「わ、あたしもついにパーティー入りですか感慨深いです」
「名前は重要よ、変なパーティー名だと舐められるから注意した方がいいわよー」

 ……oh 皆さんヤル気満々ですわねぇ。
 ガリアスさんは紙を渡したあと試験について話してくれました。

「試験は三日後を予定している、都合が悪いならすぐに言ってくれ」
「三日後ですか? 問題無いと思いますわよ」
「では一応三日後の予定で進めておく、試験内容はちょっと特殊だがお前たちなら問題無いと思う」
「いやだわぁ、この場合の特殊っていいことないのよねぇ」

 ベティさんが嫌そうな顔をしておりますわね、ベティさんがこんな顔をするという事は本当に面倒な可能性がありますわね。

「コルリスの街を東に出た場所すぐにダンジョンがあるのは知ってるな」
「そういえばベティさんと組んでからも行ったことないですわね」
「そういえばそうですね」
「依頼でもなきゃ行こうとしてませんでしたものね」
「あー、続けていいか?」
「ええ、どうぞ」

 ガリアスさんに注意されてしまいましたわ

「さて、そのダンジョンの二階層で新しいエリアが発見されたんだ」
「あらあら、大発見じゃないの」
「ああ、だが発見されただけでまだ調査は殆ど行われていない」
「そ、その発見されたのはい何時くらいの話でしょう?」
「まだ発見されたてだ。駆け出しが偶然見つけてなそれが今から五日前だ」
「ワタクシ達があの依頼で街を出たくらいですわね」

 ダンジョンの低層階の隠しエリアですか、話の流れからしておそらくそこの調査が試験ですわね。

「そのエリアの調査がワタクシ達の試験ということですわね?」
「話が早くて助かる、その通りだ」
「やはり面倒な内容じゃないのぉ」
「そうなんですか?」

 嘆くベティさんと疑問を口にするマウナさん。

「そうよー、未開拓エリアですもの低階層でも強いモンスターが出る可能性もあるし、変な罠があるかもしれないのよぉ」
「ですがお宝がある可能性もありますわよね?」
「まあ、そうなんだけどねぇ、危険の方が多いわよきっと」
「で、ですが、た、たしかに罠解除スキルを持つ仲間はほ欲しいですね」

 罠解除ですと盗賊や暗殺者が持ってることが多いスキルですわね。確かにワタクシ達には専門で罠解除が行える方はいませんわね。ワタクシも流石に罠とかは専門外ですわよ。

「そのエリアを見つけた駆け出しは依頼達成の帰りに見つけたという話だったのでそこまで奥にはいかずに引き返してきたそうだ」
「賢いわねぇ、未知のエリアに消耗した状態で入るのは自殺行為だものねぇ」

 まあ、普通は万全の準備で挑みますわよね。ただ逸って突っ込んで全滅してる方々もいるのでしょうね、ダンジョンのお宝なんて早い者勝ちですものね。

「ああ、だからこの話は本部と俺たちとその駆け出しくらいしかまだ知らない話だ。だからこそお前さん達の実力を測るにはもってこいだとも思っている、報酬もそれなりのものを払うから受けてみないか」
「お宝があった場合はワタクシ達が頂いてしまってもよろしいんですの?」
「かまわないぜ。ただ何があったかだけは報告してほしい、未開拓エリアが大規模過ぎた場合はある程度調べてくれればいい、探索状況で報酬を決めることにする。
 安全が第一だからな、試験内容も一定の範囲の調査ができていれば合格とするつもりだ」

 良いんじゃありませんこと? ワタクシ達が一番最初に調査していいなんて冒険者としてはかなり面白いかと思いますわ。

「ワタクシは問題有りませんわ、この内容で試験お受けいたしてもよろしいですわよ」
「私はマナカさんがいいなら良いです」
「わ、わたしもお二人に合わせます」
「ふぅ、あなた達ならそう答えるわよねぇ、いいわよ私もそれでオーケーよ」

 何だかんだで実は皆楽しそうな顔してますのよね、マウナさんも案外好奇心が強いんですのよ本人が気づいているかはわかりませんがね。

「わかった。では、三日後に試験を開始する。朝にギルドに来てくれ、試験前に長期にわたる可能性がある依頼は受けないようにしてくれ。細かいことはまた明日ギルドに来てくれブレンダに伝えて奥からアイツから話を聞いてくれ。では以上だ」

 こうしてワタクシ達の昇格試験が決定しましたわ。


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