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第三章 昇格試験と国の特産物

第四十四話 明日は街に戻ろうぜ!

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 本日の夕食は……組み合わせ的に謎の組み合わせでしたわ。
 ですが豆腐の冷ややっこに醤油を隠し味にした卵焼き、醤油の香ばしい香りのする唐揚げ、醤油を初めて使うのに良く考えられたメニューが出てきますわね。
 問題はパンと言う所ですわね……そう言えばこの世界に来てからお米を見ておりませんわね、今度探してみるとしましょう。

「あら? 不思議な味ねぇ、お姉さんこのトーフって好きよぉ、辛口のお酒が欲しくなるわねぇ」
「わ、わたしは卵焼きが好きですね」
「――コケクック唐揚げ!」

 皆さま満足しておるようですわね、これで醤油が売れると確信が持てますわね。

「シェンナさんもコリーさんも醤油を初めて使うはずなのに良く色々と思いつきますわね」
「お褒めにあずかり光栄です」
「ええ、マナカ様このショーユ面白い調味料ですよ、シェンナと二人で色々考えましたがまだまだアイデアが出てきそうです」

 シェンナさんがスカートの裾をつまみお辞儀をします、コリーさんも醤油を使った料理が楽しいようですわね。
 おや? マウナさんがワタクシの方を向いておりますわね。

「マナカさん、コレ確実に行けますよ。早めにムーロさんに我が領に来てもらいましょう」
「ええ、まずはムーロさんにも味わっていただきましょう」
「はい、明日一度コルリスに戻りましょう。そこでガラス職人や倉を造る職人を探しましょう、少ないですがうちの国庫からお金を出します、これになら投資しても問題無いと思いますよ」

 マウナさんにも受けが良いようですわね、醤油をメインに交易を進める話を簡単にしておりますと隣からも感想を述べる声が聞こえますわね。

「ああ、醤油の味が懐かしく感じますな」
「ええ、米田中尉も満足していただけ……え?」

 キノコが食事とかどうやって?
 ワタクシが米田中尉を見ておりますと、卵焼きが浮いて米田中尉の元まで飛んでいくと卵焼きが消えていきますわ……

「米田中尉、食事できるんですの?」
「いやー、自分も驚きであります」
「それ、どうなっているのです?」
「何となくできそうだからやってみたのです。どうやらあまり重い物でなければ、元々の身体の腕に届く範囲の品を動かすことが可能なようです」
「消えるのはどんな現象なのです?」
「これは自分にも良く分かっておりませんが味だけは分かるのですが食感はありません」

 キノコの米田中尉ますます謎ですわね。

「マナカ殿、この醤油を売るのは良いのですが何か伝手はあるのですか?」
「問題ありませんわ、ムーロ商会と言う商会の会長とちょっとした縁がありますのよ」
「流石でありますな、ですがあらかじめ宣伝しておくとより効果的ではありませんか?」
「宣伝……確かにそうですわね」

 宣伝の方法……実際に食べていただくのが一番ですわね……

「うふふ、いい事思いつきましたわ、実際に食べていただけば良いのですわ」
「マナカさん? 醤油料理を食べるイベントでもやります?」
「いいえ、もっと確実にいきますわよ」

 ワタクシは腕を組みフフンと鼻を鳴らした後ドヤ顔で皆様に考えを披露しますわよ。

「熊の干物亭に協力していただき実際に醤油メニューを提供してもらうのはどうかしら?」
「なんなのよぉ、その顔……」

 ワタクシのドヤ顔に一同何故か呆れておりますわね、米田中尉だけは表情が分かりませんが。

「マ、マナカさんのその、あ、案ワタシは有りだと、お、思いますよ」
「そうねぇ、熊の干物亭なら丁度いいんじゃないのかしら?」
「ええ、ええ、醤油を持ってシェリーさんに頼んでみましょう」

 どう醤油を売り込むかを考えて色々とアイデアを出していきますと、街に戻る必要が出てまいりましたわね。
 やはりマウナさんが言った通り明日にでも街に一度戻った方が良いですわね。

「マウナさんのさっき言った通り一度街に戻りましょう」
「わかりました。モルテ」
「はい」

 モルテさんがマウナさんの所にやってまいります。

「私たちは明日、一度街に戻ります、人材確保の件お願いしますね」
「わかりました、マウナ様の声として各種族に声をかけていきます」
「チヨルカンとの戦いのときに行方知れずになっていた種族や元国民の探索もお願いします」
「は、セルカド達が心当たりがあるとの事でしたのでそちらも当たってみます」
「お願いします」

 こちらも詰めていたとの事で話が進んでるようですわね。

「モルテさん、もし人材に余裕があればシェンナさんとコリーさんに付けてやってくださいまし、シェンナさんとコリーさんは醤油作りと味噌造りのレシピをメモしておきましたので引き続き作成をお願いしますわね」
「マナカ様、分かりましたシェンナがきっと美味しいショーユを作って見せます!」
「こちらも了解ですマナカさま、ミソの仕込みもしておきましょう、ヨネダ中尉の用意してくれたコウジ菌で最高の物を用意いたします」
「ええ、お願いしますわね。期待しておりますわ」

 ワタクシの言葉にお二方は笑みを浮かべ深々とお辞儀をして奥へと行ってしまいましたわ。
 後は自然に生えており大豆になっている青豆を全て回収するよう指示を出し食事は終了となりましたわ。

 ――
 ――――

 ワタクシは自分の部屋に戻るとベッドに座りこれからの事を更に考えます。

(まずは資金稼ぎこれは最重要ですわね、ですがそのための人員確保に造るための倉、入れ物の準備やインフラ整備。ふぅ、これは本当に大変ですわよ、ワタクシ本気にならないといけませんわね。近いうちに他国との貿易も開始したいところですわね)

 やることの多さにワタクシハゲそうですわ……まあ、ワタクシの毛根はオリハルコンより丈夫ですので大丈夫ですが

(あー、人員確保しても彼らが寝泊りする場所に食事も考えねばなりませんわね……予算はどれほどあればいいのかしら?)

 ワタクシがハゲそうになりながら考え事をしているとドアをノックする音が聞こえますわね。
 誰か夜這いにでも来たのかしら? オカマなら追い返しましょう。

「どなたかしら?」
「私ですマウナです、少しいいですか? 国の事について色々相談したいと思いまして」
「あら? 逢瀬ではありませんのね残念ですわ」
「な!」

 真っ赤になったマウナさんを想像すると……あ、ご飯ドンブリで三杯行けますわ……さて、割と本気でしたが冗談は置いておきましょう

「うふふ、冗談ですわよ。お入りになって」
「もう……失礼します」

 マウナさんが部屋に入ってきました。
なぁ、ベビードール……なんと卑怯な姿ですの流石は魔王ですわね……うふふ
ちなみにワタクシの恰好は……イモジャージ!! 何気に愛用品ですのよ。
さて、眩しい姿を拝みつつワタクシはマウナさんに椅子をすすめワタクシの方から話しかけます。

「それで相談事とはなんでしょう?」
「はい、嫌らしい話ですがお金の事です、我が領は人間との交流がほとんどなかったので、人間の通貨であるリシェがそこまでありません」
「ワタクシもそれは考えておりましたわ、何をするにもお金は必要ですわよ」

 マウナさんはため息をついております、まあ頭の痛くなる問題ですわよね、ですが仕方ないので頑張るしかありませんわよね。

「現在のこの国の人口は何人ですの?」
「確か、チヨルカンとの戦いがあったせいと私の不甲斐なさに国を出た種族が多く、残ってるのは約十五万人程度でしょうか?」
「すくな! 領土の割にはすくな!」
「はい、エルハリス王国の十五分の一しかいません」

 あー、そうか人類の総数がワタクシの世界よりはるかに少ないのでしたわね……そうしますとこの国土で十五万……物の価値的にも少し前の日本くらいですわよね。
 エルハリスで約二二五万人となると日本で言えば名古屋市の人口くらいですわね……ワタクシの世界って人口多すぎませんこと?
 日本ですと十万人都市で年間予算が合計での平均が八百億円、流石にこれは日本での考えですので、これよりは下がるにしても色々やるには最低でも四十億リシェは必要ですわね……

「マウナさんちなみに魔王領にある予算はいくらですの?」
「正確には分かりませんが五億リシェはあると思います」
「……厳しいですわね」
「そうですか……」

 これは投資していただくしかありませんわね、しかし部分的にやっていけば十分勝機はありますわね。
 クナギグループがあれば……四十億リシェポンとくれるぜですわ、個人とはなんと無力な、マウナさんの不安そうな顔は見ていられませんわね。

「マウナさん、安心なさいなワタクシが本気を出せばチョチョイのチョイですわよ」
「マナカさんには頼りきりですね」

 マウナさんが少しはにかんだ笑顔をしましたわ。なんて卑怯な笑顔ですわね。

「ま、まあ頼られるのは嫌いじゃありませんわ」
「明日は昼頃に街に戻るとしてまず何をしましょう?」
「そうですわね、熊の干物亭で醤油を使っていただくための交渉の後、ギルドで職人関連の情報収集、そしてムーロさんに連絡、こんな所ですわね」
「分かりました、ではそのように動きましょう」

 そう言ってマウナさんは椅子から立ち上がります

「それでは今日はもう遅いので戻りますね」
「ええ、お休みなさいマウナさん、ワタクシは案外優秀ですので任せておいてくださいな」
「ありがとうございます、私にできることは何でも言ってくださいね、それではお休みなさい」

 挨拶を終えるとマウナさんが部屋から出ていきました、最後のはにかんだような笑顔は強烈でしたわね……あの格好と合わせてマナカメモリーに保存しておきましょう……

 こうして夜が更けていきましたわ。
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