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第二章 オバさん冒険する編

26話 アンジェリカvsものすごい骨

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「あらー、やはり。造りは似た様な感じね」
「諦めるっすよ、ダンジョンなんてそんなもんッスから」

 ついに三階へとやってきた。いきなりのお出迎えは無いようだ。
 だが、アンジェリカの言った通り似た様なフロアである。

「造りは似ているけど、このダンジョン元々は神殿だからか、そこまで複雑な迷路になってないのは救いだな」

 ゼノが見回りながらそう言った。

「外から見るとここは他のフロアより、広くは無いでしょうね」

 リノがそう続ける。リノの言葉にゼノが頷いた。
 ゼノが先頭を務め探索を開始する。

「ふむ、中々嫌な空気だな。ジメっとしてカビが生えそうだ」
「あら? リヴァイアさん、そろそろ消費期限かしら?」
「何の話だ? 意味が分からんぞ。そうではない、魔力の流れが何かおかしいのだ、違和感と言ってもよいな」

 リヴァイアサンの消費期限とは? そして魔力の流れがおかしいと話すリヴァイアサン、このリヴァイサンの感じた違和感が後にとんでもないことになるのであった。

「取り合えず進むっすよ、進まないと話にならないっすからね」
「このフロアは一階、二階より更に単純な作りですね」
「そっすね、見た所ぐるっと一周してるだけっすね」

 リノとマーシャがマッピングしながらそんな話をしていた。

「それにしても部屋が多いわね、お掃除大変そうね」
「ふむ、ここが本当に神殿だったとしたら、ここは神官たちの寄宿舎とでもいったところか?」

 ぱっとみでも凄い数の扉があった。アンジェリカとリヴァイアサンがフロアを見ての感想を言ってる間に、ゼノが手前にある一番近い部屋の扉を調べていた。

「これを全部調べるのか? はぁ……骨が折れそうだな」

 そう言いながらも手際がいい。

「多分だけど、ここおの扉に罠は無いと思うぜ、鍵があるだけだが鍵も壊れてる。リヴァイアサンの言うように誰かが生活してたエリアだろうな」

 そういうとゼノは扉を開いた。

「うへ、ほこりっぽいな……」

 布で口と鼻を押さえながらそう言った。

「あらぁ、窓が無いわねこの部屋」
「外の作りからも予想は出来ましたけどね、それでも窓も無い部屋って生活するうえでは勘弁してほしいです」

 アンジェリカとリノが部屋を覗きながら、ゼノの様子をうかがっていた。

「これといって何もないな、荒らされてるところを見ると昔に誰れかが来てるぞここ。どうも一階にだけ罠があって上に行けば罠が無くなるってことは、昔に盗賊の根城になってたのかもしれないな」

 ゼノが罠の有無からそんな推理をしていた、マーシャもこのダンジョンを回ってきての感想を話す。

「しかも、これはアレっすね。盗賊の根城になる前も、まともな連中のたまり場じゃないっすね。悪の秘密組織の根城そんな感じっすね」
「神殿ではないということか」

 マーシャの意見にリヴァイアサンが反応した。

「そっすね神殿はカモフラージュ、そんな気がするんすよ。神殿にみせかけた犯罪組織の根城だったそんな感じっすね」
「あらあら、物騒な話ねぇ」

 要するに胡散臭い施設って事だ。
 そして、首を振りながらゼノが部屋から出てきた、目ぼしいものは無かったようだ。

「普通の部屋だな、これと言ったものは無いね」
「手あたり次第調べるしかないっすね」
「そうなるか……」

 そう言うなり隣の部屋へと移動する。そしてテキパキと手際よく行動するゼノとマーシャ。
 するとカサカサと物音がした。

「あら? カサカサと音がするわね」
「あ、私にも聞こえます」
「油黒虫かしら?」

 やはりカサカサと言えばそうなるのか? しかしそんなモノではないはずだ。
 しかし油黒虫でなく影が動いている、その数は三。

「油黒虫だとしたら相当でかい虫になるな、主よ敵の様だぞ。マーシャとゼノは探索中ゆえ我らで対処するぞ」

 リヴァイアサンの声に呼応するように、カサカサという音が大きくなり影がら真っ黒な犬が登場した。

「シャドウドッグです! 影に隠れたりするなかなかの難敵ですよ」

 リノが魔物を見てアンジェリカとリヴァイアサンに忠告する。

「あらー、アンデッド以外もいるのね」
「なーに、案ずるな我にとってこの程度の魔物なんでもないわ!」

 先手必勝、リヴァイアサンが地面に手を突くと、先頭にいたシャドウドッグの下から水柱が立った反応の遅れたシャドウドッグが上に吹き飛ぶ。

「あら? チャンスかしら?」

 アンジェリカが吹き飛びバランスを崩してる、シャドウドッグに対して魔法を撃つ。
 ボンという音と共にシャドウドッグが一体破裂した。

「うんうん、来たない花火ね」

 ひでぇ言われようだ。
 しかし、破裂した一匹を見ていた二匹は理解が追いついておらず固まっていた。

「あら? 敵の動き止まってるわね。チャンスよー」

 言うが早い、すかさず二匹目にも魔法を撃ちこむアンジェリカ。それに続くかのようにリヴァイアサンも魔法を撃ちこむ。あっという間にシャドウドッグは全滅していた。

「楽に終わったわねー」
「相変わらず滅茶苦茶だけど強いなぁ」
「オバさん油黒虫退治に色々と研究してるのよ」

 リノは呆れつつもアンジェリカ達の強さを、改めて感じていた。
 シャドウドッグを倒しえることにゼノとマーシャが戻ってきた。

「なんか騒がしいっすね」
「モンスターが来てたみたいだな……おや? コアが落ちてるじゃないか」

 ゼノが石のような結晶を見つける。

「あ、本当だ、シャドウドッグのコアってそこそこで売れない?」
「ああ、確か一個で五〇〇はしたな」

 魔物のコアは売れるのだ、冒険者のメイン収入源である。これを落とさない骨は不味いモンスターの代表である。

「へぇ、これがコアねぇ。オバさん初めて見たわ」
「そりゃ、一般の人はあまり見ないっすからね」
「そうねぇ、オバさん達が見てるのは加工された物が大半だからね」
「よし、臨時収入が増えたところで探索再開っすね」

 こうして徐々にではあるが部屋の探索を進めていった結果。

「む、なんだこの魔力は? かなりのものだぞ」
「あー、ボクにも分かるレベルっすね……しかしこれが最後の部屋っすよ」
「いや、マーシャどころか俺ですら分かるんだが」
「でもここを突破しないとダメだよねぇ」

 中に何かがいるようだ、普段は魔力を感じ無い人でもわかるプレッシャー、大物がいるようだった。

「まあ、行くしかないっすよね。どう考えても階段はこの部屋にあるっすよ、というか何なんスかこの建築物、なんでどこのフロアも部屋に階段があるんすか?」
「よほど、何かを隠したかったのかもねぇ。とりあえず、行って確かめましょう」

 オバさんは魔力が高くても感知に関してはパンピー以下のようだった。
 アンジェリカの言葉に皆が頷き覚悟を決めたようだった。
 そして皆が頷き合うと、リヴァイアサンが扉を開けた。そこには豪華なマントとローブを着た骸骨が立っていた。

「……最悪っすね、まさかリッチがいるとは思ってなかったすよ」
「リッチ? お金持ちなのかしら?」

 マーシャがローブを着た骸骨を見て冷や汗を流す、リッチ……アンデッドでも最上位のモンスターである、ちなみに金持ちではない。

「アジャルタさんにも分かるように言うと、アンデッドの最上位モンスター。滅茶苦茶ものすごいガイコツです」
「あらー、それはヤバそうね」

 凄いモンスターと聞いてアンジェリカも得物を構えた……前に作った空飛ぶ釣り竿だけどね。

「さあ、オバさん張り切って頑張るわよ!」

 アンジェリカ達の姿を確認したリッチが、光の無い空洞の目で一行の方を睨みつけた。
 さあ、戦闘の始まりだ!
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