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最終章 オバさん国を救う

35話 やるなバルトン

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「想像以上だ、バルトンという男は相当優秀だったようだな」

 バーモントに手渡された資料を呼んでいた男が、興奮した様子で叫んでいた。
 この男、見た感じ五十代半ばくらいに見える、少し太り気味の体形で髪はダークグレイだが白髪交じりであった、その髪をオールバックにしている、服装は法衣を羽織っていることから宗教関係の人物であろうことがうかがえる。

「ダウ司祭もそう思いますか? 流石は王国の専属考古学者と言ったところです。すでにこの世にいない事だけが惜しまれますがな」
「……消したのだな?」
「ええ、これ以上調べされると危険でしたのでね」
「危険か」

 ダウが資料から顔を上げバーモントを見る。

「これ以上調べられると、ここの資料が我らが神の復活に係るものと分かってしまいますからな」
「そうなると国王の耳にも入ることになり、我々の計画に支障が出ると判断したか?」

 バーモントの言葉をダウが引き継ぐと、バーモントは頷いた。

「確かにな、ここまで分かっていれば、後は我々が持つ先祖から受け継いだ文献で補完が可能だ」
「ええ、ですのでそう判断しあそこで退場願ったのです」
「なるほど」

 バーモントとダウはくつくつと笑った。
 さっと、資料に目を通したダウが資料を机に置くと、再びバーモントを見る。

「君のことだ、ある程度準備は終わってるとみていいのかな?」

 バーモントはダウの質問に頷く、バーモントは自分の前に置いてあったティーカップを持ち上げ一口飲む。

「ええ、ダウ司祭をお呼びしたと言う事は最終段階に入ったと言う事です」
「なるほど」

 そこでバーモントの表情が少し曇る、ダウはそれを見逃さない。

「最終段階と言う事だがまだ完全ではないと言う事だね」
「ええ、二つの祭壇のうち一つだけがまだ見つかっていないのです、おおよその目星までは付いているので間もなくなのですが、少し時間をかけすぎました」
「なるほど、小規模とはいえ騎士団がまるっと消えているのだ、確かにそれだと国が動くな」

 ダウの言葉にバーモントが頷いた。
 第四騎士団は人数こそ少ないが要人の警護、護衛などが主な任務なだけあって、エリートが揃っていた。
 それが忽然と姿を消せば国は動くしかないだろう。


 ――
 ――――

 騎士団行方不明から数日がたった。しかし騎士団が消えようが町に住む人たちには関係が無い、彼等は普通に営みを続けるのである。

「それではお母さん、少しの間ですがこの街に御厄介になるのでよろしくお願いしますね」
「ええ、一応簡単に揃えて置いたけど、まだ何かあったら呼んで頂戴ね」
「はい、ありがとうございます」

 ここはアンジェリカの家、お腹の大きくなったチェイニーがアンジェリカに挨拶に来ていたのだった。
 サーシャとリノは興味深くチェイニーのお腹を見ていた。

「もう少しで産まれるんですか?」

 リノがチェイニーに尋ねるとチェイニーが微笑みながら答えた。

「そうね、近いうちに産まれるんじゃないかしら?」
「それは楽しみですね」
「ええ、いまかいまかと待ち遠しいわよ」

 チェイニーは出産の為にこの街へきているようであった、砦付近の村はいまだキャンプ状態なのでまともな施設が無くチェイニーだけで街にに来たようであった。

「アジャルタさんも待ち遠しいですよね?」

 サーシャのほうはアンジェリカに赤ん坊の事を聞く。

「それはそうよー、オバさんオバサンから御婆さんにランクアップなのよ」
「らんくあっぷ?」

 ランクアップ? サーシャが反応に困る。アンジェリカは相変わらず意味が分からない反応だった、オバさんの上位が御婆さんのような謎の発言であった。
 とりあえず、めでたい話なのであった。
 そして挨拶を済ませると、チェイニーは部屋へと向かった。

「さてさて、オバさんもお店に立つとしましょうかね」

 そうそう、お店は順調に準備も進み無事開店できたのであった。ただし客はいない。
 アンジェリカはそんなことは関係なく、客がいない間は店番をしつつ(実際は手伝ってるサーシャがメインの店番である)何だかよく分からない商品開発にいそしんでいたのであった。

「遂に完成したわよー、油黒虫を退治する罠が、これは大ヒット間違いなしね」

 アンジェリカは瓶に入った液体とそこに浮かぶ餌を見ながら、一人不気味に笑うのであった……
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