エイジヒル妖精譚 〜幽街画廊の由々しき平穏〜

犬すぱいらる

文字の大きさ
21 / 33
消し屋のダル

エピローグ

しおりを挟む
 石焼きめだか店主とフルエ・ルエルの繋がりが断たれお互いが認識出来なくなった。

「不思議ね。さっきまで一緒に居たのにもう見えないし聞こえない。」

「お前と店主だけだよ。
 店主も同じこと言ってるから、こっちからしたら気持ち悪いよ。」

 エイジヒルは、ダルが無駄に用意した蝋燭をかたづけながら言った。

「ダル、必要無かったよなコレ、コレ、コレ。」

 エイジヒルは、蝋燭や魔法陣等を指しながらダルに詰め寄った。

「……エイジヒル………私の名前……何故、ダルなんだ。」

 ダルは、エイジヒルの質問を無視して魔法陣をモップで擦りながら尋ねた。

「え、あっ、お前がさ、常に怠そうだったのと豆ばっか食べてるだろ、ヒンズー語で豆のことダルってんだよ。 だからダルなんだ。」

「…それは悪口ではないのか?」

 ダルは、不服そうに問いかける。

「ぷぷっ! 良いじゃないダルさん、ピッタリよ、ダルって顔してるもん。」

 フルエは、込み上げてきた笑いを堪え切れずに吹き出した。 
 いつものフルエに戻っていた。

「素顔は、見えないけどね。」

「アハハ・・・やめてエイ君、可笑しい。」

「……それでは帰る。 じゃましたな。」

「あ、ありがとうございました。
 私、頑張ります! もう一度フルエさんに会うために!」

「……そうだな。」

「フルエも幽街画廊にかえるの?」

「そうねぇ、その前に呑みに行きましょ。」

「……また飲むのか?」

「良いじゃん、ウサギさんが待ってるのよ。」

「………酔っぱらっているのか?」

「えっ、いまからのむの?」

「何言ってんのエイ君、あなたも呑むのよ!」

 一人増えただけで不気味だった夜の繁華街が美しく見える。

 空を見上げれば満点の星空が見渡せる。
 妖精光なんかより遥かに綺麗だ。

 空の星も見えていた星が見えなくなったり、それがまた見えたりすることはあるのだろうか?
 エイジヒルは、この奇妙な夜とこの星空は忘れることは無いだろうと思っていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


後日

「いやぁ、良かった良かった。 旅立つ前にお前たちとここに来れてさぁ。」

「No.1353静かにしてください。
 他の客も居るんですよ。」

「3737ぁ、この店は照明が暗いから客が明るいくらいがちょうど良いんだよ。」

「下品な……」

「相変わらずだね、いーさん、サナちゃん。」

「1456、お前も変わってないなぁ、見た目以外はさぁ。」

「別に変わりたいわけじゃないからね。」

「それより3737、お前がこの店、再開させるためにに人肌脱いだんだろ?」

「まさか、私よりも先輩の方が脱ぎましたよ。」

「僕は何もしてい無いけどね。」

「けどよ、3737お前が俺のために働きかけてくれたんだよな?」

「まさか、なる様になっただけです。」

「いゃぁ、感動した。 
 俺、てっきりお前には嫌われていると思ってたからさ。」

「はい、嫌いですよ、今でも。」

「じゃっ、何で来んだよ!」

「No1353、あなたは何故に私を誘ったのです?」

「そ、そりゃ、好きだったんだよ、仕事終わりにお前らとここでくつろぐのがさぁ。」

「同じすよ、私も。」

「良かったじゃん、いーさん、推定初めてサナちゃんと意見が合ったよ。
 ついでに僕もだけどね。」

「お、おぅ、恥ずかしいな、なんか。」

「気持ち悪いですよ。」

 ヒューは、1353の送別会をそれなりに楽しんでいた。

「ヒューさん。」

 聞き慣れた声に呼ばれて声の主に目を向けた。

「あっ」

 そこにいたのはフルエだった。
 フルエは、人差し指を口にあててヒューが名前を呼ぶのを制した。

「やっぱり美味しいわ・・・・私も負けてられないな。」

「お嬢ちゃん、どこかで?」

「気のせいですよ。」

 フルエは、そう言うと笑顔でウインクをした。

「まったく、旧世代のナンパですか、恥ずかしい。」

「いや、どこかで会ったよ、多分…」

 サナサナも、訳知りなのかフルエの名前を出すことは無かった。

 フルエは、これからも客として石焼きめだかを見守って行くのだろう。

 おそらくは、石焼きめだかの店主も客としてフルエスペースを見守って行くのだ、お互いの料理に刺激され合いながらゴーストツリーの街のメダカ料理は更なる発展を遂げていくのだろう。

 ヒューは、少しだけ感傷に浸った。


~完~




次章  猫


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

処理中です...