エイジヒル妖精譚 〜幽街画廊の由々しき平穏〜

犬すぱいらる

文字の大きさ
30 / 33

ネコの最後

しおりを挟む
 8703はなまるの攻撃でマッチョが地面に落ちてから、ネコは、急にキョロキョロしだした。

 エイジヒル落ちない様に首輪にしがみついていたが、まるで振り回されているかの感覚だ。 遊園地とは、こう言うものかも知れない。

 ネコの動きが止まったかと思ったら、マッチョを見つけて背中を咥えた。

 エイジヒルのほぼ目の前である。

 そのまま降りてもよかったが、好奇心が勝り、そのままネコにしがみついていた。

 そしてネコは、咥えたマッチョを器用に自らの背中に乗せた。

「え?」

 下から響く、8703はなまるの悲鳴が耳をつんざく。

 マッチョは、ネコの背の上で大きく大の字に寝転がっている。

「おい、マッチョ!
 どう言うことだ?」

「知らない。」


 ネコは、何事も無かったかの様に、誘導隊が出す、音と匂いのする道を歩み出した。

 この音と匂いには、多少の催眠効果があるのだろうが、判断能力は充分にあるのだろう。

 それよりもだ!

 ネコには、マッチョが見えているのだ!

 いや、正確に言えば、このネコは、失明していて何も見えてはいない。

 目が見えない分、他の感覚が鋭いのか?只々、マッチョと周波が合っただけか?
 
 とりあえずは、地味に奇跡だ。 他人に話せば「ほう。」くらいのリアクションはもらえるだろうが当面の状況は、ふりだしに戻るどころか、ネコがマッチョを感知出来るのであれば、マッチョの攻撃がネコに通じると言うことだが、これはまずい。

 そのマッチョの攻撃が、僅かでも効けばだが。




「おい、マッチョ 起きないの?」

 マッチョは、大の字に寝たままだ。

「・・・・私は、戦意を喪失してしまった様だ。
 どんだけ戦ってもネコに勝てる気しない。
 妖精の限界って事だ。」

「おう、良かった。
 そのウジウジで、あんたは1歩成長した。
 ネコを倒すなんて無理で無意味なんだよ。」
 
「君が言いたい事は分からないが、このネコは、私を敵と認識していないようだ。」

「このネコは、あんたを感知出来てるのにな。」

「少年よ、何故にネコはこの私を再び背に乗せたのだ?」

「知らんよ。
 ただ、必死でしがみついている、あんたに頼られてると思ったんじゃないかな?」

「何故に私がネコを頼るのだ?」

「僕の仮定だが、怖くてどうしようもない時に、ちっちゃくて弱いヤツが必死でついて来たら助けてあげたくなるんじゃない?」

「私は、助けられているのか?」

「仮定だ。
 僕だって、勝手にこのネコを助けているつもりでいた。」

「お互い無駄な事をしていたと?」

「ネコもな。」




「無駄じゃない。」

「何でだよ?」

「少年!
 このネコは、後どれくらい生きれる?」

「ネコの寿命とか知らんけど動物の寿命は短いし、コイツは目が見えないし、老猫だ。 毛並みが良くない。 
 多分だけど、驚くほど短いぞ。」

「そうか。」

「だから何?」

「少年、このネコの残りの人生。
 私は、このネコの目となり槍となろう。」

「槍にはならんだろうけどさ、何それ?
 盲導妖精みたいな?」

「君がなにを言いたいかは知らんが多分それだ。」

「じゃぁさ、人間の世界に行くってこと?」

「そうだ、このネコの光になる、いや、このネコのマッチョになるのだ!」

「おう、迷惑は掛けてやるなよ。」

「かけん!」



「エイさん、そっちはどうですか?
 マッチョさん、ネコに食べられておかしくなってませんか?」

 木漏れ日フォンから、はなまる8703の声が聞こえる。

「おう、良い方向に壊れたぞ!
 お前も上がってこいよ。」

「マジすか!
 けど、どうしようかな、さっきマッチョさんに告られたんですよ。
 普通にキモいけど、まぁ良いや行きましょう。
 ネコ登りたい。」

「早くしろ、もう直ぐ着くんだろ。」

「はい、はい。」

 はなまる8703は、ワイヤーシールドとやらを器用に使い、軽々とネコの背中に登って来た。

「慣れましたよ!
撃つのも! 登るのも!
 マッチョさん、この盾をワタシにください!」

「君が欲しいのなら・・・」

「やったー!
 ぶっ壊れるまで、遊び倒してやりますよ!」

 はなまる8703は、プレゼントのしがいがあるのか無いのか、微妙な言葉ではしゃいでいる。


「おい、はなまる こっち来い。この、木漏れ日ホンとか、木の組ホンとか言うやつ、写真撮れるだろ?」

「ほう、詳しいですね。
 それでは、今からマッチョさんの負けっ面を撮ってやりましょう!」

「そうじゃないよ、撮るのは僕とお前、マッチョと3人で猫背をパックに記念撮影だ!」

「ななっ!
 モブのマッチョさんもですか?」

「モブじゃないだろ、コイツに1話使ったからさ、
 僕とお前、フルエや、サナちゃんに、ヒューはいつでも撮れるからな。」

「そ、そうですかね?
 みんな嫌がらないですかね?」
 
 はなまる8703は、エイジヒルが、木漏れ日フォンの画像を見た事に気がついたのであろうが、恥ずかしさから、それには触れない。
 モジモジした感じが初々しくて可愛い。



「サナちゃんとかダルは嫌がるだろな、けどさ、サナちゃんはお前の頼みは、断らないだろうし、ダルは、そもそもお前は嫌いだろ?」

「べ、別に嫌いじゃありませんよ。」

「そうか、なら何かある度に、無くても気が向いたらその度にみんなで撮ろう。」

「し、仕方ないですね。
 エイさんが撮りたいなら付き合いますよ。」

「何だよ、そのテンプレ。」

「お、オリジナルですよ! ナチュラルなな!」

「分かったよ。
 おい、マッチョ起きろ。
 写真撮るからさ。」

「ハイチィィズのことか?」

「知らん。
 ピクチャーだろ?」

「映画だな。
 私の物語の映画化だな!」

「違うわ、面倒臭さい!」

「エイさん、放っておきましょう。」

「いや、撮る。 僕はコイツが嫌いじゃない。」

「し、少年!
 君は私が好きなのか!」

「変な意味じゃないからな。
 妖精として面白いヤツだと思っている。」

「わかった!
 なら撮ろう! ピクチャを撮ろう!」

「仕方ないですねぇ。」
 
 はなまる8703は、マッチョ、エイジヒルの順に座らせた。
 エイジヒルを真ん中に右側に座り込んだ。

「何で座る必要があるんだよ。」

「エイさん、あなたが小さいからですよ。」

「あ!」

 エイジヒルは、反論できなかった。

「行きますよぉぉはい!
 撮れましたよ。」

「早いな。」

「美しい猫毛が殆ど写っていないぞ!」

「自撮りなんですから背景は期待しないで下さい。」

「良かったな、はなまる。」

「全く嬉しくないですよ。」

 はなまるは、言葉の割には、写った画像では、一番楽しげに見えた。

 ピピ~~ッと言う笛の音が響いた。

 ネコには聞こえない笛の音、到着の合図だ。

「エイさん、下に降ります。
 ワタシに抱きついて下さい。」

「その言い方やめて。」

「少年! いや、さらばだ!」

「おう、マッチョ元気でな。」

「あぁ、また会えたら良いな。」

「その時は、人間世界のみやげ話をしてくれ。」

「あぁ、マックィーンの様な冒険譚を期待していてくれ!」

「誰だよソレ。」

「私のヒーローだ!
 さらばだ!」

 エイジヒルは、はなまるに抱えられながらネコの首輪に引っ掛けたワイヤーシールドでゆっくりと地面に降りた。

 人間世界の景色と重なる森、ここが人間世界に繋がっている。

 妖精は、自由に行き来できるが、人間世界の動物達は、稀に繋がる事があると言う。

「さらばだー。」   「さらばだー。」

 うろうろしているネコの上でマッチョは叫ぶ。
 カッコつけて、言い終えると共に消えたいのだろうが、何度もさらばと言うのはカッコ悪いだろう。

「さr」




 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【完結】小さな元大賢者の幸せ騎士団大作戦〜ひとりは寂しいからみんなで幸せ目指します〜

るあか
ファンタジー
 僕はフィル・ガーネット5歳。田舎のガーネット領の領主の息子だ。  でも、ただの5歳児ではない。前世は別の世界で“大賢者”という称号を持つ大魔道士。そのまた前世は日本という島国で“独身貴族”の称号を持つ者だった。  どちらも決して不自由な生活ではなかったのだが、特に大賢者はその力が強すぎたために側に寄る者は誰もおらず、寂しく孤独死をした。  そんな僕はメイドのレベッカと近所の森を散歩中に“根無し草の鬼族のおじさん”を拾う。彼との出会いをきっかけに、ガーネット領にはなかった“騎士団”の結成を目指す事に。  家族や領民のみんなで幸せになる事を夢見て、元大賢者の5歳の僕の幸せ騎士団大作戦が幕を開ける。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

処理中です...