Lily connect

加藤 忍

文字の大きさ
25 / 32
夏休み 双子訪問

第二十五話

しおりを挟む
 商店街に来るのは楓が家に来たとき以来。でもあの時は横を通っただけで中を見ることはしなかった。

 商店街を正面から入った。入り口にはようこそ三浦横丁へ、と錆びついたアーチ状の看板が頭の遥上に設けられている。

 通路にも多くの人が行き来している。大半はこの暑さをしのぐためにこの道を使う人ばかりだけど、時々店に入って行く人も見かける。

 私たちは回りをキョロキョロしながら道を歩く。あの店まだあるんだ、ここはもう閉店してる、二人は三年前の記憶を思い出しながら道を歩く。

「あら、いずみちゃんに美夢ちゃん!?」

 歩いているとコロッケの匂いのする方から声が聞こえた。名前を呼ばれて二人が立ち止まる。私も声のした方に向く。
 
 お肉屋のカウンターから目を大きく見開いたおばさんがいた。

「お肉屋のおばちゃんだ!」

 いずみが嬉しそうにお肉屋の近くにかけて行った。私と美夢も後に続く。

「おばちゃん元気だった?」

「まだまだピチピチしてるよ、ほら」

 いずみがおばちゃんの頬をツンツンしながらほんとだなんて言っている。

「お久しぶりです」

「美夢ちゃんは相変わらず礼儀正しいね。二人はいつ帰って来たの?」

「今日です。今日から二日間ハルちゃん家にお泊まりなんです」

「あらそうなの?三人は本当に仲がいいね」

 私は何だかんだでここに来ることがあるので久さは全くない。だから二人とおばちゃんの会話を邪魔しないように後ろで静かに聞いていた。

 募る話があるのだろう。話はなかなか終わることはなかった。

「それじゃあ、また」

「三人とも!」

 キリがいいところで話をやめ、この場から離れようとした私たちをおばちゃんが引き止めた。

「これ」

 おばちゃんは白い紙袋を三つカウンターに置いた。それが何なのか私たちにはすぐにわかった。

「持って行きな」

「ありがとう」

 いずみが嬉しそうにそれを受け取る。人の好意を遠慮するのは相手にとても失礼なことは知っているので、私も美夢もそれを受け取る。おばちゃんの後ろ、店の奥ではおじさんが親指を立ててこちらを見ていた。私はそれに気づき軽く頭を下げた。


 もらったコロッケを食べながら商店街を出ようとすると美夢が入り口横にある掲示板の前で足を止めた。

「どうしたの?」

 私が問うと美夢は懐かしいねと呟いた。先にスタスタと行っていたいずみが私たちがついて来ていないことに気づき戻って来る。

「どったの?」

 いずみも私と美夢が見ている紙に目を向けると美夢と同じことを呟いた。

 掲示板にはバイトの募集や迷子の犬、近所の行事が書かれた表などがある。

 その中で一枚、フルカラーで花火の綺麗な絵が描かれたポスターに私たちの目が止まっていた。

「明日なんだ、豊海とよみ祭り」

 ここ最近家から出なかったからわからなかった。豊海祭りはこの街にある豊海八幡宮で行われるお祭り。海が近いこの街でより良い海の恵みが取れますようにとの願いを込めて行われているらしい。小学校の時にそう聞いた。

「明日行こうよ、久しぶりに」

 美夢がクルッとターンしてからそう言った。いずみもいいね、と言いながら美夢の意見に賛同した。

「まぁいっか」

 私も明日用事があるわけではない。それに久しぶりに二人と祭りに行けるのが少し楽しみな自分がたしかにそこにいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

【完結】【ママ友百合】ラテアートにハートをのせて

千鶴田ルト
恋愛
専業主婦の優菜は、夫・拓馬と娘の結と共に平穏な暮らしを送っていた。 そんな彼女の前に現れた、カフェ店員の千春。 夫婦仲は良好。別れる理由なんてどこにもない。 それでも――千春との時間は、日常の中でそっと息を潜め、やがて大きな存在へと変わっていく。 ちょっと変わったママ友不倫百合ほのぼのガールズラブ物語です。 ハッピーエンドになるのでご安心ください。

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

処理中です...