ラズベリー

加藤 忍

文字の大きさ
7 / 8

経験

しおりを挟む
 お祭りと家の半分ぐらいに来た時、ようやく泉が口を開いた。

「ねぇ・・・ゆう、どうして浮気したの?」

 耳元で囁かれる小さな声には寂しさのようなものを感じた。後ろにいる泉がどんな顔をしてそう言ったのかはわからない。でもきっと切なそうな顔をしているんだろうなって思った。

「またその話か、だからあれは・・・」

「諦めなさい!あなたにあんな可愛い妹がいるはずはないわ!」

 急に耳元で叫ばれて体制を崩しようになる。

「妹って言って、どうせ別の女でしょ・・・。私のこと飽きたなら素直に言ってよ?」

泉はすっと息を吐いた。

「レンタル彼女っていろんな人と付き合うの。中年ぐらいの男性から同年代までいるわ。ときどきこんな人がって人もいる。でもそれはお客、ただの仕事でしかないの。でもあなたとあって、話しかけられてこう思うようになったの・・・この人の本当の彼女になりたいなって・・・」

 泉は俺の話を途切らせ淡々と自分の過去、俺と出会うまでのことを語りかけるように話す。今までこんな話はしたことはなかった。泉はレンタル彼女だって隠していたんだ。そもそもこんな話をするわけがない。別れてから知った真実、それは今更だと思う。

 泉は話終えるとは~あ、とため息をついた。

「どうしてこんなことになっちゃったんだろう?私のどこが悪かったのかな・・・」

 呟くように言われた言葉に俺はなにも言わなかった。どちらがどう悪いのかなんてお互いわからない。それを追求してもきっとダメなのだろう。俺たちはもう終わってしまったのだから。


 家に着くと母親たちは寝室にいっていた。リビングの食器棚の上に置かれた救急箱を取り出し泉の足の傷口を消毒する。消毒液が沁みたらしくあーと痛そうな声を上げる。消毒が終わるとカットバンを貼った。

「・・・ありがとう」

「いいよ、これぐらい」

 救急箱を片付けて元に戻す。時間は八時を回っていた。これからテレビでも観てもいいがそんな雰囲気ではなかった。

「部屋案内するよ」

 泉は顔を縦に振った。リビングを出て二階に上がり、元俺の部屋に案内する。部屋には布団が二つ並んで敷かれていた。母親の気遣いなのだろうが今は嬉しくなかった。

「泉はここで寝て、俺は下で寝るから」

 昼に使った大広間は出かける前に片付けたからなにもないはず。ここで二人で寝て居心地が悪いのは耐えられない。

 俺は布団を一式抱えようとすると泉が口を開けた。

「ゆう・・・一緒に寝よ?」

「・・・は!?」

 泉は頬を赤く染めて目を逸らさずじっとこちらを見てくる。

「いや、でも・・・」

「いいから、寝て、お願い」

 ここまで言われるとさすがになにも言われなかった。俺は抱えた布団を元に戻した。

「・・・」

「・・・もう寝るか?」

 時間的にはまだ早い。小学生でもまだ寝ていないだろう時間に俺たちは電気を消し、薄い掛け布団をかけて寝ることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

もうあなた達を愛する心はありません

佐藤 美奈
恋愛
セラフィーナ・リヒテンベルクは、公爵家の長女として王立学園の寮で生活している。ある午後、届いた手紙が彼女の世界を揺るがす。 差出人は兄ジョージで、内容は母イリスが兄の妻エレーヌをいびっているというものだった。最初は信じられなかったが、手紙の中で兄は母の嫉妬に苦しむエレーヌを心配し、セラフィーナに助けを求めていた。 理知的で優しい公爵夫人の母が信じられなかったが、兄の必死な頼みに胸が痛む。 セラフィーナは、一年ぶりに実家に帰ると、母が物置に閉じ込められていた。幸せだった家族の日常が壊れていく。魔法やファンタジー異世界系は、途中からあるかもしれません。

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

処理中です...