地味令嬢の私が婚約破棄された結果、なぜか最強王子に溺愛されてます

白米

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答えと決意

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翌朝、ミレイアは自室で悩んでいた。

ユリウスの求婚。昨夜の出来事は夢ではなかった。

「お嬢様、朝食の準備ができました」

侍女のエマが部屋に入ってきた。彼女はミレイアの幼い頃からの世話役で、まるで姉のように慕われていた。

「エマ……」

「昨夜のことは聞いております。ユリウス殿下からの求婚、どうなさるおつもりですか?」

ミレイアは窓辺に座り、庭を眺めた。

「私には荷が重すぎます。ユリウス殿下は王位継承権第一位。将来の国王になるかもしれない方です」

「お嬢様は、殿下をお嫌いなのですか?」

「いえ、そんなことは……」

「では、何を迷っていらっしゃるのですか?」

エマの問いかけに、ミレイアは胸の奥の気持ちと向き合った。

「怖いのです。またいつか、レオンハルト殿下のように『釣り合わない』と言われるのではないかと」

「お嬢様……」

「私は何も変わっていません。昨日と同じ、地味で取り柄のない女です」

その時、部屋の扉がノックされた。

「ミレイア・アルフォード嬢はいらっしゃいますか?」

男性の声に、ミレイアとエマは顔を見合わせた。

「どちら様でしょうか?」

「ユリウス・ヴァルハイムだ」

ミレイアの心臓が跳ね上がった。まさか、こんなに早く……。

慌てて身支度を整え、応接室に向かった。そこにはユリウスが立っていた。昨夜の礼装ではなく、普段着に近い服装だった。それでも彼の威厳は変わらない。

「おはよう、ミレイア」

「お、おはようございます、ユリウス」

名前で呼んだことに、彼の表情が僅かに和らいだ。

「答えを聞かせてもらおうか」

「それは……」

ミレイアは俯いた。まだ決心がついていなかった。

「怖いのか?」

「はい……」

正直に答えると、ユリウスは椅子に座り、ミレイアを見上げた。

「何が怖い?」

「私では、ユリウスの隣に立つ資格がないのではないかと……」

「誰がそんなことを決めるのだ?」

「皆さんが……」

「他人の評価が、そんなに大切か?」

ユリウスの言葉に、ミレイアははっとした。

「俺がお前を選んだ。それで十分だろう」

「でも……」

「ミレイア」

ユリウスが立ち上がり、ミレイアに近づいた。

「お前は昨夜、俺の隣で堂々と立っていた。それを見た時、俺は確信した。この女性なら、どんな困難も一緒に乗り越えられると」

「私は何もしていません」

「そうだ、何もしなかった。だが、それが素晴らしいのだ」

ユリウスの手がミレイアの顎に触れ、顔を上げさせた。

「取り繕わず、背伸びもせず、ありのままの自分でいる。それがどれほど貴重なことか、お前には分からないだろう」

ミレイアの瞳に涙が浮かんだ。

「王族の周りには、常に計算高い人間がいる。皆、何かを得ようとして近づいてくる。だがお前は違う」

「ユリウス……」

「俺の答えを教えてやろう。お前が望むなら、今すぐにでも婚約を発表する。そして一日でも早く、正式に俺の妻にしたい」

涙がミレイアの頬を伝った。今度は悲しみの涙ではなく、温かい涙だった。

「お返事を……」

「はい」

小さな声だったが、確かに届いた。

「もう一度言ってくれ」

「はい、ユリウス。あなたと結婚したいです」

ユリウスの腕がミレイアを抱きしめた。力強くて、でも優しい抱擁だった。

「今日から、お前は俺のものだ」

「はい……」

「そして俺も、お前のものだ」

ミレイアは初めて、心から愛されていると感じた。
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