推しそっくりなヤツが現れた場合それは恋にしたっていいんじゃねぇの?

シュガーコクーン

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近所のコンビニ

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 私ははくや……多分白夜という推しそっくりな人の厳選に厳選を重ねた写真数枚を印刷するためコンビニに訪れた。

 春休み最高である。

 課題が他の休みに比べて少ない。部活も強制ではなくなり辞めたから時間がたっぷりとある。




 出入り口側に置いてある印刷機で写真を現像する。地味に時間が掛かる。毎度そわそわして出るところを見続けてしまう。

 だからだろうか。いや、絶対にだからなんだろうけど。


「あっれ~? この前熱烈告白した子じゃん」


 心臓が止まったかと思った。

 弾むような陽キャ声の主に心当たりがありすぎる。決して一般人が交わってはいけない人だ。

「知り合いでも居ましたか?」
「ん、ほらこの前夜白夜に告白してた子」
「ああ。あの時の非常識な女性ですか」

 あの夜優雅に足を組んでいた眼鏡男までもが現れた。他にはいないことを願う。いたら絶望の淵から這い上がれそうにないのだが。


 それと。

 私を非常識と言いますか。抗争する方が非常識だと思うんです。決して言えませんけどね。



 2人は私の方へと余裕の足取りで来る。やめてほしい。今すぐ帰って。

「何してるの?」
「これ白夜じゃないですか」

 手に持っていた既に印刷済みの写真を眼鏡男に抜き取られてしまった。

 私の大事な写真なのに。いや、反抗するなんていう選択肢は持ち合わせていないんだけどね。私は小心者だから。

「はい。この前撮らせて頂いたお宅の白夜さんです」
「印刷とかガチじゃん」
「ガチですよ? 白夜さんめちゃくちゃ私の推しに似てるんです!」
「「………………」」
「あれ、ここで黙ります?」


 2人はお互いの顔を見合う。

「貴方は白夜に恋をしたのではなかったのですか?」
「え?」
「「………………」」


 また2人はお互いの顔を見合う。

 私は首を傾げる。

「大声で告白してたよね~?」
「え? はい。あまりにも推しに似ていて。推しが3次元に……! って興奮してしまい、あんな醜態を」

 あの時だけ切り取れば私が1番ヤバいヤツだったと思う。

「「白夜に恋をしたわけだは……?」」
「ないです!」

 何故そんな思考に至ったのか。

「そんな、恐れ多いです」
「「………………」」

 私は勢いよく首を横に振る。


 またもや2人はお互いの顔を見合う。

「そんなに白夜に似ているのですか? 貴方の推しというものに」
「え、見ます?」

 私はコードを引き抜き、2人の前に突き出す。2人が怖いことに変わりはないが、それと布教は話が別だ。

 待ち受け画面にしている推しをたっぷりと見て欲しい。そしてハマって欲しい。不良だろうが子供だろうがご老人だろうが、推しの魅力を知ればはまらない人はいないと思っている。


「わ、本当に白夜そっくり」
「ですよね!」
「……つまり」
「「つまり?」」
「貴方は白夜に恋をしているのではなくてこの推しというものに恋をしている、ということですか」
「え?」

 それは少し違う。私はガチ恋勢ではないのだ。

「ガチ恋ではなく萌えですね」
「「ガチ恋? 萌え?」」
「はい、萌えです。恋は生まれてこの方したことがないですね」

 どれだけ説明しても眉を寄せられるだけだった。




「ま、白夜に恋してるファンとかじゃないんだったら機嫌悪くはならんっしょ! 雫一がまた会いたいって言ってたし、行こっか」




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