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独りよがりな愛
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「んでもって、千景は親っぽい」
「は?」
「ね」
「えっ、ちょ、真央ちゃん?」
俊介はよく分かっているなと頷く。
逆にちかは自分のことなのに分かっていない。
ちかは可愛いくて優しいのにしっかり者でもあって最強なのに、パパ達にそう主張しても少し首を捻られるだけ。
「ちかは可愛いくて優しいのにしっかり者でもあって最強」
「それはちげぇ気ぃする」
「なんで?」
理解してもらえると思ったのに違った。
(オレの感覚の方がおかしいの?)
これまでは家族に濁されるだけだったから家族の方が感覚がおかしいと思っていたけど、俊介にまで否定されるとオレの感覚に自信がなくなってくる。
オレはちらりとちかを盗み見る。
そしてちかの目線がオレと合う。
(ですよね。何で分かるんだろう)
ちかにどうしたのと微笑まれ、疑問を浮かべつつもやっぱりちかは可愛いとオレも笑みを浮かべる。
(うん、皆が間違ってる)
皆の目が腐っているのだと自分を納得させてこの話を終わらせることにした。
「三人共ーー!ご飯できたから降りておいで!」
「「はーい!」」
下の階から聞こえてきた声にオレとちかが大声で返事をする。
このオレ達を呼ぶ声は、オレは何かに熱中していると聞こえないことがままあるのに対し、二人は絶対に逃さない。
その度によく聞こえるものだと感心する。
オレとちかはすぐに立って移動しようとするが、俊介は少しゆっくりなのだ。
俊介はあの十分経っても降りていかなかった時の恐怖を知らないから。
「俊介」
早く行こうと手を差し出すと、ぎゅうっとしっかり握られた。
「ずるーい!」
そう言ってオレのもう片方の手をちかが取るのもお約束。
本来なら両手が塞がった状態で降りるのは少し怖いし繋がっているのが前と後ろからなため不安定なんだけど、総長二人に挟まれている状態で怖いも何もないなとそのままで降りる。
そしてリビングで相変わらず仲がいいと苦笑されオレが頷くまでがセット。
今日はパパの帰りが早かったようで、既にご飯を運び始めている。
「あ、肉じゃが」
「そうよー。真央ちゃん好きよね」
「よかったね真央」
「うん」
俊介も慣れたようにご飯を運ぶ。
そんな姿がオレは嬉しい。
最初の頃は恐縮したようにあたふたと不慣れな手つきで用意を手伝っていた。
それが、感謝しつつも手慣れたように何も指示をもらわずとも用意をできるようになって。
自分で何目線だよと思わないことがなくもない。
オレは基本自分の話を切り出したりしないから、もっぱら話すのはちかと両親達。
オレと俊介は聞き役だ。
専業主婦な涼香ママとちかの話は比較的ほんわかで穏やかに聞ける。
しかし小説家な未来ママと秘書なパパの話は九割愚痴なためうわぁと思いながらうんうんと首を縦に振るしかない。
「はーーーー。本当にあの社長は親バカだよぉ。いや、別にいいよ親バカだって!でもさぁ、仕事中に惚気るのは違くない!?」
パパは酒を飲んでいない。
「パパだって惚気ていいなら家族話で惚気るよ!?くそっ!!あんの社長横暴だあぁーー!!」
パパは酒を飲んでいな、いやヤケ酒を始めたが発言時はまだだった。
「もう九時だ。遅いよねごめん」
「いや」
「パパの愚痴に付き合わせてごめんね」
「…………」
黙り込む俊介にパパの愚痴には参っているのだと判明した。
「はっ、正直者」
「なんとでも言え」
ちかの挑発に鼻で笑うことで返す俊介のじゃれあいは微笑ましい。
「じゃあね。また明日」
「ああ、また明日」
オレは俊介が角を曲がるまで見送って、完全に姿が隠れてから中に入る。
ちかはじゃれあいが終わった時点で引っ込んだ。
「あれぇ、俊介くんはぁ?」
「酔っ払い、さっき別れの挨拶くれたでしょ」
未来ママの容赦ない言葉は呆れが含まれている。
「そおぅだっけぇ」
「パパさっさと寝たら?」
「うん、今日特に酔いがひどいね」
いつも愚痴を吐き出しているのにストレスなんてないだろう。
ただの酔いたかっただけの酔っ払いは面倒くさいし自業自得なんだから早く寝てほしい。
こんな状態のパパにオレがストレートに言ったら泣き出すから言わないけど。
「……俊介くんって愛されて育ってないよなぁ」
「……うん」
皆思っていても決して声には出さなかったこと。
何故このタイミングで呟くのか。
「……パパの会社ってさぁ、こことそう遠くない天雷なんだよぉ」
「うん。…………うん?」
なんとなく言いたいことの繋がりが見えてしまった。
「でさぁ、俊介くんって多分いいところの子でしょお」
「うん」
「「…………」」
パパからの愚痴で聞いた容姿とかは、俊介に当てはまる。
でも。
「だったらなんか、すれ違ってない?」
「拗れすぎだよぉ」
(ホントに)
というかパパの愚痴的に、その社長さんは俊介の行動を把握している。
どうやってなのか、手段を思うと恐ろしい。
(見守りのつもりでも本人知らなかったら監視じゃん!?)
オレは沸々と怒りが込み上げる。
ちゃんと愛しているなら、すれ違わないように努力してほしい。
俊介は愛を知らなかった。
本人は愛を注いでいるつもりでも相手に届いていないのならそれは愛ではない独りよがりな別のナニカ、だ。
(怖いけど、ガツンと言ってやりたい!)
オレは一人、闘志を燃やす。
「は?」
「ね」
「えっ、ちょ、真央ちゃん?」
俊介はよく分かっているなと頷く。
逆にちかは自分のことなのに分かっていない。
ちかは可愛いくて優しいのにしっかり者でもあって最強なのに、パパ達にそう主張しても少し首を捻られるだけ。
「ちかは可愛いくて優しいのにしっかり者でもあって最強」
「それはちげぇ気ぃする」
「なんで?」
理解してもらえると思ったのに違った。
(オレの感覚の方がおかしいの?)
これまでは家族に濁されるだけだったから家族の方が感覚がおかしいと思っていたけど、俊介にまで否定されるとオレの感覚に自信がなくなってくる。
オレはちらりとちかを盗み見る。
そしてちかの目線がオレと合う。
(ですよね。何で分かるんだろう)
ちかにどうしたのと微笑まれ、疑問を浮かべつつもやっぱりちかは可愛いとオレも笑みを浮かべる。
(うん、皆が間違ってる)
皆の目が腐っているのだと自分を納得させてこの話を終わらせることにした。
「三人共ーー!ご飯できたから降りておいで!」
「「はーい!」」
下の階から聞こえてきた声にオレとちかが大声で返事をする。
このオレ達を呼ぶ声は、オレは何かに熱中していると聞こえないことがままあるのに対し、二人は絶対に逃さない。
その度によく聞こえるものだと感心する。
オレとちかはすぐに立って移動しようとするが、俊介は少しゆっくりなのだ。
俊介はあの十分経っても降りていかなかった時の恐怖を知らないから。
「俊介」
早く行こうと手を差し出すと、ぎゅうっとしっかり握られた。
「ずるーい!」
そう言ってオレのもう片方の手をちかが取るのもお約束。
本来なら両手が塞がった状態で降りるのは少し怖いし繋がっているのが前と後ろからなため不安定なんだけど、総長二人に挟まれている状態で怖いも何もないなとそのままで降りる。
そしてリビングで相変わらず仲がいいと苦笑されオレが頷くまでがセット。
今日はパパの帰りが早かったようで、既にご飯を運び始めている。
「あ、肉じゃが」
「そうよー。真央ちゃん好きよね」
「よかったね真央」
「うん」
俊介も慣れたようにご飯を運ぶ。
そんな姿がオレは嬉しい。
最初の頃は恐縮したようにあたふたと不慣れな手つきで用意を手伝っていた。
それが、感謝しつつも手慣れたように何も指示をもらわずとも用意をできるようになって。
自分で何目線だよと思わないことがなくもない。
オレは基本自分の話を切り出したりしないから、もっぱら話すのはちかと両親達。
オレと俊介は聞き役だ。
専業主婦な涼香ママとちかの話は比較的ほんわかで穏やかに聞ける。
しかし小説家な未来ママと秘書なパパの話は九割愚痴なためうわぁと思いながらうんうんと首を縦に振るしかない。
「はーーーー。本当にあの社長は親バカだよぉ。いや、別にいいよ親バカだって!でもさぁ、仕事中に惚気るのは違くない!?」
パパは酒を飲んでいない。
「パパだって惚気ていいなら家族話で惚気るよ!?くそっ!!あんの社長横暴だあぁーー!!」
パパは酒を飲んでいな、いやヤケ酒を始めたが発言時はまだだった。
「もう九時だ。遅いよねごめん」
「いや」
「パパの愚痴に付き合わせてごめんね」
「…………」
黙り込む俊介にパパの愚痴には参っているのだと判明した。
「はっ、正直者」
「なんとでも言え」
ちかの挑発に鼻で笑うことで返す俊介のじゃれあいは微笑ましい。
「じゃあね。また明日」
「ああ、また明日」
オレは俊介が角を曲がるまで見送って、完全に姿が隠れてから中に入る。
ちかはじゃれあいが終わった時点で引っ込んだ。
「あれぇ、俊介くんはぁ?」
「酔っ払い、さっき別れの挨拶くれたでしょ」
未来ママの容赦ない言葉は呆れが含まれている。
「そおぅだっけぇ」
「パパさっさと寝たら?」
「うん、今日特に酔いがひどいね」
いつも愚痴を吐き出しているのにストレスなんてないだろう。
ただの酔いたかっただけの酔っ払いは面倒くさいし自業自得なんだから早く寝てほしい。
こんな状態のパパにオレがストレートに言ったら泣き出すから言わないけど。
「……俊介くんって愛されて育ってないよなぁ」
「……うん」
皆思っていても決して声には出さなかったこと。
何故このタイミングで呟くのか。
「……パパの会社ってさぁ、こことそう遠くない天雷なんだよぉ」
「うん。…………うん?」
なんとなく言いたいことの繋がりが見えてしまった。
「でさぁ、俊介くんって多分いいところの子でしょお」
「うん」
「「…………」」
パパからの愚痴で聞いた容姿とかは、俊介に当てはまる。
でも。
「だったらなんか、すれ違ってない?」
「拗れすぎだよぉ」
(ホントに)
というかパパの愚痴的に、その社長さんは俊介の行動を把握している。
どうやってなのか、手段を思うと恐ろしい。
(見守りのつもりでも本人知らなかったら監視じゃん!?)
オレは沸々と怒りが込み上げる。
ちゃんと愛しているなら、すれ違わないように努力してほしい。
俊介は愛を知らなかった。
本人は愛を注いでいるつもりでも相手に届いていないのならそれは愛ではない独りよがりな別のナニカ、だ。
(怖いけど、ガツンと言ってやりたい!)
オレは一人、闘志を燃やす。
応援ありがとうございます!
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