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22. 混乱しています
――懐かしい、とは?
きっと、それは勘違いだ。私は声の主に会ったことはない。あのイケボ……もとい、声の主はたぶん魔王だ。
私の身に起こった事態を分析しようと、夢現のままの頭を働かせる。
『鍵』としての役目があったのだから、突然能力が開花したわけではく、ベアトリーチェの前世とかが関係していると考えられた。じゃあ、日向だった私は何だったのか。
そもそも、これは小説の中……。
あれ? 本当にそうなのだろうか?
魔族の三人には、転生前に読んでいた小説の話はしていない。話すべきか……でも、今さら?
考えれば考える程に、混乱の泥沼に沈んでいく気がする。
寝返りを打とうとした――が、何かがおかしい。
「……んんっ!?」
右手が全く動かない。
けれど、指を動かそうと意識をすれば、ピクリと動く。体の異変を感じたせいか、急に頭が冴えてくる。
パチっと目を開くと、隣には私の手を握りしめて寝ている男性。微妙な角度で顔はよく見えないが……それが魔王だと、黒紫の艶やかな髪で直ぐに理解できた。
眠っている? ……いや、それよりもっ!
動かなかった原因――。
しっかりと指を絡めて握られた手は、完全に恋人繋ぎだ。手を抜こうにも、びくともしない。恥ずかしいを通り越して、汗ばんできた手は、だんだんと痺れてくる。
この状況は、一体全体なんなのか?
とりあえず、手を離してほしい。
起こした方が良いか迷いつつ、辺りを見渡すと見慣れた部屋。ここが魔王城だとは分かった。
ベアトリーチェに転生する前に来た時は、キーランが隣に居たっけ。あの時は、猫耳が気になって仕方なかったな。
離されない手は諦め、怖いもの見たさというか……動かせる左手で魔王の髪の毛に触れ、顔に掛かっていた髪をソッと避けてみた。やはり、彫刻みたいな顔がそこにある。
目蓋が動き――バチっと目が合った。
ひえぇっ!!
蛇に睨まれた蛙のように、目が逸らせなくなる。キーランの片目の魔眼と同じ、紫色の宝石の様な瞳の中心は赤く、心の奥まで見透かされそうだった。
「……ビーチェ」
気怠そうに、魔王は呟いた。
は? ビーチェ?
ベアトリーチェの愛称ではあるが……。
唐突に愛称で呼ばれ、カーッと頬が熱くなる。頭の中が疑問だらけになった時、ノックと共に扉が開く。
「……ベアトリーチェお嬢様っ!!」
私を見て涙ぐんだジゼルは、急いで駆け寄ってきた。
「ジゼル……。折角、二人の時間を堪能しているのだ。邪魔をするのではない」
ため息を吐き、勝手なことをぬかした魔王。
「いいえ、魔王様! お嬢様は、三日間も眠り続けていたのですから、すぐに水分とお食事を。また、倒れてしまったら困ります」
「そうか……人間は弱いのだったな」
ジゼルと魔王のやり取りに、ついて行けなかった。三日間も眠っていた事にもビックリだが、何より二人で普通に会話していることに驚いた。
スルッとベッドから降りたガウン姿の魔王は、ジゼルに向かって落ち着いたら呼べと一言残し、部屋を出て行った。
え。なに、あの色気。
パタンと閉じた扉を見ながら、ジゼルに説明を求める。
「ねえ、ジゼル。状況が全く呑み込めないのだけれど? 私、男性と同じベッドに入るとか、経験したの初めてよ」
これでも、嫁入り前なんですけど。
「その心配はございません。魔王様は、お嬢様の魔力を安定させるために、手を繋げてご自身の魔力を流していらっしゃっただけです」
泣き笑いをしたジゼルは、支度をしながら経緯を教えてくれた。
水分と胃にやさしい食事を摂り、湯浴みを済ませると、詳しい状況を説明をする為にノアがやってきた。
「ヒナ、具合はいかがですか?」
「身体は、問題ないわ。頭は混乱しているけれどね」
先にノアの説明を聞いて、魔王を呼ぶのはその後にしてもらう。抱き止められたことや、さっきの接近状態を思い出すと、まだちょっと気恥ずかしい。
ノアの話では、魔王を復活させた私は、魔力の枯渇で倒れてしまったそうだ。
あの魔法陣はある種の結界で、『鍵』と連動して発動する仕組みらしい。
要は、あの結界を組み上げた魔王の魔力の一部が私の中にあり、それを流し込むことで、パズルのピースがはまるように解除される。
『鍵』以外があの場所に近付けば、業火に焼かれて跡形も残らないかなり、ヤバめの結界なのだとか。
ん?
「ねえ、ノア。魔王って、誰かに封印されていたのではないの?」
「違いますよ。ご自身で籠っていただけです」
「……こもる?」
引きこもり的な?
「その辺の事情は、私の口からは。そのうち魔王本人から聞いてください。そもそも、魔王を封印できる者などおりませんよ」
「えっ? 聖女や勇者とかは?」
「そんなのは赤子同然ですから。魔王に触れることすら不可能ですよ」
ノアは心底どうでもよさそうに言う。
じゃあ、これから召喚されるであろう勇者は何の為にやって来るのだろうか。
「あ、そういえば。あの場所から魔王城に転移して来たのよね?」
結界が解け、ノア達と合流した魔王は私を抱きかかえたまま、ここへ転移したらしい。
だったら最初から馬車での移動ではなく、魔王城からあの場所へ転移すれば良かったのではないか。そう疑問を口にすると、ノアは窓辺へ行くように促した。
――窓の外には、今まで無かった世界が広がっていた。
きっと、それは勘違いだ。私は声の主に会ったことはない。あのイケボ……もとい、声の主はたぶん魔王だ。
私の身に起こった事態を分析しようと、夢現のままの頭を働かせる。
『鍵』としての役目があったのだから、突然能力が開花したわけではく、ベアトリーチェの前世とかが関係していると考えられた。じゃあ、日向だった私は何だったのか。
そもそも、これは小説の中……。
あれ? 本当にそうなのだろうか?
魔族の三人には、転生前に読んでいた小説の話はしていない。話すべきか……でも、今さら?
考えれば考える程に、混乱の泥沼に沈んでいく気がする。
寝返りを打とうとした――が、何かがおかしい。
「……んんっ!?」
右手が全く動かない。
けれど、指を動かそうと意識をすれば、ピクリと動く。体の異変を感じたせいか、急に頭が冴えてくる。
パチっと目を開くと、隣には私の手を握りしめて寝ている男性。微妙な角度で顔はよく見えないが……それが魔王だと、黒紫の艶やかな髪で直ぐに理解できた。
眠っている? ……いや、それよりもっ!
動かなかった原因――。
しっかりと指を絡めて握られた手は、完全に恋人繋ぎだ。手を抜こうにも、びくともしない。恥ずかしいを通り越して、汗ばんできた手は、だんだんと痺れてくる。
この状況は、一体全体なんなのか?
とりあえず、手を離してほしい。
起こした方が良いか迷いつつ、辺りを見渡すと見慣れた部屋。ここが魔王城だとは分かった。
ベアトリーチェに転生する前に来た時は、キーランが隣に居たっけ。あの時は、猫耳が気になって仕方なかったな。
離されない手は諦め、怖いもの見たさというか……動かせる左手で魔王の髪の毛に触れ、顔に掛かっていた髪をソッと避けてみた。やはり、彫刻みたいな顔がそこにある。
目蓋が動き――バチっと目が合った。
ひえぇっ!!
蛇に睨まれた蛙のように、目が逸らせなくなる。キーランの片目の魔眼と同じ、紫色の宝石の様な瞳の中心は赤く、心の奥まで見透かされそうだった。
「……ビーチェ」
気怠そうに、魔王は呟いた。
は? ビーチェ?
ベアトリーチェの愛称ではあるが……。
唐突に愛称で呼ばれ、カーッと頬が熱くなる。頭の中が疑問だらけになった時、ノックと共に扉が開く。
「……ベアトリーチェお嬢様っ!!」
私を見て涙ぐんだジゼルは、急いで駆け寄ってきた。
「ジゼル……。折角、二人の時間を堪能しているのだ。邪魔をするのではない」
ため息を吐き、勝手なことをぬかした魔王。
「いいえ、魔王様! お嬢様は、三日間も眠り続けていたのですから、すぐに水分とお食事を。また、倒れてしまったら困ります」
「そうか……人間は弱いのだったな」
ジゼルと魔王のやり取りに、ついて行けなかった。三日間も眠っていた事にもビックリだが、何より二人で普通に会話していることに驚いた。
スルッとベッドから降りたガウン姿の魔王は、ジゼルに向かって落ち着いたら呼べと一言残し、部屋を出て行った。
え。なに、あの色気。
パタンと閉じた扉を見ながら、ジゼルに説明を求める。
「ねえ、ジゼル。状況が全く呑み込めないのだけれど? 私、男性と同じベッドに入るとか、経験したの初めてよ」
これでも、嫁入り前なんですけど。
「その心配はございません。魔王様は、お嬢様の魔力を安定させるために、手を繋げてご自身の魔力を流していらっしゃっただけです」
泣き笑いをしたジゼルは、支度をしながら経緯を教えてくれた。
水分と胃にやさしい食事を摂り、湯浴みを済ませると、詳しい状況を説明をする為にノアがやってきた。
「ヒナ、具合はいかがですか?」
「身体は、問題ないわ。頭は混乱しているけれどね」
先にノアの説明を聞いて、魔王を呼ぶのはその後にしてもらう。抱き止められたことや、さっきの接近状態を思い出すと、まだちょっと気恥ずかしい。
ノアの話では、魔王を復活させた私は、魔力の枯渇で倒れてしまったそうだ。
あの魔法陣はある種の結界で、『鍵』と連動して発動する仕組みらしい。
要は、あの結界を組み上げた魔王の魔力の一部が私の中にあり、それを流し込むことで、パズルのピースがはまるように解除される。
『鍵』以外があの場所に近付けば、業火に焼かれて跡形も残らないかなり、ヤバめの結界なのだとか。
ん?
「ねえ、ノア。魔王って、誰かに封印されていたのではないの?」
「違いますよ。ご自身で籠っていただけです」
「……こもる?」
引きこもり的な?
「その辺の事情は、私の口からは。そのうち魔王本人から聞いてください。そもそも、魔王を封印できる者などおりませんよ」
「えっ? 聖女や勇者とかは?」
「そんなのは赤子同然ですから。魔王に触れることすら不可能ですよ」
ノアは心底どうでもよさそうに言う。
じゃあ、これから召喚されるであろう勇者は何の為にやって来るのだろうか。
「あ、そういえば。あの場所から魔王城に転移して来たのよね?」
結界が解け、ノア達と合流した魔王は私を抱きかかえたまま、ここへ転移したらしい。
だったら最初から馬車での移動ではなく、魔王城からあの場所へ転移すれば良かったのではないか。そう疑問を口にすると、ノアは窓辺へ行くように促した。
――窓の外には、今まで無かった世界が広がっていた。
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