転生したら魔王のパートナーだったので、悪役令嬢にはなりません。

Y.ひまわり

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閑話 とある男子生徒の視点

 ――王立学園の入学式の日。

 それは僕にとって、とても刺激的な一日だった。

 僕は、アルシェ・ノース。貧乏男爵家の四男だ。
 この学園は、王立ってだけあって学費は国が持ってくれている。
 ただし、施設費は別にかかるから、僕は最低限のランクの所でどうにかやっている。学園を出ていないと、就職先が限られてしまう。逆に考えれば、名ばかりの家系でも、頑張れば貴族としての良い職を選べるのだ。
 
 気合いを入れて門をくぐった途端、人混みができ始めていた。何事かと思えば、中心にはもの凄く目立っている集団が立っていた。

 あれは、この国の第二王子……エルネスト殿下じゃないか!! 
 こんな間近で王族を拝めるなんてっ。凄いぞ王立学園!

 新聞に小さく載ってた肖像画しか見たことなかったが、やっぱりカッコイイな。それにしても、取り巻きの生徒達だろうか、王子に負けていない容姿をしている。
 同じ男なのに、こうも違うとは……。世の中って、不公平だ。

 ……あれ? あの女生徒は誰だ? 
 王子と一緒に載っていた、婚約者のドルレアン公爵令嬢じゃなさそうだ。

 人混みの中から必死で覗いていたら、急に誰かに話しかけられた。
 きっと、みんな興奮しているのだ……同類だと思って、振り向きながら返事した。

「やっぱり、この学園て凄いですよねぇ!」と。

「何が凄いのかしら?」

 そう言って、首を傾げた黒髪がよく似合う美少女には、見覚えがあった。

「ド……ドルレアン様……?」
「はい、そうですけれど?」

 不思議そうな表情で返事をしてくれた令嬢は、美しい上……本物はとにかく可愛かった。
 思わず後ずさってしまったが、他の生徒も僕の一言で同じような状態になっている。まあ、この状況ならそうなるのも仕方のないことだと思う。

 完全にパニックの僕に軽く微笑み、ドルレアン公爵令嬢は美形集団に向かって歩き出した。



 ◇◇◇



 ほぼ、放心状態で入学式を終えた。

 自分のクラスにはあの集団のメンバーは誰ひとり居なかった。当たり前だけど、クラスにだってランクがあるのだ。

 放課後――。

 特に何かをしようと思ったわけではない。ただ、まだ寮に戻るには勿体なくて、園庭の片隅で植木に隠れるようにゴロンと横になった。
 自分の家と違って、学園ここはどこを見渡しても手入れが行き届いている。
 こんな場所で寝転ぶなんて田舎者の僕くらいだろう。
 
 ――ん? 話し声?

「……ですから、ミュレー男爵令嬢の名前を呼び捨てにされるのは、他の生徒の手前よろしくないかと」
「うるさいぞ、ノア。ベアトリーチェだって名前で呼んでいるのだから別にいいだろう」
「そちらは、ご婚約者ですから」

 どうやら、第二王子と銀髪眼鏡の美形が話しているみたいだ。
 もしかして、王子殿下の三角関係か……って、オイッ! それどころじゃない。王族の話を盗み聞きしてしまった。
 ま、マズいぞっ。もし、見つかったら? 
 
 全身から汗が噴き出す。兎にも角にも、息を殺して見つからないようにしなければならない。

「あー! だったら、どちらも嬢を付けて呼ぶ。これで文句は無いだろう!」
「はい。ございません」
「まったく! お前の所は親子で口煩い……」

 ぶつぶつ文句を言いながら、二人はそのままどこかへ行った。
 完全に気配を感じなくなってから、ふうぅ……っと息を吐き出した。

「はあぁぁぁ、びっくりした」

「それは、こちらのセリフです」

 スッと真上に顔が現れた。それも、超絶美形の銀髪眼鏡が。

 ――えっ? ええええええええぇ!?

「盗み聞きは、感心しませんね。いや、それとも君は眠っていただけでしょうか?」

 キラッと眼鏡の奥の瞳が光ったような……気がした。

「ふぁいっ!! 殿下がご令嬢方の話をしてたなんて、聞いていませんっ!」
「そうですか。ご令嬢方の話は知らないのですね?」
「――あっ」

 僕は馬鹿だぁぁぁっ!

 けれど、その銀髪眼鏡はそれ以上突っ込まず、僕を見逃してくれた。
「この場所は、昼寝には良さそうですね」と、一言残して。

 その日から、僕は関わりを持ってはいけないと思いつつ、二人のご令嬢のことが気になってしまい仕方なかった。
 
 アリスとかいう男爵令嬢は、やたら彼らにベッタリで違和感があった。自分も男爵家の生まれだから、尚更感じたのかもしれない。幾ら何でも、図々しいと。

 反対に、僕にも気さくに話しかけてくれた美しいベアトリーチェ様は、誰にでも差別なく他の令嬢と楽しそうに過ごしていた。なんだか、女生徒で流行っている可愛い髪型は、ベアトリーチェ様が流行らせたらしい。

 さすがだなぁ。

 そして、僕のお気に入りの昼寝場所から、ベアトリーチェ様がこっそり赤茶色の猫を可愛がっている姿が見えた。たぶん、あそこはベアトリーチェ様の憩いの場なのだろう。
 邪魔してはいけないので、決して声はかけないようにしている。
 
 たまたま見てしまっただけだと、言い訳しつつ……僕は、この場所がさらに好きになった。



 ◇◇◇



 長期連休が終わり、学園へ戻った。
 相変わらず、時間が出来ると僕はあの場所へ行く。
 
 ――ただ……。

 最近変な噂が流れていたのが気になった。アリス男爵令嬢が、ベアトリーチェ様に嫌がらせをされているとか。
 きっと何かの間違いだろう。


 それから間もなくして、アリス男爵令嬢が階段から突き落とされる事件が起きた。王子殿下は、犯人探しに躍起になっているそうだ。 
 僕は現場に居なかったので、見ていないしよく分からない。

 だってその時間帯は、ベアトリーチェ様がいつもの場所で猫と戯れているのだ。めちゃくちゃ可愛かった。うん、見ただけだけど。

 あー、癒される。やっぱり王立学園は最高だな!

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