転生したら魔王のパートナーだったので、悪役令嬢にはなりません。

Y.ひまわり

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98. 策士不在の話し合い

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 太古の――それも、光属性の元となる魔力。

 まさか、あれが……。

 そんな力が自分の中に流れているとは、いまいち信じられない。
 まぁ害はなさそうだし、私自身で呼び起こしてしまったのだから、付き合っていくしかないだろう。
 カルロスの話では、よほどの事情がないかぎり、天族が無理に人間から魂を抜き取ることはないらしい。

 けれど、私の状況は違った。

 実際には仮初の印だったが――そうとは知らない緑頭は、私に王妃の印が入っていると思っている。
 その情報が、共有された可能性が高いらしい。

 人間界を飛んだ時にカルロスが感じた視線は、尋常ではなかったそうだ。
 考えたくはないが、完全な王妃となる前に無理に魂を狙うかもしれないと。

「魔王様は、ノアが何をしようとしているのかまでは、聞いていない……ってことですね?」

 ロランは真面目な顔で言った。

「……そうだ。だが、予想はついている。我々が近づけば、ノアの立場が危うくなる。天族に戻ったのなら、安全な筈だ」

 今は?

 カルロスはそれだけ言うと黙ってしまう。何か考えでもあるのか、予想については話してくれない。

「それにしても! ヒナの力は、それだけ天族には魅力があるってことかぁ~。モテモテだねっ」
「……全く嬉しくないわ」

 顔をしかめていた私にキーランはおちゃらけて言うと、くるっとカルロスの方を向き直す。

「俺には、天界の事情なんてよく分からないです。けど、みすみすヒナの魂を奴らに取られるなんて、絶対に嫌だっ。……魔王様も、そうですよね?」

 キーランのオッドアイは、カルロスの真意を探るように見つめている。
 それをカルロスは受け止め、「無論だ」と答えた。

「私だって……天界に連れて行かれるなんて、ごめんだわ!」

 私はカルロスと、共に生きると決めたのだ。

「それにさ、ヒナの力は諸刃の剣ってことでしょ。闇属性の力は天族に敵わないけど、その太古の力は聖属性。アイツらと対等に戦える。一方で、魔族の俺達は簡単にやられちゃうって事だけど」
「キーラン、嫌なこと言わないで。この力は、魔族のみんなに向けたりしないわ」

 私の大切な仲間だもの。……そう、ノアだって。

「ノアを取り戻す方法はないのでしょうか? できれば私にも、カルロスの予想が何なのか教えてほしいです」

 私の願いに、カルロスは仕方なさそうにすると、ポツリ、ポツリと話し出した。

「皆は知らぬと思うが……。ノアの本来の姿、髪と翼は白だ」
  
 薄々はそうじゃないかと思っていた。
 ノアは魔族になったから、グレー寄りの銀色なんだと。天使のイメージや、緑頭の翼も白だったから。
 だけど、それがどうしたのだろうか?

「「まさか……」」と言ったのは、キーランとロランだった。

「天族の翼が白であるのは知っているな?」

 カルロスの問いかけに二人はうなずくが、私には何が言いたいのかサッパリ分からない。
 
「では、髪色はどうだ?」
「ほとんどの天族が金色ですよね。まれに、特別なやつは別の色をしていたりとか……」

 キーランの言葉で、緑頭を思い出す。

「以前、俺が会った奴らも金髪ばかりでした」とロランも言う。

「白い髪は珍しいのですか?」

「珍しいどころじゃないよぉ。人数的には片手くらいでしょう」と、キーランは言った。
 一瞬、ケリーの肉球を想像してしまったが、今はそんなことを考えていてはいけない。
 ノアは五本の指に入る、希少な存在ということだ。

「功績を挙げ、神との対面が叶った者のみ与えられる色だ。天族でも最も高い地位の者がそうだ。ノアの話では、神の前に立つと全てが浄化され、そうなるらしい」

 そうか――ノアは天族の中でも上位にいたのだ。カルロスもそれを知っていた。
 あれ? なら何で魔族になったのだろうか?
 首を傾げた私にカルロスは淡々と言う。

「理由などは知らん。私の元へ来るか尋ねたら、来ると言っただけだからな」

 ――え、そんな感じ!? 

 随分と軽くないだろうか。
 ふと見ると、ロランとキーランもうんうんとうなずいている。……もしかして、この二人も?

「何かノアって、ちょくちょく元部下がどうの言っていたし。天界との関係が悪かったわけじゃないって事ですよね~?」とキーラン。

「でも、緑頭は違ったわ」

 ノアに対して嫌悪感が滲み出ていた。

「確かに、ノアは天界を捨てた者と思われていただろう。だが、未だに慕ってくる者が居ることも事実だ。私の監視の為に、魔族として魔界に居たと言えば立場的にも問題はない。周りが信じるかはノア次第だが」
「……もしかして、それも最初から?」

「そうだが」とカルロスはケロッと言う。

 むしろ、そんな戻れる理由まで用意して、ノアを魔族に勧誘したカルロスが不思議だった。


 ――結局。

 天界からの動きがあるまで様子を見ると決め、私は一度寮へ戻ることにした。

 取りあえず、学園に居る間はキーランとロランが。寮ではキーランがケリーの姿になって、常に近くで見守ってくれることになった。
 それ以外は、魔界でカルロスのそばに居ることにして。



 ◇◇◇



 人間界はもう、空が白む時刻になっていた。

 カルロスと出かけたのを知っているジゼルは、きっと心配しているに違いない。寝て待つように言ってはあったが、ジゼルの性格ではきっと……。

「ふふっ、お嬢様。私を除け者にしましたね?」

 ケリーと共に転移して戻ると、にこやかな笑顔のジゼルが、仁王立ちして待ち構えていた。

 うん、この感じ……二度目だわ。
 目が全く笑っていないジゼルに、ケリーの背中の毛がゾワワッと立った。
 
「ええっと……除け者にしたのではないのよ。想定外の出来事が起こってしまったの」
「では、お嬢様。お支度しながら、たっぷりお聞かせくださいませ」

 ジゼルはニッコリ笑った。

 ケリーを膝に乗せた状態で、一連の出来事をジゼルに伝えた。
「やはり、除け者……」とボソリと聞こえたのは怖かったが、最終的にやる気満々のオーラが漂う。

 私の支度を終えたジゼルは、窓から明るくなった空を見た。そして振り向き様に言う。

「お嬢様、天界へ向かわれる時は、必ずや私にお供させてくださいませ」
「ジゼル、まだ行くとは……」

 何としても、私は捕まえられたくないのだから。

「私、剣の師匠はロラン様。頭で主人を守る術を教えてくださる師匠は……ノア様だと思っております。先に言っておかないと、勝手に乗り込んでしまわれるでしょう? お嬢様が、黙って待つなんて」

『あり得ないでしょう』と不敵な笑みを浮かべる。

「あ……」

 ケリーは、すとんと膝から降りた。それからジゼルの脚に擦り寄り、「ニャ~オ」と鳴いた。

 ――そうだ、守りに入るなんて私らしくない!

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