彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。

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もう一人じゃない

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図書室に集まった俺達は、早速勉強会を始めた。

とは言え、一週間と言う短い期間でこれから俺がしなくちゃいけない勉強は今が七月と言うのもあり二年になってから今までの約三ヶ月分である。



チラリと日奈美、美紀、茉里愛の一年組を見る。

その三人が勉強してる内容すら理解不能とか完全に無理ゲーだと思う。

思わずため息が出る。

やる事は山積みだ。

それにしても……まさか美江にあんな風に睨まれるなんて、な。

そりゃ少し拗ねるぐらいはあったかもしれないが、あんなにも嫌悪感をむき出しにして睨んで来るような事なんてリアルでは無かった。

俺の中での彼女のイメージは穏やかで癒し系で、笑顔が良く似合う子だった。

そして俺もその笑顔が好きで、そんな彼女をどうすればもっと笑顔に出来るかを考える時間もまた好きだった。

でも結局俺は彼女にあんな顔をさせてしまったんだよな。

別れ際メッセージで終わったからこそ、俺の中での彼女の姿はそんな楽しそうに笑う姿で止まっている。

あんなのもはや別人だ……。

もっとも、そうさせてしまったのは俺自身なのだが。

あの時俺がちゃんと彼女を一番に大事に出来ていたらこうはならなかった筈なのに。

「お兄ちゃん?」

左隣に座って勉強をしていた日奈美が、心配そうに顔を覗き込んでくる。

「あ、あぁ。」

「美江ちゃんの事考えてたの?」

「日奈美にはやっぱり分かるか……。」

「仲良かったもんね……。 」

彼女が誰にも話せずに一人で苦しんでいた事も、その後数日で新しい彼氏を作った事も日奈美を通じて知った話だ。

だからこそ事実としては分かっていた。

「でもやっぱ……実際に見たらキツイなぁ…。」

あの時は確かに俺の場所だった筈なのに、今は違う誰かがいる。

今日見せてきた顔も、そんな風に別の誰かと幸せそうに笑う顔も、本来なら見る事の無かった物の筈なのに…。

実際にそれを目の当たりにすると、こんなにも胸が痛い。

「悠にぃ、辛いの?よしよし。」

そう言って頭を撫でてくれる茉里愛。

実際一度別れたのだから、これが本来あるべき姿なのだろう。

もうこれ以上、俺から彼女に何が出来るという訳でもない。

今の俺は彼女と関わる権利は無いのだ。

本来なら背中を押す権利だってもう無いのかもしれない。

あんなに近くに居た筈なのに、今はどうしてこんなにも遠く離れてしまったのだろう。

「悠太さんはこのままで良いんですか……?」

意を決したようにリオが口を開く。

「良くは……無いだろうな。

アイツを傷付けたんだから。」

「確かに現世であなたは傷付けたまま、もう会えなくなってしまったのかもしれない。

でも、今は違いますよね?」

「そう、だな。」

確かに今は違う。

遠くに居た筈の彼女が今は近くに居る。

「辛いのは分かります。

でもこうしてまた出会えたんですから、もう一度彼女と話してみた方が良いのではないですか?」

「でも…。」

今更彼女が俺の話を聞いてくれるだろうか。

伝えたところでどうなるんだろうか。

「確かにちゃんと謝りたい。」

「なら。」

「でもあいつはそんなのもう望んでない。

そんな彼女に向ける謝罪なんて、ただ俺が言いたい事を言うだけの自己満足でしかない。」

「そんなの……やってみなくちゃ分からないじゃないですか。」

「分かるよ、思えばもっと早く彼女と会ってちゃんと話が出来ていたらまた違う結果にもなった筈だ。

でももう全部遅いんだ。」

「それでもお兄ちゃんは美江ちゃんと話すべきだと思う。」

「ひーちゃん……。」

「だって、美江ちゃんの事を考えてるお兄ちゃん、本当に苦しそうで見てられないんだもん。」

そう言う日奈美の表情は本当に苦しそうだった。

「っ……!?」

「私は……私達はお兄ちゃんが辛い時に傍に居てあげたり、支えてあげたりする事は出来るよ?

でも私達には美江ちゃんとの事で出来た傷を消してあげる事は出来ないの。

だってそれは、お兄ちゃん自信が向き合って行くしかない物だから。」

「……そうだな。」

本当にそうだ。

実際誰かが傍にいるだけですぐに消えるような傷ならそもそもこんなにも思い悩んでない。

「大丈夫、私はいつでも何があってもお兄ちゃんの味方だよ。」

「ひーちゃん……。」

泣きたくなった。

もう誰も傷付けたくなんてないのに、俺がこんな風だから日奈美にもみんなにもこんなに気を遣わせていたなんて。

このままで良い訳ない……よな。

今更何かしてこれ以上嫌われる事も無いだろう。

それならこうして身近にいる今、何かをしてみるのもありなんじゃないか。

段々そう思えてきた。

そう思える勇気を貰えた気がした。

「頑張ったらまりがギュッてしてあげる!」

「あ!ちょっと!それは私の役目!」

心臓に悪いのでお手柔らかにお願いします……。

「なら私が電話で朝まで愚痴を聞いてあげる!」

「それは別に良い。」

と言うか志麻、それはお前が電話したいだけだろう……。

「ぴえん……。」

「頑張ってくださいね、悠太さん。」

「おう、サンキュっ。」

リオからの応援に感謝しつつ、一人図書室を後にした。

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