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第二章
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来た道を戻ってから少し歩いた所にハンカチは落ちていた。
「良かった…。
そうだ、この辺りで汗を拭いたんだ。」
再びポケットにそれを入れ、そのまま来た道を戻ろうとすると、その近くで背を向けて道にしゃがみこんでいる美波の姿が見えた。
「…何してんの?」
俺がそう言って近付くと、ビクりと一度肩を震わせてからこちらを見てくる。
「なんで居るんよ…。」
当然だが歓迎はされてない。
向けられているのは明らかな敵意だ。
だからその言葉も質問ではなく文句と言う表現の方が正しい。
「いや…俺はちょっと探し物してただけだって…。
てか…!怪我してんじゃん!」
近付くと膝から血が出ているのが見えた。
恐らく状況から察するに足場が悪いから転けたのだろう。
「別に関係ないじゃろ…。
ほっといてよ。」
破れたジャージから見える膝は、酷く皮が剥けていてとても痛々しい。
結構酷い傷だし、強がっているのは目に見えて分かる。
それを見てショルダーバッグからペットボトルを取り出す。
「ちょっと染みるぞ?」
「え、ちょ…何しとるん!?」
ジャージのズボンを捲り上げ、その中のお茶を美波の膝の傷に少しかける。
「なんかで聞いたんだ。
お茶に含まれてるタンニンには殺菌作用があるって。」
「じゃけぇって…。」
そして、残ったお茶をさっきポケットに入れた物に染み込ませた。
「それ…!」
「あぁ、これか。」
それは、一年前の誕生日に美波から貰ったプレゼント。
青色の少し大きめなハンカチだ。
「なんでまだ持っとるんよ…?」
言いながら睨みつけてくる。
「誰かさんから貰った大事な物だからな。」
そんなのお構いなしに、そう言いながらハンカチを美波の膝に当てる。
「意味分からん…!
そんな大事な物なんじゃったら手放すな…!」
「はいはい。」
それを結び付けながら、適当な返事をする。
「大体そんな大事な物をこんな事に使うな…!」
そう言う風に言葉で拒んではいても、強く抵抗はしてこなかった。
だからそのまま手当てを進めていく。
「だからさ、その…洗って返せよな。
…よし、これでオッケーっと。
ジャージは濡れるからこのまま捲っとけよ。」
「…意味分からんし…。」
「それよりなんでまた戻って来たんだよ?
こんな怪我してまで。」
「別にえぇじゃろ!
関係ないじゃん…!」
一瞬しおらしくなったと思ったのだが、それもすぐに刺々しい態度に戻った。
これは素直に教えてくれる感じではなさそうだな…。
ただ聞いておいてなんだが、美波が戻って来た理由は何となく分かっていた。
実際に俺が戻って来た理由がそうだった訳だし。
「…ん。」
そう思い、背中を向けてしゃがみ込む。
「ばっ…!?馬鹿じゃないん!?」
そのまま後ろ手で手招きすると、思いっきり怒鳴られた。
それに耳を塞ぐ。
「あー…うるさいうるさい…。
お前、なんか落としたんだろ?
わざわざ怪我してまで探しに来るぐらい大切な物を。
その足じゃどうせ探せないだろうから手伝ってやるって言ってんの。」
「えぇってば!なんでそんなに構うん!?
もうほっといてって言うとるのに…!」
そう言う声は荒い。
必死とも言えた。
「ほっとける訳ないだろ!」
だからかそう返す声まで荒くなってしまう。
「っ…!」
それに美波は小さく肩を震わせた。
「このままほっとくなんて出来ない。
多分ずっと後悔する。」
そう思うのは、多分それが美波だからではない。
そもそも元カノだから、なんて言っていられる状況じゃないだろう。
今彼女をこのままほうっておいたらどうなるかなんて、普通に考えれば分かる話だ。
「意味分からんし…。」
そう返す声はとても弱々しい。
「乗らないんなら俺が探すからその辺りに座ってろよ。」
「え、えぇよ!
その…乗るけぇ…。」
立ち上がって来た道を戻ろうとすると、諦めたようにため息を吐いてからそう俺を呼び止めてくる。
「お、おう。」
再びしゃがむと、一瞬ためらいを見せつつも美波は背中に乗ってきた。
空気はやっぱり気まずい。
でも何処となく懐かしさがある。
背中から伝わる彼女の小さな呼吸の音とか体温とか微かな重みが、今自分がしている事への実感を湧かせる。
「お、重いとか言ったら首絞めるけぇ…!」
「い、言わないって…。」
後ろ向きの形になる俺には、彼女の表情が見えない。
今彼女はどんな表情をしているのだろう?
多分露骨に嫌な顔されてるんだろうなぁ…。
まぁ本来は許される事じゃなんだし、仕方ない事ではあるのだが。
でも、それが分かっていても助けると決めたんだ。
そのままゆっくりと進み始める。
美波目線
「無い…。」
山から降りた後、自由時間になってからポケットに入れとった筈の大事な物が無くなっとるのに気付いた。
「美波?どうかした?」
それに戸惑うとると、気付いた理沙が声をかけてくる。
「ごめん…ウチちょっと用事が出来た。
すぐ戻るけぇ、ちょっと待っといてくれん?」
「用事…?
私も行こうか?」
「え、良いよ。
すぐじゃし大丈夫!」
「ふーん…まぁ良いや。
行ってらっしゃい。」
一瞬不審な表情を向けてはきたものの、それ以上は何も言ってこなかった。
足早に元来た道を戻る。
でもその途中にさっきまでの登山で疲れとったからもあってか足場の悪い地面で足を滑らせて盛大に転けてしまった。
その拍子に足を捻ってしまい、あまりの痛さにしゃがみ込む。
ジャージのズボンは破れてしまっていて、そこから覗く膝には結構酷い傷が出来て出血しとった。
この状態じゃしばらく立てそうにない。
どうしよう。
やっぱり理沙に付いてきてもらえば良かったと今更後悔しても遅い。
どうしようか困ってパニックに陥っとると、意外な人が声をかけてくる。
春樹じゃった。
春樹はウチの傷を見ると、手際良く手当てをしてくれる。
それが嫌な筈なのに、何故か嬉しくて抵抗は出来んかった。
どうしてほっといてくれんのんじゃろう?
ウチの事、好きじゃない癖に。
その優しさがどれだけウチを苦しめるんか分かりもせん癖に。
春樹が手当てに使うとったバンダナは誕生日にウチがプレゼントした物だ。
いつか一緒に料理とかしてみたいなぁと思って渡したんじゃけど…。
でも春樹はそれをハンカチじゃと思うとって、ならそれでえぇよと言う事にした。
それを大事な物だからと言うてくれた時、嬉しくない筈なのに嬉しかった。
ならこんな事に使うなって言うたら、洗って返せよな、なんて言う。
意味が分からん。
その上、おぶって探すのを手伝うなんて言い出すのだ。
流石にこれには我慢出来んくなってほっといてと強く言うと、ほっとける訳ないと怒鳴られた。
本当は分かっとるつもりじゃった。
春樹がケガした人をほっとけるような薄情な人間じゃないって事ぐらい。
やっぱりそう言うとこは…変わっとらんなぁ…。
無鉄砲なのも相変わらず。
ありがた迷惑な筈なのに、それが不思議と嫌じゃない自分が嫌になる。
ドキドキしてしもうとる自分が。
期待しちゃ駄目なのに。
もう好きになっちゃ駄目なのに。
赤くなった顔を見られたくなくて目を反らす。
「こんなとこ、新しい彼女に見られたらなんて思うんじゃろうね…。」
背後から澄ました顔でウチをおぶって歩く姿を見とると、思わず憎たらしくなって皮肉を言うてやる。
「は?別にいないよ、そんなの。」
それに呆れた感じの声で返してくる。
「この前女子と二人で歩いとった癖に…。」
「なんだ、見てたのかよ?ただのクラスメイトだって。
それにお前だってそうだろ?別に関係ないじゃん。」
「ふーん。」
確かに関係ない。
気にしちゃいけん事も知っとる。
でもなんとなく聞かずにはおれんかった。
こうして聞けるんも多分今だけじゃし。
もうこれ以上関わっちゃいけんのんじゃし。
春樹目線
それ以降はお互いに何も言わなかった。
と、言うより何も言えなかった。
話したかった事は一杯あった筈だけど、それは今の美波にしたい話じゃない。
したところであの日みたいに喜んで聞いてくれたりはしないだろう。
お互い何も言わず、当ても無く山道を探し回る。
暑さと足場の悪さで進むペースはゆっくりだが、それでも足を止めずに慎重に歩を進めていく。
「そもそも何を探してんだよ?」
確かに話す事はないけど、流石にそれだけは聞かなければなるまい。
「教えたくない…。」
なのに美波はそう言って口をつぐむのだ。
「なんだよそれ…。
迷宮入りじゃん。」
「ウチが探すけぇ。
ううん、ウチが探さんといけんの。」
「ふーん。」
意地でも教えないつもりらしい。
このまま聞いても答えなさそうだし、諦めて黙ったまま歩を進める。
「あ、あった!」
と、そこで美波が唐突にそう叫んで俺のジャージの袖を引いてくる。
慌てて降りようとするからゆっくり降ろすと、それをそのままの勢いで慌ただしく手で掴んですぐに隠してしまう。
でも同じ方向を見ていた俺には当然それが何か見えていた。
その見覚えのあり過ぎる腕時計が。
「なんだよ、お前だって持ってんじゃん。」
お返しとばかりに皮肉を言ってやる。
「別にえぇじゃん…。
デザインが気に入っとるけぇ使うとるだけじゃし…。」
それに美波は弱々しくそう返す。
「ふーん、でもそれをわざわざ怪我してまで探しに来たんだろ?」
「っ…!」
更に踏み込んで皮肉を言うと、分かりやすく口ごもる。
まさかまだ大事に持ってくれていたなんて思わなかった。
とっくに捨てられてるだろうなと思ってたのに。
渡した途端にすぐに付けて、可愛いと大喜びしてくれた黒猫の模様が入ったおしゃれな腕時計。
彼女は今も、あの時と同じ気持ちなのだろうか?
だからまだ持っててくれてるのだろうか?
いや、そんな筈ない。
俺が感じてるこれだって勘違いだし、もう嫌われてるんだからと何度も言い聞かせてきたじゃないか。
やっぱり俺には分からない。
美波がまだそれを持っていた理由も、同じように自分自身が持っていた理由も。
美波目線
無言の時間が流れる。
こんなに近くに居るのに。
一年前じゃったら想像も出来んかったこの感じ。
話したい事は、話せんくなった時に捨ててきた筈なのに。
今になって溢れ出すのはなんでじゃろう?
お互い無言のままゆっくり進んどると、道端に落ちとったそれに気付く。
それは付けとる所を見られたくなくて、いつもポケットに隠しとったお気に入りの腕時計。
誰かさんから貰った最初で最後の誕生日プレゼントだ。
気付かれたくなくてすぐに手で隠したけど、結局気付かれてしまった。
捨てようと思った事もあったけど、結局捨てられずにずっとポケットに入れとった腕時計。
かっこつけて小遣いを前借りしてまでして買ってきてくれたらしい。
見つかって良かった。
ぎゅっと強く握り締める。
お互いに初めての誕生日プレゼントを大事にしとったと知って嬉しい反面、余計に分からんくなる。
やっぱりウチは、春樹の事を全然知らんかったんかもしれん。
何を考えとるのかが分からん。
ウチの事をどう思っとるんかも。
もうどうでもえぇんかと思うとったのに。
今もこうして知らんかった顔をして優しくしてくれとる彼の事が分からん。
ウチの気持ちも、今どうしたいのかも分からんくなる。
いけん事なのに。
あんなにも憤りを感じて、もう関わらんって決めとった筈なのに。
もうどうしたらえぇんか分からん。
「もうえぇよ、降ろして。」
流石に、今の状態を他の人に見られるんはまずい。
もう別れとるのに後でどんな噂を立てられるか分かったもんじゃない。
「あぁ、そうか…。」
春樹も聞いてそれを察したのか、木陰を見付けてそこで降ろしてくれる。
「ちょっと待ってろ。」
それだけ言って、そのまま走り去ってしまう。
あぁ、行ってしまう。
また遠くに行ってしまう。
これで良かったのに。
もう関わらなくてえぇ、そうしたかった筈なのに。
なのに、こんなに胸が痛むのはなんでじゃろう?
その背中を追いかけたくなるんは。
じゃけぇ今だけは足が痛くて良かったとさえ思うてしまう。
これ以上はいけん。
自分を抑えられんくなる。
それからしばらくして、春樹が呼んだらしい先生達がここまで駆けつけてきた。
「美波!大丈夫!?」
そこには理沙の姿もあって、ウチに気付くと慌てて駆け寄ってくる。
「あ、うん、なんとか。」
それに短く返す。
「馬鹿!なんでこんな所に戻ってきたのよ!?」
言いながら泣き顔で抱きついてきた。
「ごめんごめん。
ちょっと落とし物しとって。」
それを抱きとめ、謝る。
「え、それ…。」
抱きついた時に見えたんじゃろう。
膝のバンダナを見て顔をしかめる理沙。
まぁそれも当然だ。
このバンダナは、理沙と一緒に選んだものじゃし。
「それにその時計…。」
そのまま持っとった時計も、貰った時に見せた事があったし理沙は当然知っとる。
「なんで!?なんでまだ持ってんの…。」
「ごめん…ほんまは捨てられとらんかったんじゃ…。」
今まで理沙にはもう捨てたと嘘を付いとった。
感情移入しやすい子じゃし、変に心配をかけたくなかったんじゃけどなぁ…。
「なんでよ!?
捨てたって言ってたのに…。」
「ごめん、心配かけたくなかったけぇ…。」
「許さない。」
「え?」
「私ってそんなに頼りない!?
心配くらいさせてよ!」
そう言う口調は本当に怒っているようだった。
「だって…理沙が心配して泣いとる顔なんて見たくなかったし…。」
「美波に嘘を吐かれる方が私は悲しい。」
気を使ったつもりだったのだが、逆に気を悪くさせてしまったらしい。
「ごめん…。」
素直に謝る。
「でもちゃんと嘘を認めたから許す。」
そして理沙は涙を拭いながらそう言って許してくれた
「うん…ありがとう。」
その安心感からか、大切にしてくれる存在が近くに居る頼もしさからか。
抑えとった物が溢れ出し、ウチまで涙が止まらなくなった。
「それにしても、なんでそのバンダナを美波がそんな風に膝に巻いてるの…?
まさかあいつ…突き返して来た訳!?
やっぱりあいつ許せない!」
そう声を荒げて出口の方を睨み付ける理沙。
「…そんなんじゃない…よ。」
それをウチは小さな声で引き留める。
「え、何それ。」
いかにも拍子抜けした、と言う表情だ。
それに対してウチは何も言えない。
「なんで美波が…あいつの事を…。」
「ウチも…分からんよ…。」
そう、分からん。
ほんまなら憎たらしいし庇う必要なんて一切ないのに。
むしろ嘘じゃけどその通りじゃって言うてやってもえぇくらいなのに、それが出来ない理由がウチには分からない。
何故か、ついこないだまでのようには憎めない。
この場に理沙が居ってくれて良かった。
泣いとる顔なんて見たくなかったし、見せたくもなかったけど、今は誰かに話を聞いてもらいたかった。
一緒に泣いてくれる誰かが欲しかった。
来た道を戻ってから少し歩いた所にハンカチは落ちていた。
「良かった…。
そうだ、この辺りで汗を拭いたんだ。」
再びポケットにそれを入れ、そのまま来た道を戻ろうとすると、その近くで背を向けて道にしゃがみこんでいる美波の姿が見えた。
「…何してんの?」
俺がそう言って近付くと、ビクりと一度肩を震わせてからこちらを見てくる。
「なんで居るんよ…。」
当然だが歓迎はされてない。
向けられているのは明らかな敵意だ。
だからその言葉も質問ではなく文句と言う表現の方が正しい。
「いや…俺はちょっと探し物してただけだって…。
てか…!怪我してんじゃん!」
近付くと膝から血が出ているのが見えた。
恐らく状況から察するに足場が悪いから転けたのだろう。
「別に関係ないじゃろ…。
ほっといてよ。」
破れたジャージから見える膝は、酷く皮が剥けていてとても痛々しい。
結構酷い傷だし、強がっているのは目に見えて分かる。
それを見てショルダーバッグからペットボトルを取り出す。
「ちょっと染みるぞ?」
「え、ちょ…何しとるん!?」
ジャージのズボンを捲り上げ、その中のお茶を美波の膝の傷に少しかける。
「なんかで聞いたんだ。
お茶に含まれてるタンニンには殺菌作用があるって。」
「じゃけぇって…。」
そして、残ったお茶をさっきポケットに入れた物に染み込ませた。
「それ…!」
「あぁ、これか。」
それは、一年前の誕生日に美波から貰ったプレゼント。
青色の少し大きめなハンカチだ。
「なんでまだ持っとるんよ…?」
言いながら睨みつけてくる。
「誰かさんから貰った大事な物だからな。」
そんなのお構いなしに、そう言いながらハンカチを美波の膝に当てる。
「意味分からん…!
そんな大事な物なんじゃったら手放すな…!」
「はいはい。」
それを結び付けながら、適当な返事をする。
「大体そんな大事な物をこんな事に使うな…!」
そう言う風に言葉で拒んではいても、強く抵抗はしてこなかった。
だからそのまま手当てを進めていく。
「だからさ、その…洗って返せよな。
…よし、これでオッケーっと。
ジャージは濡れるからこのまま捲っとけよ。」
「…意味分からんし…。」
「それよりなんでまた戻って来たんだよ?
こんな怪我してまで。」
「別にえぇじゃろ!
関係ないじゃん…!」
一瞬しおらしくなったと思ったのだが、それもすぐに刺々しい態度に戻った。
これは素直に教えてくれる感じではなさそうだな…。
ただ聞いておいてなんだが、美波が戻って来た理由は何となく分かっていた。
実際に俺が戻って来た理由がそうだった訳だし。
「…ん。」
そう思い、背中を向けてしゃがみ込む。
「ばっ…!?馬鹿じゃないん!?」
そのまま後ろ手で手招きすると、思いっきり怒鳴られた。
それに耳を塞ぐ。
「あー…うるさいうるさい…。
お前、なんか落としたんだろ?
わざわざ怪我してまで探しに来るぐらい大切な物を。
その足じゃどうせ探せないだろうから手伝ってやるって言ってんの。」
「えぇってば!なんでそんなに構うん!?
もうほっといてって言うとるのに…!」
そう言う声は荒い。
必死とも言えた。
「ほっとける訳ないだろ!」
だからかそう返す声まで荒くなってしまう。
「っ…!」
それに美波は小さく肩を震わせた。
「このままほっとくなんて出来ない。
多分ずっと後悔する。」
そう思うのは、多分それが美波だからではない。
そもそも元カノだから、なんて言っていられる状況じゃないだろう。
今彼女をこのままほうっておいたらどうなるかなんて、普通に考えれば分かる話だ。
「意味分からんし…。」
そう返す声はとても弱々しい。
「乗らないんなら俺が探すからその辺りに座ってろよ。」
「え、えぇよ!
その…乗るけぇ…。」
立ち上がって来た道を戻ろうとすると、諦めたようにため息を吐いてからそう俺を呼び止めてくる。
「お、おう。」
再びしゃがむと、一瞬ためらいを見せつつも美波は背中に乗ってきた。
空気はやっぱり気まずい。
でも何処となく懐かしさがある。
背中から伝わる彼女の小さな呼吸の音とか体温とか微かな重みが、今自分がしている事への実感を湧かせる。
「お、重いとか言ったら首絞めるけぇ…!」
「い、言わないって…。」
後ろ向きの形になる俺には、彼女の表情が見えない。
今彼女はどんな表情をしているのだろう?
多分露骨に嫌な顔されてるんだろうなぁ…。
まぁ本来は許される事じゃなんだし、仕方ない事ではあるのだが。
でも、それが分かっていても助けると決めたんだ。
そのままゆっくりと進み始める。
美波目線
「無い…。」
山から降りた後、自由時間になってからポケットに入れとった筈の大事な物が無くなっとるのに気付いた。
「美波?どうかした?」
それに戸惑うとると、気付いた理沙が声をかけてくる。
「ごめん…ウチちょっと用事が出来た。
すぐ戻るけぇ、ちょっと待っといてくれん?」
「用事…?
私も行こうか?」
「え、良いよ。
すぐじゃし大丈夫!」
「ふーん…まぁ良いや。
行ってらっしゃい。」
一瞬不審な表情を向けてはきたものの、それ以上は何も言ってこなかった。
足早に元来た道を戻る。
でもその途中にさっきまでの登山で疲れとったからもあってか足場の悪い地面で足を滑らせて盛大に転けてしまった。
その拍子に足を捻ってしまい、あまりの痛さにしゃがみ込む。
ジャージのズボンは破れてしまっていて、そこから覗く膝には結構酷い傷が出来て出血しとった。
この状態じゃしばらく立てそうにない。
どうしよう。
やっぱり理沙に付いてきてもらえば良かったと今更後悔しても遅い。
どうしようか困ってパニックに陥っとると、意外な人が声をかけてくる。
春樹じゃった。
春樹はウチの傷を見ると、手際良く手当てをしてくれる。
それが嫌な筈なのに、何故か嬉しくて抵抗は出来んかった。
どうしてほっといてくれんのんじゃろう?
ウチの事、好きじゃない癖に。
その優しさがどれだけウチを苦しめるんか分かりもせん癖に。
春樹が手当てに使うとったバンダナは誕生日にウチがプレゼントした物だ。
いつか一緒に料理とかしてみたいなぁと思って渡したんじゃけど…。
でも春樹はそれをハンカチじゃと思うとって、ならそれでえぇよと言う事にした。
それを大事な物だからと言うてくれた時、嬉しくない筈なのに嬉しかった。
ならこんな事に使うなって言うたら、洗って返せよな、なんて言う。
意味が分からん。
その上、おぶって探すのを手伝うなんて言い出すのだ。
流石にこれには我慢出来んくなってほっといてと強く言うと、ほっとける訳ないと怒鳴られた。
本当は分かっとるつもりじゃった。
春樹がケガした人をほっとけるような薄情な人間じゃないって事ぐらい。
やっぱりそう言うとこは…変わっとらんなぁ…。
無鉄砲なのも相変わらず。
ありがた迷惑な筈なのに、それが不思議と嫌じゃない自分が嫌になる。
ドキドキしてしもうとる自分が。
期待しちゃ駄目なのに。
もう好きになっちゃ駄目なのに。
赤くなった顔を見られたくなくて目を反らす。
「こんなとこ、新しい彼女に見られたらなんて思うんじゃろうね…。」
背後から澄ました顔でウチをおぶって歩く姿を見とると、思わず憎たらしくなって皮肉を言うてやる。
「は?別にいないよ、そんなの。」
それに呆れた感じの声で返してくる。
「この前女子と二人で歩いとった癖に…。」
「なんだ、見てたのかよ?ただのクラスメイトだって。
それにお前だってそうだろ?別に関係ないじゃん。」
「ふーん。」
確かに関係ない。
気にしちゃいけん事も知っとる。
でもなんとなく聞かずにはおれんかった。
こうして聞けるんも多分今だけじゃし。
もうこれ以上関わっちゃいけんのんじゃし。
春樹目線
それ以降はお互いに何も言わなかった。
と、言うより何も言えなかった。
話したかった事は一杯あった筈だけど、それは今の美波にしたい話じゃない。
したところであの日みたいに喜んで聞いてくれたりはしないだろう。
お互い何も言わず、当ても無く山道を探し回る。
暑さと足場の悪さで進むペースはゆっくりだが、それでも足を止めずに慎重に歩を進めていく。
「そもそも何を探してんだよ?」
確かに話す事はないけど、流石にそれだけは聞かなければなるまい。
「教えたくない…。」
なのに美波はそう言って口をつぐむのだ。
「なんだよそれ…。
迷宮入りじゃん。」
「ウチが探すけぇ。
ううん、ウチが探さんといけんの。」
「ふーん。」
意地でも教えないつもりらしい。
このまま聞いても答えなさそうだし、諦めて黙ったまま歩を進める。
「あ、あった!」
と、そこで美波が唐突にそう叫んで俺のジャージの袖を引いてくる。
慌てて降りようとするからゆっくり降ろすと、それをそのままの勢いで慌ただしく手で掴んですぐに隠してしまう。
でも同じ方向を見ていた俺には当然それが何か見えていた。
その見覚えのあり過ぎる腕時計が。
「なんだよ、お前だって持ってんじゃん。」
お返しとばかりに皮肉を言ってやる。
「別にえぇじゃん…。
デザインが気に入っとるけぇ使うとるだけじゃし…。」
それに美波は弱々しくそう返す。
「ふーん、でもそれをわざわざ怪我してまで探しに来たんだろ?」
「っ…!」
更に踏み込んで皮肉を言うと、分かりやすく口ごもる。
まさかまだ大事に持ってくれていたなんて思わなかった。
とっくに捨てられてるだろうなと思ってたのに。
渡した途端にすぐに付けて、可愛いと大喜びしてくれた黒猫の模様が入ったおしゃれな腕時計。
彼女は今も、あの時と同じ気持ちなのだろうか?
だからまだ持っててくれてるのだろうか?
いや、そんな筈ない。
俺が感じてるこれだって勘違いだし、もう嫌われてるんだからと何度も言い聞かせてきたじゃないか。
やっぱり俺には分からない。
美波がまだそれを持っていた理由も、同じように自分自身が持っていた理由も。
美波目線
無言の時間が流れる。
こんなに近くに居るのに。
一年前じゃったら想像も出来んかったこの感じ。
話したい事は、話せんくなった時に捨ててきた筈なのに。
今になって溢れ出すのはなんでじゃろう?
お互い無言のままゆっくり進んどると、道端に落ちとったそれに気付く。
それは付けとる所を見られたくなくて、いつもポケットに隠しとったお気に入りの腕時計。
誰かさんから貰った最初で最後の誕生日プレゼントだ。
気付かれたくなくてすぐに手で隠したけど、結局気付かれてしまった。
捨てようと思った事もあったけど、結局捨てられずにずっとポケットに入れとった腕時計。
かっこつけて小遣いを前借りしてまでして買ってきてくれたらしい。
見つかって良かった。
ぎゅっと強く握り締める。
お互いに初めての誕生日プレゼントを大事にしとったと知って嬉しい反面、余計に分からんくなる。
やっぱりウチは、春樹の事を全然知らんかったんかもしれん。
何を考えとるのかが分からん。
ウチの事をどう思っとるんかも。
もうどうでもえぇんかと思うとったのに。
今もこうして知らんかった顔をして優しくしてくれとる彼の事が分からん。
ウチの気持ちも、今どうしたいのかも分からんくなる。
いけん事なのに。
あんなにも憤りを感じて、もう関わらんって決めとった筈なのに。
もうどうしたらえぇんか分からん。
「もうえぇよ、降ろして。」
流石に、今の状態を他の人に見られるんはまずい。
もう別れとるのに後でどんな噂を立てられるか分かったもんじゃない。
「あぁ、そうか…。」
春樹も聞いてそれを察したのか、木陰を見付けてそこで降ろしてくれる。
「ちょっと待ってろ。」
それだけ言って、そのまま走り去ってしまう。
あぁ、行ってしまう。
また遠くに行ってしまう。
これで良かったのに。
もう関わらなくてえぇ、そうしたかった筈なのに。
なのに、こんなに胸が痛むのはなんでじゃろう?
その背中を追いかけたくなるんは。
じゃけぇ今だけは足が痛くて良かったとさえ思うてしまう。
これ以上はいけん。
自分を抑えられんくなる。
それからしばらくして、春樹が呼んだらしい先生達がここまで駆けつけてきた。
「美波!大丈夫!?」
そこには理沙の姿もあって、ウチに気付くと慌てて駆け寄ってくる。
「あ、うん、なんとか。」
それに短く返す。
「馬鹿!なんでこんな所に戻ってきたのよ!?」
言いながら泣き顔で抱きついてきた。
「ごめんごめん。
ちょっと落とし物しとって。」
それを抱きとめ、謝る。
「え、それ…。」
抱きついた時に見えたんじゃろう。
膝のバンダナを見て顔をしかめる理沙。
まぁそれも当然だ。
このバンダナは、理沙と一緒に選んだものじゃし。
「それにその時計…。」
そのまま持っとった時計も、貰った時に見せた事があったし理沙は当然知っとる。
「なんで!?なんでまだ持ってんの…。」
「ごめん…ほんまは捨てられとらんかったんじゃ…。」
今まで理沙にはもう捨てたと嘘を付いとった。
感情移入しやすい子じゃし、変に心配をかけたくなかったんじゃけどなぁ…。
「なんでよ!?
捨てたって言ってたのに…。」
「ごめん、心配かけたくなかったけぇ…。」
「許さない。」
「え?」
「私ってそんなに頼りない!?
心配くらいさせてよ!」
そう言う口調は本当に怒っているようだった。
「だって…理沙が心配して泣いとる顔なんて見たくなかったし…。」
「美波に嘘を吐かれる方が私は悲しい。」
気を使ったつもりだったのだが、逆に気を悪くさせてしまったらしい。
「ごめん…。」
素直に謝る。
「でもちゃんと嘘を認めたから許す。」
そして理沙は涙を拭いながらそう言って許してくれた
「うん…ありがとう。」
その安心感からか、大切にしてくれる存在が近くに居る頼もしさからか。
抑えとった物が溢れ出し、ウチまで涙が止まらなくなった。
「それにしても、なんでそのバンダナを美波がそんな風に膝に巻いてるの…?
まさかあいつ…突き返して来た訳!?
やっぱりあいつ許せない!」
そう声を荒げて出口の方を睨み付ける理沙。
「…そんなんじゃない…よ。」
それをウチは小さな声で引き留める。
「え、何それ。」
いかにも拍子抜けした、と言う表情だ。
それに対してウチは何も言えない。
「なんで美波が…あいつの事を…。」
「ウチも…分からんよ…。」
そう、分からん。
ほんまなら憎たらしいし庇う必要なんて一切ないのに。
むしろ嘘じゃけどその通りじゃって言うてやってもえぇくらいなのに、それが出来ない理由がウチには分からない。
何故か、ついこないだまでのようには憎めない。
この場に理沙が居ってくれて良かった。
泣いとる顔なんて見たくなかったし、見せたくもなかったけど、今は誰かに話を聞いてもらいたかった。
一緒に泣いてくれる誰かが欲しかった。
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わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密
まさき
青春
俺は今、東大院生の実験対象になっている。
ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。
「家庭教師です。住まわせてください」
突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。
桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。
偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。
咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。
距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。
「データじゃなくて、私がそう思っています」
嘘をついているような顔じゃなかった。
偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。
不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
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