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忘れていた重要案件
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それから軽音部会議を開いた。チハルが切り出す。
「五月も下旬です。予選動画撮影とガルテナ出場登録が近づいて来ました。そこで、重要な案件を忘れていることに気付きました」
重要な案件と言うが、声からそこまで致命的でないことは察せられた。
マリも察したようで、大袈裟に頭を抱えた。ボケモードに入った。
「なんてこったー!」
「まだ何も言ってません」
「はい、ごめんなさい」
チハルはやれやれといった様子。マリの扱いに慣れてきている。
マリが謝ったのは話の邪魔をしたのがちょっと悪かったと思ったのかもしれない。
サナエさんが先を促す。
「重要な案件って?」
「はい、それは、バンド名です!」
「あぁ」
「ガルテナの出場登録に必要なんです」
それなら悩むことも無い。
「明音高校軽音部じゃダメなの?」
そう言うと、マリに凄い剣幕で怒られた。
「ダメに決まってるでしょ! バンド名だよバンド名! 感性だけ停学してるの!?」
「え、そんなに怒る?」
「大体おかしーでしょ! 曲名はめちゃめちゃ悩んで決めるくせに!」
「なんでそれ知ってんの!?」
驚いた。なぜそれを知っているのか。
マリはよくパソコンを操作している私の背後に気配を消して忍び寄っていることがある。
本人は「そんなつもりはないよ!」と言うが、あれは明らかに忍び寄っている。
曲名のことも悩んでいる時に後ろから覗き見られたのかもしれない。
くっそー。とマリを睨むとマリも私を睨んでいた。間に火花が散る。
「これは本当に重要かもしれません。目を引き、言いやすく、覚えやすい方が予選に有利かもしれません」
「お、小賢しいけどそれはありそうだな」
火花を無視して分析したシオリにサナエさんが同意する。
チハルが話を進める。
「という訳で皆さん明日までに最低一つ考えて来て下さい」
「分かった、百個くらい考えてくるね!」
「訂正します。一人一つ一番いいと思うバンド名を考えて来て下さい」
「えぇー、もう八十個くらい思いついてたのにー」
チハルがマリのボケを切り捨てて、その日の軽音部会議は終わった。
翌日、また部室のコタツを囲んで軽音部会議を開いていた。
「では皆さん考えてきたバンド名を書いて下さい。一通り説明したあと、多数決で決めましょう!」
チハルはノートをコタツの上に広げて筆箱を置いた。
各々それを使い、考えてきたバンド名をノートに記入する。
皆隠しながら書く訳ではないので誰が何を書いたか分かった。
・リコルリエ(チハル案)
・♰New wind♰(マリコ案)
・あんまんズ(シオリ案)
・明音高校軽音部(ユカリ案)
・エトワール(サナエ案)
「シオリ……あんまんズは無いよ……」
シオリが書いたときからずっとツッコみたかったけど全員書き終わるのを待ってから言った。
するとシオリは首を振って私の批判を否定した。
マリが驚く。
「相当気に入ってた!?」
「なにソレ」
「マリがふざけてつけようとした部活名です」
部活名の命名時にいなかったサナエさんは知らなかったので補足しておいた。
補足もいらない気がするけど。
「これはちょっと……」
「無しだな」
少し言い辛そうにしていたチハルをまるで気にせずサナエさんが切り捨てた。
シオリはサナエさんをジロリと睨んだ。
それに気付いていたかは分からないけど、マリがまるで自分の案を却下されたようにご立腹になり私の案につっかかって来る。
あんまんズ生みの親だからか思い入れがあったのかもしれない。
「なによう! それなら明音高校軽音部だって無しでしょ!」
「これはこれでインパクトあっていいんじゃないの? って思えてきてさ。覚えやすいし」
「そういうバンドいますよ?」
「え、マジで?」
チハルからの衝撃情報。世界は広かった。
「はいはい、無し無し!」
今度はご立腹のマリが私の案を切り捨てた。
「♰New wind♰っていうのは?」
「はいはーい! 私の案だよ! 四月に軽音部という新しい風を感じたからつけてみました!」
チハルの質問に発案者のマリが元気に手を挙げて答える。
「十字架みたいなのはなんですか?」
「カッコいいと思って!」
真面目な顔をしたシオリの質問にマリが浅い回答をする。
これはチャンス。昨日の復讐をしつつ切り捨ててやる。
「感性退学してるね」
「停学以下!?」
「八十個考えてソレ?」
「まさかの追撃!?」
マリは目を丸くしていた。いつでもいいリアクションをしてくれる。
「お前らセンス無さすぎだろ。私の案を見ろよ。『エトワール』カッコいいだろ?」
「なんか聞いたことありますけど、どういう意味です?」
ドヤ顔で自分の案を推すサナエさんに問いかける。
「フランス語で星って意味だ。私等五人だし丁度いいだろ?」
「むむ……確かに。しかもカッコいいですね」
チハルはなかなか気に入っていたようだ。
でもシオリは冷ややかな視線をノートに落としていた。
「気取っていますね」
「お前やたら私に厳しいのなんなの」
シオリはサナエさんに厳しい。というか完全に敵視している。
元から敵視していたのに昨日の眼鏡戦争は致命的だったのでは。
マリがチハル案の「リコルリエ」を指さしながら問いかける
「この復活の呪文みたいのはなに?」
「ふっふっふー、それにはエモい仕掛けが隠されているのです!」
チハルが両手を腰に当てて胸を張ったが、意味は分からなかった。
「エモい仕掛け?」
「そう、これは皆の名前の最後の文字を入部順に並べてあるのです!」
チハルが会心のドヤ顔で言った。
「それはグッとくるねー!」
「私が一番なの?」
マリには刺さったようだが、疑問に思ったので聞いてみる。
「はい。DTM部からの順番です」
「これ順番合ってんの?」
サナエさんはノートに私達の名前をカタカナで書いた。
ユカリ
マリコ
チハル
シオリ
サナエ
書いて納得した様子。ペンを置いた。
「合ってたわ」
「名前の一部を切り取って繋げるって、なんか漫画とか小説で作者しか盛り上がらないネタみたいだけど」
「さっきから触れる物全て傷つけるみたいなのなんなの?」
マリに叱られた。確かにさっきから批判してばかりだったので反省する。でもどれも本心なんだよなぁ。
「これで一通り説明は終わりましたね。では良かったと思うものに指をさして下さい。せーのっ!」
チハルの合図に合わせて、各々ノートに記入されたバンド名を指さす。
「リコルリエが四人、エトワールが一人、となりましたので、リコルリエで決定とします!!」
ケチつけておいてなんだけど、私もチハル案に投票した。消去法で。あまりこだわりもないし。
チハルは自分の案が通ってとても嬉しそうだ。マリとシオリが拍手をして祝福する。
そんな中、サナエさんはまだ納得していないようだ。
「くそッ! いいのかよお前ら! リコルリエなんてなんか噛みそうじゃねーか!」
「サナエさんの活舌が悪いだけですよ。リコルリエ、なんとなく言いたくなります。オフィシャルアンバサダーのような魅力があります」
マリが腕を組んでうんうんと頷きながら意味不明なフォローをしたが、発案者のチハルにも意味不明なフォローだったようだ。
「それ魅力ですか?」
「それに可愛いし! 私達の名前が入ってるのがいいよ!」
マリはとても気に入った様子で、それにシオリが頷いて同意していた。
サナエさんももう諦めたよう反撃はしなかった。
「では、決定ですね!私達はこれからリコルリエです!」
チハルの満面の笑みで私達のバンド名が決定した。
「五月も下旬です。予選動画撮影とガルテナ出場登録が近づいて来ました。そこで、重要な案件を忘れていることに気付きました」
重要な案件と言うが、声からそこまで致命的でないことは察せられた。
マリも察したようで、大袈裟に頭を抱えた。ボケモードに入った。
「なんてこったー!」
「まだ何も言ってません」
「はい、ごめんなさい」
チハルはやれやれといった様子。マリの扱いに慣れてきている。
マリが謝ったのは話の邪魔をしたのがちょっと悪かったと思ったのかもしれない。
サナエさんが先を促す。
「重要な案件って?」
「はい、それは、バンド名です!」
「あぁ」
「ガルテナの出場登録に必要なんです」
それなら悩むことも無い。
「明音高校軽音部じゃダメなの?」
そう言うと、マリに凄い剣幕で怒られた。
「ダメに決まってるでしょ! バンド名だよバンド名! 感性だけ停学してるの!?」
「え、そんなに怒る?」
「大体おかしーでしょ! 曲名はめちゃめちゃ悩んで決めるくせに!」
「なんでそれ知ってんの!?」
驚いた。なぜそれを知っているのか。
マリはよくパソコンを操作している私の背後に気配を消して忍び寄っていることがある。
本人は「そんなつもりはないよ!」と言うが、あれは明らかに忍び寄っている。
曲名のことも悩んでいる時に後ろから覗き見られたのかもしれない。
くっそー。とマリを睨むとマリも私を睨んでいた。間に火花が散る。
「これは本当に重要かもしれません。目を引き、言いやすく、覚えやすい方が予選に有利かもしれません」
「お、小賢しいけどそれはありそうだな」
火花を無視して分析したシオリにサナエさんが同意する。
チハルが話を進める。
「という訳で皆さん明日までに最低一つ考えて来て下さい」
「分かった、百個くらい考えてくるね!」
「訂正します。一人一つ一番いいと思うバンド名を考えて来て下さい」
「えぇー、もう八十個くらい思いついてたのにー」
チハルがマリのボケを切り捨てて、その日の軽音部会議は終わった。
翌日、また部室のコタツを囲んで軽音部会議を開いていた。
「では皆さん考えてきたバンド名を書いて下さい。一通り説明したあと、多数決で決めましょう!」
チハルはノートをコタツの上に広げて筆箱を置いた。
各々それを使い、考えてきたバンド名をノートに記入する。
皆隠しながら書く訳ではないので誰が何を書いたか分かった。
・リコルリエ(チハル案)
・♰New wind♰(マリコ案)
・あんまんズ(シオリ案)
・明音高校軽音部(ユカリ案)
・エトワール(サナエ案)
「シオリ……あんまんズは無いよ……」
シオリが書いたときからずっとツッコみたかったけど全員書き終わるのを待ってから言った。
するとシオリは首を振って私の批判を否定した。
マリが驚く。
「相当気に入ってた!?」
「なにソレ」
「マリがふざけてつけようとした部活名です」
部活名の命名時にいなかったサナエさんは知らなかったので補足しておいた。
補足もいらない気がするけど。
「これはちょっと……」
「無しだな」
少し言い辛そうにしていたチハルをまるで気にせずサナエさんが切り捨てた。
シオリはサナエさんをジロリと睨んだ。
それに気付いていたかは分からないけど、マリがまるで自分の案を却下されたようにご立腹になり私の案につっかかって来る。
あんまんズ生みの親だからか思い入れがあったのかもしれない。
「なによう! それなら明音高校軽音部だって無しでしょ!」
「これはこれでインパクトあっていいんじゃないの? って思えてきてさ。覚えやすいし」
「そういうバンドいますよ?」
「え、マジで?」
チハルからの衝撃情報。世界は広かった。
「はいはい、無し無し!」
今度はご立腹のマリが私の案を切り捨てた。
「♰New wind♰っていうのは?」
「はいはーい! 私の案だよ! 四月に軽音部という新しい風を感じたからつけてみました!」
チハルの質問に発案者のマリが元気に手を挙げて答える。
「十字架みたいなのはなんですか?」
「カッコいいと思って!」
真面目な顔をしたシオリの質問にマリが浅い回答をする。
これはチャンス。昨日の復讐をしつつ切り捨ててやる。
「感性退学してるね」
「停学以下!?」
「八十個考えてソレ?」
「まさかの追撃!?」
マリは目を丸くしていた。いつでもいいリアクションをしてくれる。
「お前らセンス無さすぎだろ。私の案を見ろよ。『エトワール』カッコいいだろ?」
「なんか聞いたことありますけど、どういう意味です?」
ドヤ顔で自分の案を推すサナエさんに問いかける。
「フランス語で星って意味だ。私等五人だし丁度いいだろ?」
「むむ……確かに。しかもカッコいいですね」
チハルはなかなか気に入っていたようだ。
でもシオリは冷ややかな視線をノートに落としていた。
「気取っていますね」
「お前やたら私に厳しいのなんなの」
シオリはサナエさんに厳しい。というか完全に敵視している。
元から敵視していたのに昨日の眼鏡戦争は致命的だったのでは。
マリがチハル案の「リコルリエ」を指さしながら問いかける
「この復活の呪文みたいのはなに?」
「ふっふっふー、それにはエモい仕掛けが隠されているのです!」
チハルが両手を腰に当てて胸を張ったが、意味は分からなかった。
「エモい仕掛け?」
「そう、これは皆の名前の最後の文字を入部順に並べてあるのです!」
チハルが会心のドヤ顔で言った。
「それはグッとくるねー!」
「私が一番なの?」
マリには刺さったようだが、疑問に思ったので聞いてみる。
「はい。DTM部からの順番です」
「これ順番合ってんの?」
サナエさんはノートに私達の名前をカタカナで書いた。
ユカリ
マリコ
チハル
シオリ
サナエ
書いて納得した様子。ペンを置いた。
「合ってたわ」
「名前の一部を切り取って繋げるって、なんか漫画とか小説で作者しか盛り上がらないネタみたいだけど」
「さっきから触れる物全て傷つけるみたいなのなんなの?」
マリに叱られた。確かにさっきから批判してばかりだったので反省する。でもどれも本心なんだよなぁ。
「これで一通り説明は終わりましたね。では良かったと思うものに指をさして下さい。せーのっ!」
チハルの合図に合わせて、各々ノートに記入されたバンド名を指さす。
「リコルリエが四人、エトワールが一人、となりましたので、リコルリエで決定とします!!」
ケチつけておいてなんだけど、私もチハル案に投票した。消去法で。あまりこだわりもないし。
チハルは自分の案が通ってとても嬉しそうだ。マリとシオリが拍手をして祝福する。
そんな中、サナエさんはまだ納得していないようだ。
「くそッ! いいのかよお前ら! リコルリエなんてなんか噛みそうじゃねーか!」
「サナエさんの活舌が悪いだけですよ。リコルリエ、なんとなく言いたくなります。オフィシャルアンバサダーのような魅力があります」
マリが腕を組んでうんうんと頷きながら意味不明なフォローをしたが、発案者のチハルにも意味不明なフォローだったようだ。
「それ魅力ですか?」
「それに可愛いし! 私達の名前が入ってるのがいいよ!」
マリはとても気に入った様子で、それにシオリが頷いて同意していた。
サナエさんももう諦めたよう反撃はしなかった。
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