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第二部
本懐
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誰もが人には言えない秘密を一つや二つ、抱えているだろう? ただ、俺の秘密といえば、下校時に催した尿意を道端の電柱に吐き出すなどの、取るに足りない個人的な恥辱ばかりで、秘密と呼ぶには少々物足りない。だがこの世界に於いて、俺は秘密に相応しい事情を抱える事になった。その秘密を共有する友人もいる。死んで別れを告げた前世が無味乾燥なる集積に映るほど、濃い時間を過ごしている。これを充足感だと咀嚼し、人生を謳歌していると考えたならば、それがきっと本当も嘘も関係ない、あって然るべき自我という奴に違いない。
依頼は突然に舞い込んでくる。手の空いた者を適当に選別し、肩を叩くのだ。それにまだ慣れていない俺は、シュミから肩を叩かれると生娘の如く身体に電気を走らせる。
「驚き過ぎだよ」
そうなれば、情けなそうに頭を掻く以外に取り繕う方法はなく、依頼の内容を授かるまでの間に巧言令色のいろはを手探りで体験する。
今回、シュミから言い渡された依頼とは、近日催される商工会のパーティーに参加する予定である、貴金属屋の主人の守護だ。偶さか大広間を通りがかった際に持ち掛けられたという事もあって、リーラルと名乗る初めて顔を合わせた男とコンビを組まされた。しかし、初々しさのカケラもなく、開口一番に愚痴を吐露してしまう。
「パーティーだよな? どうして甲冑なんか」
部屋の飾りとして認識していた甲冑を身に纏う機会が早々に来て、俺は頭を抱えた。
「ボディーガードのドレスコードにはピッタリだとさ」
リーラルも同じように重々しく息を吐き、依頼に因んだ身なりの強制をひとしおに嫌悪する。
「こんな雑用、国の管理下にある冒険団に頼んで欲しいわ」
月照という冒険団に従事する上で、今回の依頼は甚だ理念にそぐわない、取るに足らないものらしい。
「パーティーって、どれくらい集まるんだ?」
「さあね。前回この依頼に参加したマオにでも訊いたら?」
既知である事を前提に、その名前の人物を出されるバツの悪さは暗中模索にも似た恐怖があり、苦笑せざるを得ない。
「そうするよ」
行きずりの嘘を吐き、自ら招いた苦々しい話題を遠ざけた。そして、持ち直す為の新たな話題を提供する。
「冒険団って、幾つあるんだろうな」
大広間で立ち話に興じる者は俺達以外にもおり、部屋を除いた団員同士の交流場所として機能しているようだ。
「私設は数えようがないけど、国営は三つかな。シュバルツ、エイラン、ボーズ」
無知は承知だが、ここまで聞き馴染みのない言葉が並ぶと、表情の作り方に惑う。喜怒哀楽をほどほどに、透かしたような態度を維持する薄氷は、ひょんなことから割れて粉々になってしまいそうだ。
「特にシュバルツは、団員数が飛び抜けて多くて、その背景には大地主である「ココ・モーラ」の出資が大きい」
「月照もなかなかだよな?」
「当たり前だろ。私設の中じゃトップだよ。だからこそ、ボディーガードに選ばれたんだ」
「どういう意味?」
「商工会のパーティーでわざわざボディーガードを付ける意味は、ひとえに見栄さ」
リーラルは大手を広げて説明に熱を上げた。どれだけ今回の依頼が自分にとって、忌避すべき事なのかを懇切丁寧に、態度と言葉を操り押し出す。
「小賢しい見栄の為に駆り出される。いやぁー、ほんっとう屈辱だ」
俺が依頼を共にする相手は尽く、不満を口にし、如何に気が進まないかの理由をあけすけにする。本音を口にする気持ちよさは知っているし、述懐して気分が軽やかになるなら、相槌を打って舌に油を乗せるのも吝かではない。しかし、迂闊に同調すると、火傷を負いかねない事態にもなり得る。自分の中で線引きを持って接する努力が必要だ。
「でもさ、カイトウが引き受けた依頼だ。月照にとって、マイナスになることはないんじゃないか?」
「分かってる。だからこそ、苛つくんだよ」
苦虫を潰すリーラルは、苛立ちそのままに依頼へ臨み、無節操な振る舞いをして月照の印象を貶めるような気概はないらしく、あくまでもカイトウの意図を汲んだ上で、悪態をついているだけのようだった。
依頼は突然に舞い込んでくる。手の空いた者を適当に選別し、肩を叩くのだ。それにまだ慣れていない俺は、シュミから肩を叩かれると生娘の如く身体に電気を走らせる。
「驚き過ぎだよ」
そうなれば、情けなそうに頭を掻く以外に取り繕う方法はなく、依頼の内容を授かるまでの間に巧言令色のいろはを手探りで体験する。
今回、シュミから言い渡された依頼とは、近日催される商工会のパーティーに参加する予定である、貴金属屋の主人の守護だ。偶さか大広間を通りがかった際に持ち掛けられたという事もあって、リーラルと名乗る初めて顔を合わせた男とコンビを組まされた。しかし、初々しさのカケラもなく、開口一番に愚痴を吐露してしまう。
「パーティーだよな? どうして甲冑なんか」
部屋の飾りとして認識していた甲冑を身に纏う機会が早々に来て、俺は頭を抱えた。
「ボディーガードのドレスコードにはピッタリだとさ」
リーラルも同じように重々しく息を吐き、依頼に因んだ身なりの強制をひとしおに嫌悪する。
「こんな雑用、国の管理下にある冒険団に頼んで欲しいわ」
月照という冒険団に従事する上で、今回の依頼は甚だ理念にそぐわない、取るに足らないものらしい。
「パーティーって、どれくらい集まるんだ?」
「さあね。前回この依頼に参加したマオにでも訊いたら?」
既知である事を前提に、その名前の人物を出されるバツの悪さは暗中模索にも似た恐怖があり、苦笑せざるを得ない。
「そうするよ」
行きずりの嘘を吐き、自ら招いた苦々しい話題を遠ざけた。そして、持ち直す為の新たな話題を提供する。
「冒険団って、幾つあるんだろうな」
大広間で立ち話に興じる者は俺達以外にもおり、部屋を除いた団員同士の交流場所として機能しているようだ。
「私設は数えようがないけど、国営は三つかな。シュバルツ、エイラン、ボーズ」
無知は承知だが、ここまで聞き馴染みのない言葉が並ぶと、表情の作り方に惑う。喜怒哀楽をほどほどに、透かしたような態度を維持する薄氷は、ひょんなことから割れて粉々になってしまいそうだ。
「特にシュバルツは、団員数が飛び抜けて多くて、その背景には大地主である「ココ・モーラ」の出資が大きい」
「月照もなかなかだよな?」
「当たり前だろ。私設の中じゃトップだよ。だからこそ、ボディーガードに選ばれたんだ」
「どういう意味?」
「商工会のパーティーでわざわざボディーガードを付ける意味は、ひとえに見栄さ」
リーラルは大手を広げて説明に熱を上げた。どれだけ今回の依頼が自分にとって、忌避すべき事なのかを懇切丁寧に、態度と言葉を操り押し出す。
「小賢しい見栄の為に駆り出される。いやぁー、ほんっとう屈辱だ」
俺が依頼を共にする相手は尽く、不満を口にし、如何に気が進まないかの理由をあけすけにする。本音を口にする気持ちよさは知っているし、述懐して気分が軽やかになるなら、相槌を打って舌に油を乗せるのも吝かではない。しかし、迂闊に同調すると、火傷を負いかねない事態にもなり得る。自分の中で線引きを持って接する努力が必要だ。
「でもさ、カイトウが引き受けた依頼だ。月照にとって、マイナスになることはないんじゃないか?」
「分かってる。だからこそ、苛つくんだよ」
苦虫を潰すリーラルは、苛立ちそのままに依頼へ臨み、無節操な振る舞いをして月照の印象を貶めるような気概はないらしく、あくまでもカイトウの意図を汲んだ上で、悪態をついているだけのようだった。
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