鞍替えした世界で復讐を誓う

駄犬

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第二部

スカベラについて

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「スカベラは等身大の人間と変わらない骨格を持った昆虫だよ。動物や植物、同種の昆虫を捕食する雑食性は生物間相互作用に欠かせない、生態系のバランスを保つ為の一面を有していて、「森の掃除屋」として有り難られた存在だった」

「女王を頂点にピラミッド形に役割が振り分けられている。女王の他に雌はいない為、雄は傅く他なく、蟻とよく似た生態で、次の排卵の準備で動けない女王の為に、栄養となる餌の献上に雄達が動くんだ。森に棲みつく動物を主に餌とし、栄養としてきていたが、とある日、一匹のスカベラが人里に降りた。そして、人間の子どもを襲った。女王にそれを献上すれば、すこぶる元気になり、スカベラは人間が持つ栄養価の高さを知った。もうそうなると、言うまでもないよね?」

「次々とスカベラに襲われていく国民の動静を重く見た当時の国王は、結成されている冒険団を遍く集め、スカベラの討伐を命じた。しかし、スカベラの住処を正確に把握しておらず、モグラ叩きの要領でしらみ潰しに会敵したスカベラと戦闘を繰り返した。その間にも、女王は着々と排卵に向けて人間の餌を体内に取り込み続けた。結果、産み落とされたスカベラは、高度な知能を持って誕生した」
 
「人間の事をよく理解し、血で血を洗う惨状を憂いたスカベラの子ども達は、今現在「エブリン協定」と呼ばれる和平に向けて動き出す。その内訳には、国民から盛大に怒りを買ったが、時が経つにつれて、平和の恩恵を受け入れていった」

 事の顛末を滔々とマイヤーから説明を受けたが、解せない事ばかりだ。「エブリン協定」とは即ち、将来の問題を棚上げした、盲目的な政策であり遅効性の毒に違いない。こうなる事は、初めから決まっていて、俺達は巡り合わせ悪くスカベラの問題と向き合っているという訳だ。

「あくまでも推測に過ぎないが、今回の依頼、スカベラとの接敵は免れられないだろうね」

 月照の団員が一様に渋い顔をして、カイトウの言う事に耳を傾けていた理由を知ったものの、深刻さをいまいち咀嚼し切れておらず、どこか楽観的だった。

「……二度とないチャンスだ」

 依頼に乗じて復讐は恙無く行える上、死亡の理由をスカベラに押し付けてしまえば、懸念材料はすべて解決し、後腐れなくこの世界に定住できる。地に足のついた理想的な展開が今、頭の中で組み上がった。

「でも、考えておく必要があるのは、僕達が無事に帰って来られるかどうかだよ」

 俺は指折りの楽観主義者ではなかったが、上記の通り、スカベラを盾にどう復讐を遂げるかについて気が向いていた。知識不足は否めず、想像力も追い付いていなかった。

「そんなにもスカベラは危険なのか?」

「僕も伝聞になってしまうけど、はっきりいって、最悪」

 マイヤーがお手上げだと動作して諦念を湛える。「月照」を束ねるリーダー自ら赴かなければ勇姿を募るのに苦労したと考えれば、確かに今回の依頼、なかなかに骨が折れるようだ。

「おまえ、冗談だろう?」

 そしてトムもまた、にわかには信じられないと言った顔をし、立ち眩みを催したかのように椅子へ腰を落ち着ける。それは明らかに、「スカベラ」に対しての畏怖だ。

「本当さ。今回が最も寝首を掻く絶好の機会なんだよ」

「何も分かってないな」

 トムは呆れたように俺の判断を貶める。

「どういう事だ」

「先ず初めに、月照の方針の変化に伴う恩恵と、スカベラの生息地に足を踏み入れる事を天秤に掛けて考えるという前提は成立しない」

「どうして?」

「ぼくがきみの復讐を手伝わなくとも、月照の頭は死ぬ可能性が大きいからだ」

「……」

「ぼくらの関係は既に破綻しているんだよ」

 もとより、復讐の予行演習としてトムを襲おうとした所、なくなく失敗に終わり、互いの身持ちを鑑みた結果、折衷案が結ばれた。権力を笠に着て指図する関係になく、トムの判断は合理的で頷けるものだった。

「わかった。なら、期待して待っていて欲しい。スカベラの手を借りずとも俺が直接手を下す事を」

「嗚呼、幸運を祈るよ。出来る事なら、町外れにある弁当屋を訪ねる事もお勧めしとくよ」
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