• 『社交界の華は、影に咲く毒。〜私を捨てた世界、すべてお返しいたします〜』

ヨォコ

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第一章:黄金の瞳の令嬢

第2話前半:黄金の瞳の記憶(回想)

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それは、今でも時折、雪の降る夜に思い出す記憶。
 三歳の冬、エレーナは「母様は遠いお空へ行った」と聞かされた。馬車の事故だった。
 まだ幼かったエレーナは、泣き崩れる父・ロイス伯爵の膝にしがみつき、その時初めて無意識に能力を使った。父の視界と共有し、彼の深い悲しみを、自分のことのように感じ取ったのだ。
「……父様、泣かないで。エレーナがずっとそばにいるわ」
 父は、その時黄金色に輝いた娘の瞳を「なんて美しく、優しい瞳なんだ」と抱きしめてくれた。
 伯爵家の使用人たちも、不思議な力を持つエレーナを「天使の贈り物」「家の守り神」と呼び、誰もが彼女を愛していた。エレーナが瞳を光らせて探し物を見つけたり、悲しんでいる人の心を癒やすたび、屋敷は温かな笑顔に包まれていた。
 ――けれど。その温もりは、継母イザベラがやってきたあの日から、音を立てて崩れ去った。
「まぁ、可愛らしいお嬢様。私が本当の母親の代わりになりますわね」
 父の前で、イザベラは聖母のような笑みを浮かべていた。連れ子の義妹も、初めは人懐っこい妹を演じていた。
 だが、父が仕事で屋敷を空けた瞬間、その仮面は剥がれ落ちる。
 きっかけは、エレーナが義妹のために、能力を使って失くしたブローチを見つけてあげた時だった。
「――見てしまったわ。その、気味の悪い目」
 イザベラの声は氷のように冷たかった。
 それまで優しかった彼女の瞳に、明確な**「嫌悪」と「恐怖」**が宿ったのを、エレーナは見逃さなかった。
 それ以来、父がいない時間は地獄へと変わった。
 エレーナは食事を抜かれ、義妹のお下がりばかりを与えられた。
「化け物の血がうつる」という身勝手な理由で、イザベラはエレーナを暗い納戸に閉じ込めるようになった。
「お嬢様、これを……!」
 密かにパンを運んでくれたり、エレーナを庇い続けてくれた古参のメイドたち。
 しかし、彼女たちも一人、また一人と「不祥事」を捏造されて解雇されていく。
 代わりに入ってきたのは、イザベラに忠誠を誓い、エレーナを「化け物」と蔑んであざ笑う、冷酷な使用人たちばかりだった。
 実の父の耳に届くのは、イザベラが作り上げた「エレーナ様は最近、亡き母様を想って部屋に引きこもりがちなのです」という嘘ばかり。
 エレーナの黄金の瞳は、愛を分かち合うための光から、自分に向けられる悪意を鮮明に映し出すだけの、呪わしい鏡へと成り果てていた――。
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