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プロローグ
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・
「俺、先生のことが好きです」
・
橙の夕日が差す、放課後の教室。
机越しに向かい合う詰襟姿の男子高校生が、涼しげな微笑を浮かべながら言った。
・
「…あ、りがとう」
不覚にも、動揺して言葉が詰まった。
一瞬でも『そう』いう意味に捉えてしまった自分に、違う違う何考えてんだ。と慌てて首を振り、手元の紙に視線を戻す。
・
『2年2組
宮城翼』
学年と氏名の欄だけが埋められた、まっさらな進路希望調査票。
・
「本気ですよ?」
「…うん?」
・
何気なく顔を上げると、また彼の熱っぽい瞳に捕まる。
目にかかる長い黒髪。そこから覗く、不健康なほど白い頬。
この1年間、俺は彼の担任教師で。毎日見慣れた生徒の1人だったはずなのに。
鬱陶しい前髪に隠れていた彼の瞳が、こんなにも表情豊かに色付く瞬間があることを、俺は今まで知りもしなかった。
・
「俺、本気で
先生が好きです」
・
薄茶の瞳が、まるで湖の水面のように、光を集めて
たゆたうように、きらめく。
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「俺、先生のことが好きです」
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橙の夕日が差す、放課後の教室。
机越しに向かい合う詰襟姿の男子高校生が、涼しげな微笑を浮かべながら言った。
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「…あ、りがとう」
不覚にも、動揺して言葉が詰まった。
一瞬でも『そう』いう意味に捉えてしまった自分に、違う違う何考えてんだ。と慌てて首を振り、手元の紙に視線を戻す。
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『2年2組
宮城翼』
学年と氏名の欄だけが埋められた、まっさらな進路希望調査票。
・
「本気ですよ?」
「…うん?」
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何気なく顔を上げると、また彼の熱っぽい瞳に捕まる。
目にかかる長い黒髪。そこから覗く、不健康なほど白い頬。
この1年間、俺は彼の担任教師で。毎日見慣れた生徒の1人だったはずなのに。
鬱陶しい前髪に隠れていた彼の瞳が、こんなにも表情豊かに色付く瞬間があることを、俺は今まで知りもしなかった。
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「俺、本気で
先生が好きです」
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薄茶の瞳が、まるで湖の水面のように、光を集めて
たゆたうように、きらめく。
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