俺の彼女は、キスができない

如月由美

文字の大きさ
60 / 62
第六章

ついに告白

しおりを挟む
ゆっくんとのクビキス。
それは、それは、大切な宝物。

けれど。
「お前、マジで言ってる?」
いきなり、そんなことを言われた。
なんで、そんなこと言うの?
ゆっくんが、分からない。
「え?」
「だから。大事な話があるんじゃなかったのか?」
え?ゆっくんは、クビキスしてくれないの?
どこか寂しく感じた。
「あ、うん。私の病気のことで」
と言いながら、ゆっくんから離れた。
いつの間にか、外れていた第一ボタンを止める。
立ち上がった柚希に、向き直った。

そして、私は。ついに病気のことを話し始めた。
「私の病気はね。誰もかかったことがないみたいで、私が初めての患者なんだって」
柚希にニコッと笑うと、柚希は複雑な顔で。
「お前が。初めて…」
俯き、ボソリと口に出した。
「うん。だから、先生も父母も、どうしたらいいのか分からないまま、悪化していった。中学生の頃からは進行が止まってるけど、処置の手術ができなくて。そのままなの」
「そうだったんだな。見つかったのは、いつなんだ?」
意を決したのか、顔を上げた。
その顔を見て、自分の顔が少し火照ほてる。
「え、でも…」
答えたくても、柚希の複雑そうな顔が気になって、答えられない。
「頼むから。答えてくれ」
「う、うん」
柚希の圧に負けてしまった。
圧というか、なんか怒ってる感じ。どうしてだろ。
「私の病気が見つかったのが、柚希が彼氏になった後なの。隠してて、ごめん」
頭を下げる。
「今まで、ずっと隠してきたのか」
「そうなの。ごめん」
深く頭を下げる。体が固まる。背中を、冷や汗が伝う。
この状況が、なぜかツラい。
「ずっと独りで、抱えてたんだろ?」
「え?あ、うん」
いきなり聞かれて、返事に戸惑う。
どうして、そんなことを聞くの?もしかして、怒ってるの?
そう思っていると、いきなり手を引かれた。
「抱えんなよ。俺を頼れよ。このバカ…」
そう耳元で言われ、我に返ったときに気付いた。抱きしめられていることに。
心臓の鼓動が、速まっていく。
私は泣きながら、こう言った。



「ごめんね。ゆっくん。怖くて、言えなかった。それに、傷付くと思ったから。ごめんっ」



こうして、私は。
ついに病気のことを、ゆっくんに告白した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

悪役令嬢まさかの『家出』

にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。 一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。 ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。 帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...