星の降る丘へ

瀬戸森羅

文字の大きさ
4 / 15
ものがたりのはじまり

第4話 母の行方

しおりを挟む
第4話 母の行方


 「おはよう、お母さん」

 そこらへんに寝てるはずのお母さんに声をかけた

 「お母さん?まだ寝てるの?
 お母さーん」

 返事はない
 
 昨晩お母さんが向かった方向に行ってみる
 草が折れている
 ここで寝ていたのだろう
 だが、お母さんの姿はなかった

「もう出かけちゃったのかな?」

 私は住処を離れて歩いてみる


 「やあ、ルナ
 お散歩かい?」

 「あらサン、昨日はどうも
 お母さんを探しているの」

 「へぇ、お母さんか
 やっぱり君に似て
真っ白でふわふわしているのかい?」

 「そうね、お母さんも
 私と同じ
 白くて毛が多いわ」

 「じゃあ一緒に探そうか」

 「悪いわよ」

 「いいんだよ
 それが君といられる口実になるしね」

 「またそんな…」

「 別にふざけてないよ
 ほんとのこと」

 「…じゃあ、一緒に行きましょ」

 「うん!出発だ!」


 しばらく探していたが、依然としてお母さんは見当たらない

 「うーん…どこに行ったんだろ…」

「ねぇルナ…
 もしかして昨日何かあった…?」

 「いや、そんな…
 …いや、もしかして…」

「なにか心当たりがあるの?」

「昨日ね…夢の話をきいたの
 星を見る夢
 お母さん
 あの星の降る丘のことを憶えているかって」

 「星の降る丘…」

 「私が夢に見るって言ったら、教えてくれなかったわ
 思い出さない方がいいみたいに」

「それは…なにかあったのかな
 でもお母さんがいないことと
 何か関係あるのかな?」

「わからない
 でもお母さんは
 なんだか悲しそうだった
 私が生まれてすぐのことなのかしら
 もしかすると、お父さんが関係しているのかも」

 「君のお父さんは、近くにいるのかい?」

 「……お父さんは、いないわ
 私は1度もみたことがない」

 「…そっか
 じゃあ、星の話を思い出して
 お父さんのことも思い出して
 お父さんに会いに行った、ってのは
 考えられないかい?」

 「お父さんに会いに行くって…
 それがどういうことか
 サン、あなたわかっているの?」

 「もしかして、ルナ、君のお父さんは…」

 「ええ
 この近くにいない、どころか
 きっともうどこにもいないわ」

 風が吹いた
 私は少し嘘をついていた
 お父さんはこの世にいない
 みたいな言い方をしたけれど
 私はただ知らないだけ
 でも信じたくはない
 私に1度も顔を見せたことないお父さんが
まだこの世にいるんだなんて

 「…と、ごめんなさいね
 急に変な話して」

 「ううん、こっちこそ、変なこと言ってごめんね」

 「それにしても本当にいないわね…」

 「ここら辺はもう探し尽くしたね…」

 「探し物かい?」

 急に誰かに声をかけられた
 振り返った先には
 お母さんではない別の誰かがいた
 翠色の瞳と薄く紫がかった毛色
 頭には先のとがった何かを乗せていた

 「あなたは…」

 「やぁやぁ、ボクはアミィ
 アミィ・ユノンさ
 ん?この帽子?
 珍しいでしょ
 太洋の時代の文化だからねぇ
 あ!もしかして、ファミリーネームも珍しい?!
 だよねだよね~
 ボクもこんな古臭い名前引き継がなくていいんじゃないかって思ったんだけどさ
 うちの家系はなんだか特殊らしくてね~」

 突然まくし立てるように話し始めたが、この子の言ってることはほとんどわからなかった

 「おっと、混乱してる?
 そうだよね~
 突然こんな美少女が割り込んできたら
 言葉も出なくなっちゃうよね~
 …なんちゃってだよ?!
 あれ?もしも~し
 なんで無視するの~?!
 寂しいよ~!」

「…ご、ごめんなさいえっと
 あなたは…何者?」

 「ふっふっふ~!このボク、アミィちゃんは~
 なんと!探し物のプロフェッショナルなので~す!
 見たところ困っているみたいなので
 ちょっと声をかけさせてもらったのさ!」

 「ちょっと変わってるけど
今の状況にはちょうどいいんじゃない?ルナ!」

 サンの言うことももっともであるが…
 この子は少し言ってることがわからない

 「ボクのこと、信用出来ない?
 まあそうだよね
 唐突に出てきたやつに
 あろうことかここにいやしない
 お母さんのことを探したげるなんて
 そんなことを言われてもね
 でも安心して
 ボクはすごいんだから!
 君のお母さんのことも
 きっと探してみせるよ!」

 「えっと…それじゃあ、お願い」

 「任せて!」

 「あ、そういえば、私はルナよ」

 「僕はサン」

 「うんうん、覚えたよ~
 じゃ、始めるね」

 アミィは地面に何かかき始めた

 「……むにゃむにゃ…」

 何かを唱えながらかいた模様の上に色々と置いたり撒いたりしている

 「はぁっ!……ふむふむふむ…むむっ!これは…っ!」

 「ごくり…」

 「……上、だね」

 「……上?」

 「そう、上」

 「…北のこと…かな?」

 「ううん、上、だよ
 文字通りの上さ
 つまり君のお母さんは…
 高い丘の上にでもいるのかもしれないね
 そうでないとしたのなら…あまり考えたくはないものだね…」

 「ちょっとアミィ、それって…」

 「ボクたちはね、やがて空へいくんだよ」

 「急に何よ」

「いいかい?ルナ
 星の煌めきは
 命の瞬きなんだ」

 「どういうこと?」

 「ボクたちがこの身体を失った時
 ボクたちは還るんだ」

 「……あの空に?」

 「そう
 そしてあの星になるんだ」

 「ねぇアミィ
 私、知ってるわ
 直接聞いたのよ
 あの星から」

 それを聞いた時アミィは一瞬驚いたような顔をした
 でも次の瞬間には笑っていた
 
 「はははっ、ルナったら
 いくらボクがなんでも知ってるからって
 張り合おうだなんて思わなくってもいいんだよ?」

 「別にそんなこと思わないわよ
 ただね、この間夢を見たの
 私が空に浮かんでいって
 あの星のひとつとお話するの
 私はいつかあの空に行くんだって」

 「…ふぅん…もしかして…ルナ、キミは星の巫女なのかもしれないね」

 「星の…巫女…?」

 「やっぱりボクの勘はすごいね!
 お母さんを探してるって言ってたけど
 そんなキミたちに話しかけたからこそ
 星の巫女は見つかったんだから!
 むっふっふ~!
 これはお手柄だぞ~!」

 「…ちょっと、わかるように説明してくれないかな?」

 サンが少し興奮したようにまくしたてる

 「いいよ~
 じゃあ、説明したげる」

 アミィは星の巫女について語り出した
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

処理中です...