契約交際

未音

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第2章

お泊り!?

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「…あれ?ここ、どこだ…?」

 …って!?あれっ!?俺、何で上半身裸なのっ!?…というか、昨日ってどうしたんだっけ……?

 えっと、確か…大倉さんに引っ越しのことを相談して、とりあえず大倉さんの家で暮らすことになって…ビール飲んで…。

 もっ、もしかしなくても…俺、あのまま潰れた?


「起きたか?」

 声のする方を振り返るとそこには、風呂上がりでいつもの大倉さんとは全くの別人が存在した。

「えっ…、あの…大倉、さん…ですよね?」

「…朝から寝言か?寝言なら寝てる時に言え。」

 …あぁ、朝からキレっキレの毒舌っぷり。確実に大倉さんだって分かりましたよ。


 でも、髪をセットしているいつもの大倉さんとは違って、前髪のある大倉さんは何だか幼く見えた。…まぁ、こんな事言ったら怒られるだろうから言わないけど。


「……あの、大倉さん。俺、大倉さんと飲みに行ったのは覚えてるんですけど、酔ってからの記憶がほぼなくて…この状況説明してもらってもいいですか?」

「…はぁ。やっぱり何も覚えてないんだな。…本当にバカでアホだな。」

「バカでアホですみませんね!…俺だって!記憶ないほど酔うなんて、思っても見ませんでしたよ。…それで、ここはどこですか?」

「…は?」

「いや…、だからここはどこですかって聞いてるんですが…」

 
 大きなベッドに、生活感があまり感じられないほどに綺麗にされた部屋、大きな窓からは朝日が差し込んでいる。ここは何階ですか?というほどに、周りのビルも小さい。


「……俺の家に決まってんだろうが。他に何があるっていうんだ。」


「はぁ、家ですか…って……はぁ!?い、家っ!?こっ、ここがっ!?」

 普通にどこかのスイートルームにでも泊まったのかと思った…そういえば、大倉さんって社長の息子だもんな…。大倉さんだって相当稼いでいるだろうし…それもそうか、と妙に納得した。


「そうだが…何だ?気に入らないのか?」

「え、いや…こんなに高くて広いお家に来たことなんて俺の経験上ないので…純粋に驚いてるんです。」

「……そうか。まぁ、慣れれば大したこと無い。じゃあ、俺は先に会社行くからな。」

「えっ!?もうそんな時間ですかっ!?……ってか俺、帰り方も会社への行き方も知らないんですけど……。」

「はぁ…お前は、本当に手間のかかる奴だな。…タクシー呼んでおくから、それで1回家に帰れ。くれぐれも、遅刻したりするんじゃないぞ?」

「今からって…現実的に無理じゃないですか!?間に合う気もしないんですけど…」

「じゃあ、お前はそのだらしない顔と髪、そして昨日と同じスーツのまま会社に行くって言うのか?」

「そんなことはっ…!」

「じゃあ、遅れないで来ればいいだけの話だろ。わかったか?」


「……はい。」

「よし。…じゃあ、タクシー来るまで外で待ってろよ。あ、それと。」

「…何ですか?」


「お前、俺以外と酒飲むの禁止な。」

「えっ、それってどういうっ…」

「じゃあ、遅れないで来るように。」

 そして、颯爽と会社へと向かって行ってしまった大倉さん。


 …めっちゃ気になるんですけど。

 もしかして、俺……迷惑かけることしたのか!?でも…どんなに記憶を辿っても、全然思い出せないし…。

「…はっ!そんなことより早く家に戻らないと!!」

 そして俺は、綺麗に畳んで置いてあった自分の服を急いで着ると、そのままタクシーへと乗り込んだ。一度家に帰ってからは、今までにないぐらいに急いで支度をして、何とか会社の始業時間に間に合うことができた。

 息を切らしながら会社に来た俺を見た大倉さんは、フッと鼻で笑って、耳元で囁いた。


「よくできました。」

 その気持ちいい低い声に思わず体が硬直してしまい、顔が真っ赤になったのを、俺は気付かない振りをした。
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