後に悪の帝王となる王子の闇落ちを全力で回避します!

花見 有

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第3話

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 私が、お父様とお母様と王宮へお見舞いに行くと、父だけがエヴァルト王子の部屋へと通され、私とお母様は近くの部屋でお父様の帰りを待っていた。

 ああ……、エヴァルト王子。すぐに良くなるようならいいのだけど……。

 私は落ち着かず部屋の窓辺に行くと、エヴァルト王子の部屋の扉が見えた。しばらくすると、見舞いを終えたお父様が神妙な面持ちで出てくるのが見えて、私は部屋の扉の前で待ち構えていた。

「どうやら、毒を盛られたようだ……。あらゆる解毒を試したが、効果がないらしい。こんな毒は初めてだと、医師も嘆いていた。後は本人の気力に任せるしかないと……」

 戻ってきたお父様は、苦渋の表情でそう告げた。

「そんな……」

 毒ってどういう事!?ゲームではあと5年は生きていたから、この毒では死なないと言う事なの!?ああ、でもゲームじゃ、ホステラーノ王国側の事が主だから、カルヴァ王国で起こった詳細な出来事なんて分からないもの。もしかしたら、この毒が引き金でエヴァルト王子はずっと臥せってしまうのかもしれないし、それどころか最悪の事態だって……。
 ああ……、何か、助ける方法はないの!?

 目の前が真っ暗になる感覚がして、私はよろけながらエヴァルト王子の部屋の扉が見える窓辺に向かった。

 すると、エヴァルト王子の部屋の前で一人ポツンと青い顔をして泣きそうなレオン王子がいた。

 幼い王子が不安でいるのに、侍女の1人も寄り添ってあげていないなんて……。

 ルイーザは部屋を出てレオンの側に行くと、声をかけた。

「レオン王子……」

 しかし、レオン王子には私の声が届いていないのか、こちらに、気づかない。それどころか、顔色は一層悪くガタガタと震え始めた。

「レオン王子!」

 私は側に行くと、レオンの手を握った。
 すると驚いて、ルイーザを見たレオンは、初めてルイーザがいる事に気付いたようだった。

「レオン王子……、少し座りませんか?とても顔色が悪いし、震えています」

「君は……、ああ、この間僕を見て倒れた子だよね?どうして、僕の手を握るの?」

「……レオン王子が、とても辛そうだから」

 すると、レオン王子の目に溜まっていた涙がボロボロと流れ落ちてきた。

「ひっく……、お、お兄様が……ぼ、僕のせい……で、死んじゃっ……、たら、ど、どうしよう……」

 レオン王子は泣きじゃくりながらそう言った。

「レオン王子のせいって、どういう事ですか!?」

 エヴァルト王子は毒を盛られたって言ってたけど、まさか何かレオン王子が関係してるの!?

「お兄様が……、飲んだのは……僕が、古代の魔術書を見て作ったやつで……、ほ、んとうは自分で飲むつもりでつくっ……たのに、どうしてか、お兄様が……」

「何ですって!?」

 レオン王子……、いや、もし悪の帝王の毒と同じなら、もしかして……!?

「レオン王子!エヴァルト王子を助ける事が出来るかもしれないわ!」

「……え?」

 泣きじゃくっていたレオン王子は、驚きの表情で私を見た。

 ルイーザには、一つ思い当たる節があった。
 それは、ゲームでもバシリオ王子が悪の帝王の毒に侵されて、普通の解毒薬が効かなくて、生きるか死ぬかの危機を迎えるというシーンがあったからだ。
 これは、ホステラーノ王国の北の大地の山脈の頂上にだけ生えるという解毒草を、バシリオ王子の為に取って来る、というイベントであった――

「ホステラーノ王国の北の大地の山脈の頂上に、解毒草があるの!それなら、エヴァルト王子の毒に効くかもしれないわ!」

「そ、そうなの!?」

「ええ!でも、子供が行けるような所じゃないから、誰か大人の手助けを……」

 と言いながら、私はエヴァルト王子の部屋の扉をノックした。
 すると、レオン王子が慌てた様子で私の手を引っ張っる。

「な、何してるの!?お兄様の部屋に行ったりしたら怒られちゃうよ!」

「でも、大人の助けが必要だもの。国王様と王妃様にお話して、力を借りるのが……」

 すると、レオン王子は私の手をグイグイ引いて人気のない庭園の奥へ連れて行った。

「あの、さっきの話って本当なんだよね?」

 不安そうにレオン王子が私を見てくる。

「本当よ!だってそれでゲーム……、じゃなくて、本にその解毒草で治った人がいるって見た事があるの!」

「分かった。じゃあ、僕と一緒に取りに行ってくれる?」

「え?それは、もちろん。でも、子供達だけじゃあ移動も出来ないし……」

 私がそう言うと、レオン王子は空に向けて指笛を吹いた。

 ん?ま、待って……、レオンが指笛を吹いて呼ぶものっていったら……――

 すると、空の上に黒い影が旋回したと思ったら、その黒い影は徐々に大きくなり、そしてレオンの横におりたった――

「ド、ドラゴン!?」

 ってあの、悪の帝王の使い魔だよね!?
 レオンが子供の時から使い魔だったのね!!

 ドラゴンは悪の帝王の使い魔で登場シーンでは、レオンは黒いドラゴンに乗っている事が多かった。

「コイツ、何でか俺に懐いてて……」

 とドラゴンの首を撫でると、ドラゴンはレオンに甘えるように頭を寄せた。

 ゲームで見た時は、恐ろしいドラゴンだったけど、レオンに懐いてる所を見ると可愛く見えるから不思議ね。

「背中に乗って」
「う、うん」

 レオンに手を引かれて、ドラゴンの背中に恐る恐る乗ってみた。

 あ、思ってたよりも乗り心地悪くないわね。

 なんて、考えているとレオンはドラゴンに話し掛けていた。

「ホステラーノ王国の北の大地にある山脈の頂きの解毒草を取りに行きたいんだけど、ムブル場所分かる?」

 ムブルって……、ドラゴンの名前初めて知ったわ。

 するとムブルは「グルグルル……」と鳴き声で返事をする。

 へえ、人間の言葉を理解できるんだ。凄い。

「分かるって」

 レオンもムブルの言葉を理解した様子で答えた。

「凄い!レオン王子もドラゴンの言葉がわかるのね」

「ああ、魔力があればムブルと会話出来るよ」

 そうなんだ。私は魔力がないからさっぱりだわ。せっかく転生するなら魔法とか使ってみたかったなぁ。

「じゃあ、出発するからしっかり掴まってて」

 とレオンが私の手を自身の腰に回すから、ちょっとドキッとしてしまった。

 そして、ムブルはぐわっと浮き上がると、上空へ上っていった――
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