お願いです!ワンナイトのつもりでした!

郁律華

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本編

酒は飲んでも飲まれるな

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そう、飲みに行くまでの記憶は戻った。

問題はそれからなのだと思いつつ、きた電車に飛び乗り新幹線まで乗り継いでいく。
とりあえず、現地離脱までは上手くいった。
二日酔いにありがちな頭痛と戦いながら新幹線の座席に座る。
この頭痛があるということは絶対に酔った。
何かしでかした事に違いないと確信する。
来たときに往復券で自由席の券を購入していた過去の自分に感謝を捧げながら、さらに肝心な記憶を呼び起こす。



2軒目の居酒屋で和人と琢磨のハイペースな飲み方についていけず、私はちびりちびりと酒を入れ、水を入れを繰り返していたが、それでもふわふわとした気持ちになった。

「俺の彼女かわいいー!」
「はいはい、その惚気何回目?」
「すいませーん!焼酎ロックを1つでー!」
「桐川さん、飲み過ぎてない?」
「今日は楽しいからいいのー!最近、飲んでなかったし、楽しく飲めるなんて久しぶりなんだよ?」
「あー、うん……。分かったから、水も飲みなね。」
「はーい。」
「俺の彼女さ!この間ね?」
「和人、分かったから!」

大学生のときから変わらない調子でお酒を飲んでいく。
あの頃と同様に主に和人と一緒になって琢磨に迷惑をかけてたな。
でも、あの頃と違うのはふわふわして口が軽くなってたことだと思う。
お酒の飲み過ぎは良くないです。
良い子は自分の限界になるまで飲んではいけません。

「彼女から電話きた!ちょっと話してくる!」
和人が携帯を片手に嬉しそうに外に出ていく。
「はいはい、いってらー!」
「いってらっしゃーい!」
そう、問題はこの後なのだ。

「相本くんさー、大学生のときも告白されてたじゃん?」
「そうだねー。すみませーん。」
琢磨は追加のハイボールを頼む。ペースが早いのに酔ってはいないようだった。
ついでに私のチェイサーとして水も追加で頼む余裕すらあった。
飲み慣れてらっしゃいました。
「街コン行ったら、ちゃんと女の子から群がられるよー。だって身長高くて、勤め先もちゃんとしてて、顔もよくて穏やかで優しいじゃないのー。」
「どうしたの、いきなり?」
「せっかくの桐川さんからのアドバイスですよー!こんなに素直な桐川さんは珍しいんだから、聞くこと!」
「はいはい、お水は?飲んだ?」
酔っぱらいの扱いである。妥当だ。
「やー!焼酎飲むの!……てか、焼酎って男受け悪いかなあ?」
「は?」
琢磨が驚いて清香の方に振り向いた。
「元カレもね、焼酎飲めるとこ連れていってくれたけど、酔わせてあわよくばーってのが見えたのね…本当はかわいいカクテル飲める女の子が一般的にはいいんだろうね……」
「そんなことされたの?てか、元カレ?」
彼氏の存在なんてメッセージアプリに匂わせてませんでしたもんね。すみません。
もう自然消滅したものの混乱させている。
心なしか声も低くなっている気もした。
「酔わせてあわよくばーなんてのは社会人ではよくあるよー?まあ、それに流されないようにと気をつけてるし、安心して飲めないから普段は酔わないようにして潰し返すの。まあ、元カレとは何回か流されたけど……」
ふふっと笑って見せたのに、琢磨は険しい顔をした。
「だから、気兼ねなく楽しく飲めるの嬉しいの。」
「そっか。」
「相本くんは大丈夫、モテるよー彼女できるよー!桐川さんが認めますともー!」
「はいはい、ありがとう」
琢磨がふっと顔を緩めて微笑んでくれた。
それを見てたら嬉しくなったのだ。


「だって、大学生のとき、私も相本くんのこといいなぁって思ってたし、ちゃんといい男になってきてるんだなぁって今日も思ってたから、大丈夫ですとも!」


…ポクポクポク、チーン

ここだあああああ!ここの発言だ!何を酒の勢いで暴露したんだ私は!
確かに一緒に遊んでいるときに、やっぱり格好いい人だなとか気遣いちゃんとしてるなとか思ってた。
だからといって、それをそのまま言葉に出していいわけではない。
友人関係をそのまま続けるなら言うべきではないのだ。

「は?待って?」
そうなる、そうなるよね。
焼酎のグラスも取り上げますわ、それは……。
「あ、これ内緒にしてたんだよー忘れてー」
何を言ってるんだ、私は……。
一度発した言葉は取り消せないんだ。知ってるだろ!内緒にしてたなら墓場まで持っていけ!
「好きでいてくれたの?今日もいいなって思ってくれたの?」
「お水はいらないの!焼酎ちょうだい!」
琢磨は焼酎のグラスを私の手の届かないところに置き、代わりに水を私の前に差し出す。
「焼酎よりさっきの発言についてなんだけど?」
「やー!飲むの!ホテルに帰ったらお化粧落としてパタンキューするから飲むの!」
酒に飲まれとるがな!酒は飲んでも飲まれたらお終いでしょ!
焼酎への執念どうした?
そして、言葉遣いが酔いの効果で普段では考えられないほど幼稚になってきている。
「いや、あのね?」
「なあに?あ、分かった!ぎゅーすれば焼酎くれる?」
対面に座っていた席からふらりと立ち上がり、和人の席であった琢磨の隣へとすとんと座るとそのまま腕に抱きついた。


いや、酔った私、何してんねん!!!!!
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