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不法侵入
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譲 「光希も心配してたけど、声を聞いたら元気そうで安心したよ。」
柚月「すみません・・・。譲さんは、どうして学校に行っていないんですか?」
譲 「俺は入院不登校。暫くは入院生活かな。」
柚月「大丈夫なんですか?」
譲 「うん、今のところはね。・・・まぁ、柚月ちゃんが学校に行きたくない気持ちも分かるし。休んでる間は俺のお相手、してくれないかな?」
柚月「それは全然構わないですけど・・・。」
譲 「入院生活もさ、先が見えないと孤独との戦いになるんだよね。だから、柚月ちゃんさえ良ければ是非お願いします。」
柚月「分かりました!!」
この日から、あたしと譲さんは他愛もない会話をするのが毎日の日課となっていった。
そして、それから一ヶ月が経った頃。あたしは譲さんに内緒でお見舞いに行く事に決めた。
柚月「・・・来ては見たものの、部屋の番号までは聞いてなかったな。どうしよう・・・。」
昼過ぎに自宅を出発し、電車で約五十分。そこからバスに乗って歩いて、約一時間半程の距離にある、とても大きくて綺麗な病院に到着したあたしは、院内の人混みに圧倒されつつも、何処へ行けばいいのか分からずあたふたしていた。
柚月「とにかく、案内図を探して・・・。」
『あれ?柚月ちゃん?』
あたしの前を行き交う人達の中から、あたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。
光希「やっぱり!!柚月ちゃんだ!!」
柚月「光希さん!?どうしてここにいるんですか?」
光希「それはこっちの台詞!!不登校の子が、どうしてここにいるんですか?」
柚月「べ、便秘が酷くて、肛門科に・・・。」
光希「はいはい(笑)譲に会いに来てくれたんだろ?」
柚月「・・・はい。でも、譲さんには秘密で来ちゃったので部屋が分からなくて。」
光希「そう言う事か。アポ無しって事ね。」
一瞬、光希さんの表情が曇ったのを、あたしは見逃さなかった。
それが、どんな意味を示していたのか・・・。この時のあたしにはまだ分からなかった。
柚月「帰った方がいいですか?」
光希「いや、柚月ちゃんなら大丈夫だと思う。せっかく来てくれたんだし、譲も喜ぶと思うよ。行こうか。」
光希さんの後ろを歩き、エレベーターに乗って降りた先に辿り着いた場所。
『穏和ケア病棟』
光希さんが後ろを振り返り、あたしの表情を確認した後、小さい穏やかな声で言った。
光希「柚月ちゃん、大丈夫だよね?」
柚月「・・・はい、大丈夫です。」
光希「後悔、してない?ここに来た事。」
柚月「してません。むしろ、早く会いたいと思っています。」
光希「良かった。じゃぁ行こう。」
「穏和ケア病棟」
一般患者や在宅ケアでは対応困難な、心身の苦痛がある患者への対応や、人生の最期の時期を穏やかに迎える事を目的とした入院病棟。
昔、あたしがまだ中学生だった頃。おばあちゃんが胃癌の末期と診断された時に、ここと同じ病棟へ入った記憶を思い出した。
九九歳という大往生。
「百歳まで生きるんだ。」って。
腰が曲がって耳も遠いから声がやたら大きくて。ご飯が食べれなくなっても、弱々しい筆談で「頑張る」って。
生きる事を諦めない、たくましい人だった。
最後は突然の急変で、到着した時には間に合わなくて・・・。
「頑張ったね」
まるで寝ているんじゃないかと勘違いしてしまう程、まだ温もりがあったおばあちゃんの表情が穏やかだった事は、今もこの先もずっと忘れない。
光希「ここの部屋だよ。悪いんだけど、少しだけここで待っててもらってもいいかな?」
柚月「はい、分かりました。」
光希「すぐに呼ぶから。ごめんね。」
数分後。
「お待たせ。」
光希さんに案内されたあたしは、譲さんがいる部屋へと足を踏み入れた。
柚月「すみません・・・。譲さんは、どうして学校に行っていないんですか?」
譲 「俺は入院不登校。暫くは入院生活かな。」
柚月「大丈夫なんですか?」
譲 「うん、今のところはね。・・・まぁ、柚月ちゃんが学校に行きたくない気持ちも分かるし。休んでる間は俺のお相手、してくれないかな?」
柚月「それは全然構わないですけど・・・。」
譲 「入院生活もさ、先が見えないと孤独との戦いになるんだよね。だから、柚月ちゃんさえ良ければ是非お願いします。」
柚月「分かりました!!」
この日から、あたしと譲さんは他愛もない会話をするのが毎日の日課となっていった。
そして、それから一ヶ月が経った頃。あたしは譲さんに内緒でお見舞いに行く事に決めた。
柚月「・・・来ては見たものの、部屋の番号までは聞いてなかったな。どうしよう・・・。」
昼過ぎに自宅を出発し、電車で約五十分。そこからバスに乗って歩いて、約一時間半程の距離にある、とても大きくて綺麗な病院に到着したあたしは、院内の人混みに圧倒されつつも、何処へ行けばいいのか分からずあたふたしていた。
柚月「とにかく、案内図を探して・・・。」
『あれ?柚月ちゃん?』
あたしの前を行き交う人達の中から、あたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。
光希「やっぱり!!柚月ちゃんだ!!」
柚月「光希さん!?どうしてここにいるんですか?」
光希「それはこっちの台詞!!不登校の子が、どうしてここにいるんですか?」
柚月「べ、便秘が酷くて、肛門科に・・・。」
光希「はいはい(笑)譲に会いに来てくれたんだろ?」
柚月「・・・はい。でも、譲さんには秘密で来ちゃったので部屋が分からなくて。」
光希「そう言う事か。アポ無しって事ね。」
一瞬、光希さんの表情が曇ったのを、あたしは見逃さなかった。
それが、どんな意味を示していたのか・・・。この時のあたしにはまだ分からなかった。
柚月「帰った方がいいですか?」
光希「いや、柚月ちゃんなら大丈夫だと思う。せっかく来てくれたんだし、譲も喜ぶと思うよ。行こうか。」
光希さんの後ろを歩き、エレベーターに乗って降りた先に辿り着いた場所。
『穏和ケア病棟』
光希さんが後ろを振り返り、あたしの表情を確認した後、小さい穏やかな声で言った。
光希「柚月ちゃん、大丈夫だよね?」
柚月「・・・はい、大丈夫です。」
光希「後悔、してない?ここに来た事。」
柚月「してません。むしろ、早く会いたいと思っています。」
光希「良かった。じゃぁ行こう。」
「穏和ケア病棟」
一般患者や在宅ケアでは対応困難な、心身の苦痛がある患者への対応や、人生の最期の時期を穏やかに迎える事を目的とした入院病棟。
昔、あたしがまだ中学生だった頃。おばあちゃんが胃癌の末期と診断された時に、ここと同じ病棟へ入った記憶を思い出した。
九九歳という大往生。
「百歳まで生きるんだ。」って。
腰が曲がって耳も遠いから声がやたら大きくて。ご飯が食べれなくなっても、弱々しい筆談で「頑張る」って。
生きる事を諦めない、たくましい人だった。
最後は突然の急変で、到着した時には間に合わなくて・・・。
「頑張ったね」
まるで寝ているんじゃないかと勘違いしてしまう程、まだ温もりがあったおばあちゃんの表情が穏やかだった事は、今もこの先もずっと忘れない。
光希「ここの部屋だよ。悪いんだけど、少しだけここで待っててもらってもいいかな?」
柚月「はい、分かりました。」
光希「すぐに呼ぶから。ごめんね。」
数分後。
「お待たせ。」
光希さんに案内されたあたしは、譲さんがいる部屋へと足を踏み入れた。
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