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190センチはありそうな長身に、すらっとした体躯。伸びた手足もしなやかで頭は小さく整ったバランスで。まるで彫刻のような美しさを持ったイケメン。彼みたいな人が、きっと王子様って言うんだろうなって、そう思う。

「私の名前は、アレク。この国の国王と呼ばれているよ」

チョコレートブラウンだった髪色と瞳が、有名な王族のものへと変わっていく。

「本当は、身分も名前も伏せて、君をちゃんと口説き落としてから、種明かしをしようと思っていたのだけどーー」

アレクは、ライトを一瞬見てから、視線を私に向けた。

「どうやら君は、聖女のお手つきらしいから、攫いにきたよ」

和かに微笑みながら近づいてくるけれど、ん?やっぱり貴方は国王で、ライトが・・聖女?ん???ライトは女の子?

「主様は、ちゃんと男性ですよ?」
ミラさんがアレクを見据えたまま、答えてくれる。

「なるほど、女神の加護を味方にしたんだね。」

アレクの背に黒い翼が生える。
何か、バトルの予感!いや、観たいけれど、RPGな展開。けどーー

「ちょっっっとまったあぁぁぁ」

思い切って声を上げる。だって、何かおかしくない?

「そもそも、私の気持ちを無視して、2人でわけわかんない争いするのやめてよ!私はおにぎりを作りながら、穏やかに過ごしていきたいだけなんだから!!おかしいわよ!」

そうだ、そうだ、と言わんばかりに周りにいた妖精さんがうなずいてくれる。そして、この国や世界の知識の勉強をしていない私は、もうやり取りについていけない。

パンっと手を鳴らして合図すると、目の前にはテーブルと、セットされたお皿にナフキン、グラスが現れる。私は魔法が使えないから、これらはいつも妖精さんたちがしてくれる。

「2人とも!お腹空いてるから争うのよ!!まずは、食べて落ち着きましょう」

ってことで、今日のお昼は、
マグロもどきのたたきを具にしたおにぎりと、定番の塩にぎりに、シーチキン!と、味無し厚焼き卵に野菜スープを召し上がれ!

「いつの間に・・・」
呆れた声で呟くライトに、ご機嫌な妖精さんたち。

「っふ。ぷぷっ・・・やはり、面白いな、君は。」
アレクはそういうと、席に着く、とても優雅に。

「いただこう」

何だろう、この、無駄な品格。アレクは水色の髪の美少年に目配せして、美少年も席に着く。とても嬉しそうに。
そして、警戒心剥き出しのライトとミラさんも席について、不思議な食事が始まった。
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