初恋は清らかに、嫉妬は淫らに

琴奈

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5.歪んだ気持ち

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 どこからが彼の計画だったのかしら。同窓会で私の横に座ることは容易だったと思うけど、告白までは予定外だったのかもしれない。彼に真意を確かめてみたい。

「正志君、それって責任を感じたから付き合うってこと?」
「正直…それはある」

 やっぱり、そうよね。私の初めてを奪ったから「結婚前提に」という言葉も出てきたのね。少し悲しいわ。シャワー前のキスは優しくて恋愛感情があると思っていたのに。もうちょっと、意地悪な質問もしてみようかしら。

「過去の私が好きだったのはわかったけど、今は身体が目当てなの?」
「それは…半分違う」
「半分って、一体どういうこと?」
「同窓会で久々に話をしたら、もっと一緒にいたくて…以前の俺は文香さんを想うことしかできなかった。でも、今ならあの時以上の関係になれると、自分勝手に手を出したのは事実だから」

 正志君が目を合わせてくれないのは、やはり最後の部分が後ろめたいからだと思う。でも、正直な気持ちを伝えているのは、態度からでも判断できる。

「俺、本当にずっと好きだったから。俺と…付き合って下さい」

顔が真っ赤にして口元を腕で隠しているから、偽りの告白とは思えない。ここまで真剣な気持ちで告白してくれたら、断る理由は見当たらないわ。成り行きかもしれないけど、私の中で返事は決まっている。

「うん。こんな私でよろしければ、彼氏になって下さい」

 OKの返事をすると、正面から正志君に抱きつかれた。よっぽど緊張したのか、彼の鼓動が再び激しく伝わってくる。返事直後は顔を見せてくれなかったけど、徐々に私と目を合わせてくれた。そして、彼の両手で頭を優しく包まれると、そのままそっと目を閉じて唇を重ねた。
 軽いキスのつもりだったけど、正志君の要求は違っていたみたい。自分の口を動かして、私の口の中に彼の舌が入ってくる。【くちゅ】と何度も音が出てしまう。

「んー、はぁっ、んんー」

徐々に彼の手の位置も頭から下がっていき、自然とお尻に手を回す。
 三回目はあると覚悟していたその時だった。隣のリビングから【ガタッ】と物音が聞こえた。私たちは幸せの絶頂で彼の存在を忘れていたわ。リビングで爆睡しているであろう小野君の存在を。

「ちっ、起きたか。これからだったのに」

正志君の本音が声に出ていたけど、やっぱりやりたかったのね。ただ、このままでは小野君の前に姿を見せることができない。だって、正志君の服を借りて、下着も汚れて着用していないから。彼は私に寝室に留まるよう声をかけると、リビングへと向かった。
 やはり小野君も起きたようで、話し声が聞こえてくる。暫くすると、離れていく足音と同時に、正志君も寝室へと戻って来た。話を聞くと小野君もシャワーを使うみたい。浴室は事後だけど大丈夫なのかしら。
 そして、正志君から新しい下着とストッキング、更に追加のゴムを本日着でネット注文したと教えてくれた。私の彼氏、完璧でございます。手際の良さに思わず笑ってしかない。

「俺さ、少しだけ仮眠するから、文香さんも寝なよ」
「一緒に…寝室で?」
「ちょっと!そうしたら俺、寝るどころか興奮して寝られないから。俺はリビングで大丈夫。荷物が来るまで寝室を使って良いよ」
「それじゃあ、正志君が休めれないわ」
「平気だよ。文香さんのその姿を小野に見せるよりね」

確かに今の姿は正志君のシャツと短パンに加えて下着無し。これは恥ずかし過ぎる。私は彼のご厚意に甘えることにした。
 お互いに「おやすみ」と声をかけて、また低反発のベッドで身体を投じた。やっぱり寝心地は最高だわ。暫くするとリビングから話し声が聞こえてきたけど、眠気には勝てないから先に寝ちゃうわ。

 どのくらい寝てしまったのか、気が付くと窓から陽の光が差し込み、夜は過ぎている。枕元に置いていた携帯電話を見ると、もう午前11時を迎えようとしていたので、私は慌てて起き上がりリビングへ向かった。夢でも見ているかしら、部屋には誰もいない。
 思い返すと夢であってほしい部分と、夢であってほしくない部分があるのよね。特に初体験は恐ろしかったわ。ふと思い出し、すぐ着ている服を確認すると、男性用の上下服に下着がない。やっぱり正志君が彼氏になったことを含めて夢ではなかった。
 どこに行ったのか聞きたくても、連絡先を知らないから困ったわ。少しだけ悩んだけど、生理現象は止められないのでお手洗いに向かった。
 手を洗い、ついでに顔も洗っていると、玄関から物音が聞こえる。廊下に出て「おかえりなさい」と声をかけたところ、戻って来たのは今の彼氏ではなく元彼の小野君。

「やっと起きたのか。よく眠れたか、文香」
「う、うん。ベッドが気持ち良すぎてぐっすり」
「ははは、人の家で寝坊とはすごいな!まぁ、俺も朝方までリビングで寝ちゃったけどね」

小野君は笑って話しているけど、どこまで正志君に聞いたのかな。全部話されても困るけど、説明しないのも酷いよね。

「起きてから、どこに行っていたの?」
「ああ、横のコンビニに行っただけだよ。足りない物が多くてさ」
「そう…でも正志君は?彼はどこに言ったの?」

彼の笑みが突然消えた。私もハッと気がついてしまった。名前の呼び方についてだわ。

「正志…長野のことか?」
「う、うん」
「長野も買い出しに行ったが…文香、急にどうした?今まで名前では呼ばなかったよな」

怒りの感情が言葉からも強く感じる。まだ正志君から聞いていないのかもしれないが、小野君に誤魔化すことができないので、真実を伝えることに決めた。

「あのね、私と正志君は…付き合っているの」

彼の動きが止まった。驚きを隠せないでいるのがわかる。

「いつ…からだ?昨日は付き合っていないって言ったよな…俺を騙したのか」
「騙していないわ!昨日は本当に違ったもの。正志君に早朝に告白されて付き合うことを決めたの」
「おい、嘘だよな!?文香!」
「痛いっ…痛いよ、小野君」

小野君は叫びと共に、私の両肩を力強く押さえつけた。少しだけ肩が震えている。

「やっぱり…本当だったんだな」
「え?」
「文香が…誰にでも身体を許す【淫乱な女】だったってな」

 そこからの小野君は酷かった。同意もなく唇を重ねるだけでなく、すぐシャツの中に手を入れてきた。

「ブラしていない…やっぱりヤリマンなのか」
「違うっ、お風呂に入ったら下着が…」
「うるさい、早くヤりたいんだろう?」
「嫌…止めて!違うから、離して!」

逃げようと試みたけど、強い力で床に倒されて動けない。またキスをしたくないから唇に力を入れて拒んでいたが、彼の方が上手だった。私は鼻を摘まれて鼻での呼吸を阻止される。苦しくて限界になり口を開けると、彼の口をすぐに被せて絡め始めた。
 恐怖で涙が出るが、小野君は見向きもしてくれない。

「長野の服、汚れるのは嫌か?」

唐突な質問で驚くしかない。何を気にしているのかわからないが、汚したくないのも止めてほしいのも本音だ。

「止めて、汚したくない!」
「そう?でも汚したくないなら、脱げば良いんだよ」

そう言うと彼は私が履いていた短パンを突然足首まで下ろした。もう彼からは私の秘部が丸見えの状態。

「いやああ、見ないで!止めて」
「何で?興奮していないのか」

 彼は私の腰を上げると秘部に息を3回吹きかける。ある部分で思わず身体が【ピクッ】と動き、反応してしまった。彼はそれを見逃さなかったようで、その場所を親指でやや力を込めて触り始める。そこは彼氏によって見つけられ、初めて達した突起だ。小野君もその場所は知っているのか、敏感な部分を触り続けている。

「本当に、止めて…お願いっ、あっああ」
「無理だな、止めない」
「あああああ、いやぁああああ」

彼の腕を掴み話そうとしても、力が入らない。
そればかりか、感じてしまっている自分がいる。

「やらしいな、ここが濡れてきた」
「見ないでぇ、あああん」

 夜に鮮血が出ていた部分は、今は透明な液で溢れている。その周りを中指でなぞるようにしていたが、それは突然やってきた。指が挿入された。敏感な突起を触られながら、中に異物が入るのは私にとって初めての感覚で、指を出し入れするだけで抑えられない衝撃が走る。

「いやぁあ、ああ、ああん」
「はは、男なら誰でも良いんだろう?」
「あん、ふぅう、ああああああ」

まともな返事をすることなんて不可能。小野君は私の反応を見て楽しんでいる。親友の彼女かつ元カノに、こんなことができる人だったなんて考えてもみなかった。
 そんな楽しんでいる彼の後ろから音楽が流れ出し、小野君は携帯電話を手に取ると不機嫌な顔になった。

「あーあ、ここからが本番なのに…長野がもうマンションに着くってさ」
「はぁ…はぁ…」
「残念だな、最後まではお預けだ」

 彼氏が帰ってくるのは助かるけど、この状態は浮気後と疑われてしまう。正直に全てを話すか隠し通すか。小野君は私に何を求めているの。
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