初恋は清らかに、嫉妬は淫らに

琴奈

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8.薄暗い寝室の中で

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 私は小野君のことがずっと大好きだった。それは付き合っていた時だけ。彼から一方的に別れを告げられたあの頃は、絶望的な喪失感に襲われたけど、今は正志君だけを見て一緒に居ると決めたの。今更「終わってはない」と言うなんて本当に自分勝手過ぎる。
 ずっと私を抱きしめている小野君の顔は笑っているけど、どこか怖い。そして彼は徐ろにポケットから白い円柱形の物を取り出し、私に尋ねてきた。

「これ、何だと思う?」

見たことがあるけど、そんな悠長に考えている状況ではない。小野君は私の身体をベッドへ倒すと、その白い物を引き伸ばした。

「ほ…包帯?」
「正解。弾力性のある包帯だけどね」

小野君は見た目では怪我をしていない。もちろん私も。何故ポケットから包帯が出てきたのか全くわからない。

「これ、他にも使い方があるけど、どういう方法だと思う?」

また質問をされた。怪我以外にあるのかと悩んでいると小野君に両腕を掴まれ、包帯で手首を何重にも巻かれた。手首を縛られた時には使い方がわかっても、もう遅い。身体全体で再び恐怖を感じる。

「嫌っ、これ取って!!」
「残念。正解には辿り着かなかったから取らない」
「そんな…」
「ちなみに正解は縛って拘束する」

 小野君は私を見下しながら嬉しそうに答えている。このまま彼の思う壺になりたくないと抵抗し足を動かすと、逃げ出さないように彼は全身で伸し掛かってきた。目が合い彼の顔が近付くと耳元で囁いた。

「文香…続きをするぞ」

そう宣言すると、彼は私のブラウスを鎖骨まで捲り上げ、私の抵抗も虚しく器用にブラのホックを外した。そして小野君の目の前で私の胸が露わになると、彼は躊躇することなく左胸掴み、舌で円を描くように胸の先端を舐め始めた。
 この強引な行為から逃げ出せない。瞳から涙が溢れ、私は訴えることしかできない。

「小野君…止めて…」

私の願いを聞き入れるどころか、胸を口に含め吸ったり強く摘むなど行為を楽しんでおり止めようとしない。

「止めて、たっ助けて!正志…うぐぅっ」
「文香、うるさい!長野の名前を呼ぶな」

最後まで言う前に、小野君の手のひらで私の口は塞がれてしまった。

「まぁ、助けを求めても泥酔している長野が気づくのは無理だな」

そう正志君は小野君によってすり替えられた白酒を飲んでしまい、泥酔して倒れている。でも助けを求めれば気付いてくれるはず。チャンスはある。

「あ、文香のその目は長野が来ると信じている?」

そのとおりよ。私は言葉を話せない替わりに一回大きく頷いた。すると小野君は高らかに声を上げて笑った。

「あーすっごく単純で良いな。何で俺がAVを観ようと提案したかわかってないだろう?」

そういえば、隣のリビングからまだ音声が聴こえてくる。

「教えてあげるさ。文香の声を打ち消すためだよ」

すると、私の口と胸にあった彼の手はスカートへと場所を変え、サイドのファスナーを下ろすと強引にスカートを剥ぎ取った。

「いやああ!見ないで、返して!!」
「ほら、あっちの女優も叫んでいるから気づかないだろう?」

声について平然と説明をしているが、ショーツが丸見えでそれを聞く余裕はない。彼から見えないように足や腰を動かしていたが、急に両足首を掴まれた。そして私の足を抱え込むように曲げると、小野君は中央へと身体を割り込ませた。

「文香は俺を誘っているの?」
「違うわ!もう何もしないで…早くこんなことは止めて」
「こんなことって何?詳しく言わないとわからないから」

 手首を縛られ胸は露わになり、ショーツまで曝されるだけでなく、言葉でも屈辱的な行為を要求されている。でも、声に出すだけでこの状況を打破できるならまだ良い。これ以上の行為は彼氏を裏切るだげだとわかっているから。

「詳しく言えば…もう止めてくれる?」
「あ、条件を出すのか?」
「ええ、止めてくれるなら言葉でいくらでも表すわ」
「じゃあ、言わなくていい」

即答だった。そして、彼は止めるつもりなど全くない。曝されたショーツを足首まで移動させると、私の秘部を覗き込んだ。

「いやあっ!!止めて!無理だから!」

私の叫びも訴えも聞き入れてくれない。小野君は私の秘部にある小さな突起を指で確認すると、また強引に親指で円を描きながら触り始めた。我慢できると思ったけど、やっぱり駄目。

「あっ、だめ…あっあああ」

敏感な部分に触られて声が出てしまう。

「ああっ、だめえええええ」
「ははっ、やっぱり淫乱だな文香は!もっと刺激がほしいだろう?」

彼は先ほどまで親指で触れていた部分を、舌で触れ始めた。

「いや、そんなところやめてっ、ああぁ」

小野君は【くちゅ】と音を立てながら小さな突起を舌で舐めて、私が淫らになる姿を楽しんでいる。

「だめっ、だめなのにぃ…ああああん」

 力んでいた足の力が勝手に弱まっていく。そして、膣から透明の液体が次々と出てきているのが、痙攣しながらもわかる。小野君は口を拭うと、いつの間にかズボンと下着を脱ぎ、硬くなった己を出していた。

「俺、もう限界。最後までいくからな」
「はぁはぁ…最後って…まさか…ま、待って」
「無理。文香のここも欲しがっているだろ」

小野君は私の秘部を何度か擦ると、正志君しか受け入れたことのない場所へ己を突き刺した。

「いやぁああああ!駄目!早く抜いてっ!!」
「キツい、俺のを逃さない気かっ」
「違うっ!違うから、早く退いて!!」

大好きな彼氏以外の男性のモノを受け入れてしまっている。悲しみと恐怖で涙が止まらない。

「ヤバイな、文香の中、俺のを締め付けてきて気持ちいい」
「ううっ…もう、抜いてっ」

 正志君は私にとって初めての男性だけど、私と繋がっただけで、体内で達していない。彼と愛し合いながら身体同士が繋がることは幸せだと容易に想像できる。だけどそれは、目の前にいる小野君とでは無い。

「お願い…これ以上、正志君を…」
「長野は関係ないだろう!」
「うう、あああああ!」

小野君は怒りに任せて、己を更に私の奥へと突き刺している。もう彼に何を言っても駄目だと悟り、私は縛られた部分で顔を隠し小さな声で謝罪した。

「ごめんなさい、正志君」

その言葉が聞こえたのか小野君は容赦なく腰を動かし始めた。【パンパン】と裸同士がぶつかる音と同時に、繋がっている部分は【クチュグチュ】と卑猥な音を立てる。
 私を抱いている彼は好きでは無い人なのに、不思議な感覚にさせる。

「お願い…あっ、動いちゃ、あぁ、いやっ」
「ははは、気持ちいいんだろう!顔を見せろよ」

小野君は私の腕を頭の方へと動かした。
 目の前には普段から鍛えているであろう、彼の胸板が腰と共に動いている。淫れた私に喜びを感じているのか止めようとしない。そればかりか、熱く固い己を激しく何度も出入りさせている。

「胸も弄ると気持ちいいのか」
「あああん」

自分の身体がわからない。この小野君の強引な行為に感じてしまっている。

「文香、見るんだ。今、君と繋がっているのは長野じゃない、俺だからな」

見たくない。だけど、私の身体を何度も突いているのは目の前の小野君。彼の動きに合わせるかのように、私の胸と腰も勝手に何度も揺れ動く。
 そして、何度も擦れ合っている為、小野君にも限界が来ていた。

「あっ、俺、もう…イキそう」
「ううっ」
「ああ、ちょっと…待って」

小野君は動きを止め、私の手首に巻き付いていた包帯を丁寧に解いていく。彼はまだ達していないはずだけど。

「一緒にイキたいから文香、俺の肩に手を回して」
「どうして…」
「ずっと縛るのは俺の意に反するから」

 よくわからないけど、チャンスだわ。今なら逃げられる。だけど、目の前の小野君の顔は付き合っていた頃のような、優しい穏やかな表情。私はあの頃の幸せだった時のことを思い出し、言われるがまま小野君の肩に手を回してしまった。

「動くぞ」

その言葉と同時に再び腰の動きは激しさを増した。最初とは異なり気持ち良さから、小野君の顔を見つめていた。

「ああん、小野君駄目、激しいっ」
「ああっ、好きだ、文香!」

小野君も私の顔だけを見て感じている。

「もう…駄目だっ、イク…ああっ!」

 彼の声と共に私の体内で温かみのある物を感じる。彼の種が放たれたのだろう。そして、彼は私の頬に手を添えると目を閉じ、ゆっくり唇を近付けた。私も今回だけは自然と小野君の唇を受け入れてしまった。
 薄暗い彼氏の寝室の中で私は元彼に抱かれた。隣の部屋には彼氏が居たのに。この状況は他人から見れば異常としか思えない。
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