38 / 188
少年編 3章
第38話 森 (レーナ視点)
しおりを挟む
私は命令を受けるとすぐに駆け出した。
身体強化を掛けて猛スピードで森へと向かう。
アンナちゃん、ライス君、ミレーヌちゃん・・・
いなくなった子たちの顔を思い浮かべる。
青年の話では、全部で八人いなくなった。
魔物は人を襲う性質があるため、子供たちは格好の獲物になってしまう。
そう考えるとスピードを上げる。
森の中に入るとすぐにサーチを発動させ、周囲の魔力の流れから見つけ出す。
走りながら探していると大きな魔力の流れを見つける。
?
まずい。大きな魔力の流れ、最低でも上級以上の魔物を見つけた。そいつはゆっくりと何処かへと向かっていく。
そちらの方へ集中すると、小さな流れが八つ。子供たちだった。
私はさらにスピードを上げて魔物と鉢合うのを避けるように迂回しながら向かう。
時折下級の魔物たちが襲ってくるが、相手をせずに子供たちと合流することを優先する。
暫く進んでいると、子供たちの反応が近くなる。
開けた所に出て辺りを探すと、
「レーナちゃん!」
「お、おい」
男の子の制止を振り切って、アンナちゃんが手を振って駆け寄ってくる。
「みんな無事?」
「うん、怪我はしていないよ!」
笑顔でアンナちゃんは答える。後ろの草むらで隠れていた他の子たちもぞろぞろと出てくる。
全員目立った怪我はないが、皆が恐怖でいっぱいな目をしている。
「もう大丈夫だよ。大人たちが騎士様を呼びに行っているからもうすぐで助けに来てくれる」
私が言うと、安心したようにほっとため息をつく。
「でも、帰ったらシスターさん達に謝らないと駄目だよ!みんな心配してたし」
少しキツく言うとしゅんとなる。
「それにしても、どうし―」
グァアアァァァァ!!!!
私の話を遮るように大きな雄叫びが上がる。
私は咄嗟にそちらの方を向き、子供たちに指示を出す。
「みんな、近くの草むらに隠れて!」
どんどん、魔物が近づいてくる。
だが、子供たちは恐怖で動けないのか、立ち尽くしていたが、私がもう一度言うと、我に返ったように動き出す。ただ、アリスちゃんだけが私の側に来て服を掴む。
「レーナちゃんも逃げようよ!」
「大丈夫、私があいつを倒すから」
「でも、」
「心配しないで。また一緒に遊ぼうね」
不服そうにしながらも指示に従って草むらに隠れてくれたのを見届けて、私は目の前に集中する。
魔物が開けた場所に来た時、その姿が露わになる。
見た目は単純、鶏の首から胴体に尻尾は大蛇。大きさは五メートルで、足には鋭い鉤爪。
「コカトリス」
魔物の名前を口に出し、私は顔を顰める。
上級、いや上上級はあるコカトリスは、毒を吐く危険な魔物。鋭い鉤爪で大地を走って攻撃、口からは人の皮膚を溶かすほどの毒。一人では倒せない相手だ。でも―
「後ろにみんながいる。守らなくちゃ」
命令だからではない。
伯爵令嬢時代の時には作ることが出来なかった友達が後ろにいる。
一緒に遊んで、話して、食べて。それだけで私は幸せだった。初めてルイ様の部下で良かったと心から感じた。
「絶対に通さない」
コカトリスが先に動く。
鋭く大きな足で地面に踏み込み、空高く飛び上がる。下にいる小さな獲物へと狙いを定めて鉤爪を立てる。
だが、相手は小さな獲物ではない。魔法を使える人間だ。
「壁になれ、【トリプルシールド】!」
詠唱すると三つのシールドが頭上に展開される。そこへ来た鉤爪が二つを貫くが、最後の一つで何とか防ぐ。
防がれたことに驚き、コカトリスは後ろに下がる。そこへ、魔法が放たれた。
「我が元に集い、関を超え、大河と成れ、【ウォール・ホリー・グラン】」
大きな魔法陣に集まった魔力が水流の槍へと変化する。その槍がコカトリスへと行く。
グアアアア、コケーーーー!!
持ち前の瞬発力で既のところで横へと飛ぶが、横っ腹にかすり傷を負わせられた。痛みと憎しみで、その図体とは似合わない鶏の鳴き声と奇声を発した。
「まだまだよ―」
次の魔法を詠唱しようと口を開いた瞬間、コカトリスが視界から消えた。いや、実際には突然砂埃が起こり、見えなくなったと行ったほうが正しい。
「どこに?見せろ、【」
サーチを言う前に、横から何かが来るのを感じた。
一瞬の判断だった。
レーナはずっと練習してきた無詠唱で、シールドを咄嗟に展開させた。
「きゃぁぁ、」
大きな爪が張られたシールドを貫き、レーナの体へと当たる。
幸いだったのは、軌道がズレたおかげで爪の付け根が勢いよく体に当たった。
だが、それでも勢いよくレーナは横に吹っ飛ぶ。
地面へと転がったレーナの口から血が出る。
「誰、か・・・」
そう呟き、意識は途切れた。
身体強化を掛けて猛スピードで森へと向かう。
アンナちゃん、ライス君、ミレーヌちゃん・・・
いなくなった子たちの顔を思い浮かべる。
青年の話では、全部で八人いなくなった。
魔物は人を襲う性質があるため、子供たちは格好の獲物になってしまう。
そう考えるとスピードを上げる。
森の中に入るとすぐにサーチを発動させ、周囲の魔力の流れから見つけ出す。
走りながら探していると大きな魔力の流れを見つける。
?
まずい。大きな魔力の流れ、最低でも上級以上の魔物を見つけた。そいつはゆっくりと何処かへと向かっていく。
そちらの方へ集中すると、小さな流れが八つ。子供たちだった。
私はさらにスピードを上げて魔物と鉢合うのを避けるように迂回しながら向かう。
時折下級の魔物たちが襲ってくるが、相手をせずに子供たちと合流することを優先する。
暫く進んでいると、子供たちの反応が近くなる。
開けた所に出て辺りを探すと、
「レーナちゃん!」
「お、おい」
男の子の制止を振り切って、アンナちゃんが手を振って駆け寄ってくる。
「みんな無事?」
「うん、怪我はしていないよ!」
笑顔でアンナちゃんは答える。後ろの草むらで隠れていた他の子たちもぞろぞろと出てくる。
全員目立った怪我はないが、皆が恐怖でいっぱいな目をしている。
「もう大丈夫だよ。大人たちが騎士様を呼びに行っているからもうすぐで助けに来てくれる」
私が言うと、安心したようにほっとため息をつく。
「でも、帰ったらシスターさん達に謝らないと駄目だよ!みんな心配してたし」
少しキツく言うとしゅんとなる。
「それにしても、どうし―」
グァアアァァァァ!!!!
私の話を遮るように大きな雄叫びが上がる。
私は咄嗟にそちらの方を向き、子供たちに指示を出す。
「みんな、近くの草むらに隠れて!」
どんどん、魔物が近づいてくる。
だが、子供たちは恐怖で動けないのか、立ち尽くしていたが、私がもう一度言うと、我に返ったように動き出す。ただ、アリスちゃんだけが私の側に来て服を掴む。
「レーナちゃんも逃げようよ!」
「大丈夫、私があいつを倒すから」
「でも、」
「心配しないで。また一緒に遊ぼうね」
不服そうにしながらも指示に従って草むらに隠れてくれたのを見届けて、私は目の前に集中する。
魔物が開けた場所に来た時、その姿が露わになる。
見た目は単純、鶏の首から胴体に尻尾は大蛇。大きさは五メートルで、足には鋭い鉤爪。
「コカトリス」
魔物の名前を口に出し、私は顔を顰める。
上級、いや上上級はあるコカトリスは、毒を吐く危険な魔物。鋭い鉤爪で大地を走って攻撃、口からは人の皮膚を溶かすほどの毒。一人では倒せない相手だ。でも―
「後ろにみんながいる。守らなくちゃ」
命令だからではない。
伯爵令嬢時代の時には作ることが出来なかった友達が後ろにいる。
一緒に遊んで、話して、食べて。それだけで私は幸せだった。初めてルイ様の部下で良かったと心から感じた。
「絶対に通さない」
コカトリスが先に動く。
鋭く大きな足で地面に踏み込み、空高く飛び上がる。下にいる小さな獲物へと狙いを定めて鉤爪を立てる。
だが、相手は小さな獲物ではない。魔法を使える人間だ。
「壁になれ、【トリプルシールド】!」
詠唱すると三つのシールドが頭上に展開される。そこへ来た鉤爪が二つを貫くが、最後の一つで何とか防ぐ。
防がれたことに驚き、コカトリスは後ろに下がる。そこへ、魔法が放たれた。
「我が元に集い、関を超え、大河と成れ、【ウォール・ホリー・グラン】」
大きな魔法陣に集まった魔力が水流の槍へと変化する。その槍がコカトリスへと行く。
グアアアア、コケーーーー!!
持ち前の瞬発力で既のところで横へと飛ぶが、横っ腹にかすり傷を負わせられた。痛みと憎しみで、その図体とは似合わない鶏の鳴き声と奇声を発した。
「まだまだよ―」
次の魔法を詠唱しようと口を開いた瞬間、コカトリスが視界から消えた。いや、実際には突然砂埃が起こり、見えなくなったと行ったほうが正しい。
「どこに?見せろ、【」
サーチを言う前に、横から何かが来るのを感じた。
一瞬の判断だった。
レーナはずっと練習してきた無詠唱で、シールドを咄嗟に展開させた。
「きゃぁぁ、」
大きな爪が張られたシールドを貫き、レーナの体へと当たる。
幸いだったのは、軌道がズレたおかげで爪の付け根が勢いよく体に当たった。
だが、それでも勢いよくレーナは横に吹っ飛ぶ。
地面へと転がったレーナの口から血が出る。
「誰、か・・・」
そう呟き、意識は途切れた。
21
あなたにおすすめの小説
【流血】とある冒険者ギルドの会議がカオスだった件【沙汰】
一樹
ファンタジー
とある冒険者ギルド。
その建物内にある一室、【会議室】にてとある話し合いが行われた。
それは、とある人物を役立たずだからと追放したい者達と、当該人物達との話し合いの場だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました
Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる