異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

文字の大きさ
46 / 188
少年編 3.5章

第46話 主人公⑥ (リリス視点)

しおりを挟む
[僕と契約して!]

私の心に呼びかける声が聞こえる。周囲を見るが、虹色の玉と目の前の狼男しかいない。

[僕だよ僕!君の周りを飛んでいる虹色の玉だよ!]

私は驚いてその玉を凝視する。

「貴方は?」

[そんなのはいいから早く契約しないとそいつにやられるぞ!]

私はハッとして目の前を見ると大きな鋭い爪のある前足を振り上げる姿が。

「どうやって―」

[同意するって心のなかで言って! 我は契約を望む]

ど、[同意する!]

振りかざされた手が目の前に来そうになった瞬間、時が止まった感覚に陥る。

[こ、これは―――って、何か変な感覚がする!]
[そりゃーそうだもん。心の中で精霊語で話をしているのだから]

せ、精霊語!

[貴方は?]
[時間がないから簡潔に答えるけど、僕は時空の精霊クロノスだよ]
[精霊なんだ]
[君は精霊術士だろ?]
[うん、そうだけど。さっきのは一体何?]
[さっきのは契約だよ]
[契約・・・!!!本当に!]
[そうだよ。何せ――ってあまり時間がない]

クロノスと名乗った精霊は慌てたように話を進める。

[僕は今、君を介して時間を止めた。でも無限にできるわけではないんだ。君にも負担が掛かる。だから、解除したら僕の指示に従って動いてね。とりあえず僕が能力を使うから]
[え、ちょ、まず貴方は何でここに、それとどうして私を―]
[行くよ]

私の質問を無視して解除される。時間が動いた感覚が体に流れ込む。聴覚嗅覚視覚・・・。全てが戻ったような感覚に襲われる。
先程までは何だったのか?そう考えそうになるが―

[左に飛んで!]

クロノス―クロに指示をされ咄嗟に体を捻らせ、足への力を斜め右へと地面に入れる。
左へと飛んだ私は間一髪のところで避けることは出来た。

[結構運動神経いいんだね]

日頃走っていた成果がでた。

 ウ"ウ”ーーー

避けたことが意外なのかこちらを舐め回すように見てくる。

「こ、この後は?」

[とりあえず森へと走って]

「え!」

私はおどろきながらも自分ではどうにもならないことを理解しているため言うことを聞く。

後ろを振り返らず無我夢中に前へと走る。

ウ”ォーーーー   バンッ バンッ

大きな遠吠えとともに後ろから大きな足音が聞こえてくる。後ろを振り返りたかったが怖さもあって振り返れない。
 
[右に転がって!]

指示をされ言うことを聞いて横へ飛んで転がる。すると先程まで私がいた場所に素早い何かが通り過ぎる。
その通り過ぎたものは狼男の前足。またも間一髪のところで避けたのだ。

[よし、完成。ねえ、心の中で、出ろって念じてみて]

クロに言われた通り念じる。

[出ろ!]

すると私の手元に長いサーベルが現れる。慌ててそれを掴んでみると不思議と手に馴染む。

[僕が作り出した簡易のサーベルだ。それであいつの首を斬れ]

「いや、無理だよ!」

[大丈夫だ。僕が動きを一瞬止める。合わせて素早く動いて]

そう言うとクロが何かを唱える。すると、避けた私へと振り返ろうとした狼男の動きが鈍く―いや、動きが止まる。

[行って!]

私は構え方も分からないサーベルを自己流で前に構えて走り出す。大きな体格をした狼男めがけてジャンプをする。

「え!何でこんなに」

[いいから、今は前に集中して!]

普段の倍以上飛び上がり狼男の頭上へと来た私は驚きの声を上げたが、無視される。

私はがら空きの首めがけて一直線にサーベルを振り下ろす。クロが何かを唱えるとサーベルの重さが倍になり、首を断ち切るように深く行く。が、死へと至らなかった。

動き出した狼男は耳を塞ぎたくなる大きな悲鳴を上げ、私を振り払う。先程攻撃で体力を全て使った私は、サーベルから力無く手が離れ空中に放り出される。

地面を見ると死ぬような高さ。私は本日二度目の死を覚悟した。

だが、不意に誰かに抱えられる。

「その歳で、この期間で契約とは上出来だ」

師匠の声が聞こえた私は安心したように意識を失った。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【流血】とある冒険者ギルドの会議がカオスだった件【沙汰】

一樹
ファンタジー
とある冒険者ギルド。 その建物内にある一室、【会議室】にてとある話し合いが行われた。 それは、とある人物を役立たずだからと追放したい者達と、当該人物達との話し合いの場だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ハーレムキング

チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。  効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。  日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。    青年は今日も女の子を口説き回る。 「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」 「変な人!」 ※2025/6/6 完結。

チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である! 主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない! 旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む! 基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。 王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

処理中です...