異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

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少年編 3.5章

第49話 主人公⑦ (リリス視点)

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「・・・ろ。おい、起きろ」
[おい、起きろ!]

外からは師匠の中からは誰かの声が聞こえる。

「おい、どうしてあんな事になったか説明してもらうぞ」
[おい、君が誰なのか教えてもらうぞ]

目を開けようと力を入れるが、途端に頭痛がして顔を顰める。

[おい、大丈夫か!おい、ババア。早く治癒してやれ]
「ババアじゃないし!」

そんな会話が終わると同時に温かい何かに包み込まれる感覚になる。
体の節々の痛みがなくなり全身に力が戻る。

「おい、意識はあるか!」
[大丈夫だ、意識はある]

「・・・・・・は!」

私は思いっきり目を開けた。
そこはいつもの家、いつもの部屋。

「おい、本当に大丈夫か?」

女性にしては低い師匠の声がした方を向く。
声を聞き、師匠の姿を見た私の目から涙が溢れる。

「・・・我なんかやったか?」
[女子を泣かすなんて!]
「我も女だ!」

コントのような会話を他所に、私は嗚咽を吐きながら泣く。ベットにうずくまり、大きな声を上げて。

「本当に大丈夫か?」
「う”う”、は”い”、だい”丈夫でず」

嗚咽が止まらないせいでうまく喋れない。

「どうして泣くんだ?」
「だって、だって、怖くて」

今度こそ死ぬかも知れない。

そうあの時は何度も思った。

新しい人生が始まったというのに、自分がどれだけ無力だったのか実感させられた。

私が泣き止まないのを見て、師匠が優しく抱きしめてくれる。

「怖かっただろう、よく頑張った。お前は凄い。だから、泣き止め」

頭を優しく撫でてくれる。ここ数年、経験したことのない温もり。

「すいませ”ん”」
「大丈夫だ、落ち着け」

ここが新しい家、帰る場所。

そう思うと先程までの恐怖が和らぐ。

私は心配そうにこちらを見る師匠に笑いかける。すると心の中に不満そうな声色でだれかに話しかけてくる。

[おい、くだらない家族ごっこは終わったか?]

私は場違いで生意気な言葉を無視して師匠に質問する。

「あの後どうなったんですか?」

[無視するな!]


「お前が重症を負わせたおかげで楽に倒せたよ。あの後お前は気絶したから覚えていないだろうけど」

[おい、ババアも無視するな!]

「でもどうして師匠は私の居場所が分かったのですか?」
「それはだな―」

師匠は目を瞑り、唱えた。

[出てきて]

すると私の着ていた服の右ポケットから黄色い精霊が出てきた。

「この子に見守ってもらっていたんだ。精霊術士は精霊と意思疎通できるからこの子に教えてもらって急いで向かったのよ。」
「そうなんですね。・・そういえば先程聞こえた 出てきて という言葉は?」
「それが精霊語よ。貴方もわかるようになったのね」
「ええ・・・まああ」

私と師匠の目が、先程からウザったらしく私達の周囲を旋回する銀色の玉に行く。

[やっと僕の方を見てくれたな]

「あいつが?」
「まあ、一応、恐らく、たぶん・・・私が契約をしました」

[ちゃんと契約したぞ!]
「でも、あの時と色変わってない?七色だったよ」
[そうなのか?僕は覚えてないが]

私達が疑問に思っていると師匠が何やら考え込んでいた。

「師匠は何か分かりますか」

私が聞くと、軽く首をふる。

「いいや、何でも無い。それより、その精霊についてだが、」
[よし、自己紹介だな!僕の名前はクロノス、時空の精霊だ]

「!そうだ、クロって呼んだんだった!」
[変なあだ名を付けるな!猫じゃないぞ]
「駄目?クロ~」
[・・・好きに呼べ]

一応はあだ名を気に入ってくれたらしい。

「で、どうして時空の精霊がリリスと契約したの?」

何時になく鋭い表情でクロを掴む。

[お、おい、精霊をもっと大事に扱え]
「人をババア呼ばわりするような精霊は雑に扱う」

ババア呼ばわりされて怒っているのか師匠は掴みながら振り回す。
そりゃ~見た目からして二十代の人をババア呼ばわりしたら怒られる。

[は、話すから、振り回さないでくれ!]
「大丈夫だ、このままでも話せるだろう」
[お、鬼が!]
「さあ、早く話せ」
[わ、分かった!ていうか話すこと無いし。ただ、気づいたら僕はあの場にいて、そこの精霊術士を呼ばなければいけない気がしたんだ!それだけだ。あとは狼男がいたかぐらいだよ!]

全て話し終わると、師匠の手が止まる。

「新生精霊なのか?」
[さあ、僕にも分からん]
「そうか」

師匠が手を話すと、勢いよく私の後ろに隠れる。

[ああ、怖かった。お、そうだ名前を聞いていなかったな。君の名前は?]

クロが私に聞く。

「私の名前はリリス、ただのリリスよ。よろしく、クロ」
[ああ、よろしく]

私が拳を前に出すと、クロが寄って上に乗る。

私は拳を出した意味を分かっていない姿を見て、思わず噴いてしまう。

気づけば、私の中にあったあの恐怖が完全に無くなっていた。




こうして私は精霊術士になった。
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