51 / 188
少年編 3.5章
第51話 噂のパーティー (三人称視点)
しおりを挟む
十代の子供たちが集められた王都のパーティー。
王宮の一室で行われたためか、子供のパーティーとは思えない豪華な部屋に集められていた。
親たちはここで少しでもどこかしらの家と繋がるチャンスだとソワソワし、子供たちは自分と同じ年齢の人に会えるのかとソワソワしていた。
そんなパーティーの中心的な人物、濃い青髪のキリッとした顔立ちの美少年が女子たちに囲まれていた。
「アレックス様、ぜひわたくしとおどってくれませんか!」
「いいえ、私と」
「わたくしはおどりが得意ですわ」
親に言われたのか、必死に第三皇子のアレックスにすり寄る令嬢たち。
それを煩わしく思いながらも彼は丁寧に対応していた。
「はぁ~~~」
女子たちの輪から抜け出したアレックスは端の方で一人、息を吐いた。
彼にとって擦り寄られるのは当たり前、だが嫌悪を覚えることだった。
水の入ったコップを持って片隅で一人でいた彼だが、そこに一人の男の子が歩み寄ってきた。
子供は生意気そうな顔立ちで、金髪の髪をしっかり整えていた。彼もまたこのパーティーの中心人物であり、下手をしたらアレックスよりも女子に囲まれていた人物。
「アレックス第三皇子殿下。お初にお目にかかります、ブルボン公爵家嫡男、ルイ・デ・ブルボンです。以後お見知りおきを」
自分の身分を自慢するようにいやみったらしく言うルイ。彼の言葉からは皇子への敬意を感じられない。
「ご丁寧にありがとうございます。ルイ殿は大変な人気のようで」
「ええ、まあ。これでも公爵家の嫡男なので」
最初っから喧嘩腰。謙遜などしない、当然とばかりの発言にアレックスは苦笑いする。
「貴方は何でも持っているんですね」
少し嫌味を言うが、ルイは意に介さない。
「そりゃあそうですよ。選ばれた人間なのですから!誰かさんのように今の地位に不満なんてありません」
「・・・その誰かさんは俺のことか?」
「さあ、どうでしょう?まあ、強いて言うなら殿下の印象は『可哀想な人』ですかね」
肩をすくめながら飄々というルイ。
アレックスは思わず腰にある剣を抜こうとするが、既のところで我慢した。
「あれ?図星でしたか?不敬に当たりますかね?・・・まあ、僕を罰するのは貴方には無理でしょうけどね」
耳元でルイはニヤリと笑う。
アレックスは黙ることしか出来なかった。全てが図星だから。
今の身分が嫌いで、誰にも愛されない可哀想な人で、歴史ある公爵家の令息をを罰するほど権力も第三皇子ごときが持っていない。
「それではお仲間同士、傷の舐め合いでもしてください」
そう言い残して、偉そうな公爵令息は立ち去っていった。
その後少しして、二人の男の子がアレックスに近づいてきた。
「殿下もあの方に酷いことを言われたようですね」
アレックスに最初に話しかけたのは、薄い緑髪のメガネを掛けた少年。
「おれらもあいつに『可哀想な人』って言われたぜ」
南部訛りの言葉で言うのは、ガタイの良い赤髪の少年。
「君らは?」
急にでてきた二人にアレックスは戸惑う。
「申し遅れました、ぼくはカッセル伯爵家三男、ハンネス・デ・カッセルです」
「地方の騎士爵ルース家の長男、フレッド・ダ・ルースだ」
二人は名乗る。
「さっき言ったことって本当なのか?」
「ええ、ルイ公爵令息に可哀想な人だの言われましたよ」
「ああ、本当にうざくて偉そうな野郎だぜ」
二人は口々に文句を言う。
「色んな人に言っているのか?」
「いいや、今のところおれらだけみたいだぜ」
「「ぷっ、ははは」」
アレックスの質問に答えたフレッドの一人称に思わず笑う二人。
「お、おい、おれの発音を笑うな!」
「「ははは」」
またしても笑ってしまう。
「いやいや、すまん。ついおかしくて」
王宮では聞かない語尾を上げる発音にアレックスは久しぶりに笑ってしまった。
「殿下も人が悪いぜ」
「ごめんごめん。それで、ルイ公爵令息のことだっけ?」
笑い終えたところで話を戻す。
「ええ。あの方は何なんでしょうか?心からの嫌悪がしてきます」
「俺も仲良くは慣れない気がする」
「おなじくだぜ」
三人はルイへの敵意がだんだん芽生え始めた。
そんな同じ気持ちを共有し合った彼らはだんだんと仲良くなっていった。
彼らがリリスと出会うのは二年後。
ルイと戦うことになるのは・・・・そう遠くない未来だろう。
王宮の一室で行われたためか、子供のパーティーとは思えない豪華な部屋に集められていた。
親たちはここで少しでもどこかしらの家と繋がるチャンスだとソワソワし、子供たちは自分と同じ年齢の人に会えるのかとソワソワしていた。
そんなパーティーの中心的な人物、濃い青髪のキリッとした顔立ちの美少年が女子たちに囲まれていた。
「アレックス様、ぜひわたくしとおどってくれませんか!」
「いいえ、私と」
「わたくしはおどりが得意ですわ」
親に言われたのか、必死に第三皇子のアレックスにすり寄る令嬢たち。
それを煩わしく思いながらも彼は丁寧に対応していた。
「はぁ~~~」
女子たちの輪から抜け出したアレックスは端の方で一人、息を吐いた。
彼にとって擦り寄られるのは当たり前、だが嫌悪を覚えることだった。
水の入ったコップを持って片隅で一人でいた彼だが、そこに一人の男の子が歩み寄ってきた。
子供は生意気そうな顔立ちで、金髪の髪をしっかり整えていた。彼もまたこのパーティーの中心人物であり、下手をしたらアレックスよりも女子に囲まれていた人物。
「アレックス第三皇子殿下。お初にお目にかかります、ブルボン公爵家嫡男、ルイ・デ・ブルボンです。以後お見知りおきを」
自分の身分を自慢するようにいやみったらしく言うルイ。彼の言葉からは皇子への敬意を感じられない。
「ご丁寧にありがとうございます。ルイ殿は大変な人気のようで」
「ええ、まあ。これでも公爵家の嫡男なので」
最初っから喧嘩腰。謙遜などしない、当然とばかりの発言にアレックスは苦笑いする。
「貴方は何でも持っているんですね」
少し嫌味を言うが、ルイは意に介さない。
「そりゃあそうですよ。選ばれた人間なのですから!誰かさんのように今の地位に不満なんてありません」
「・・・その誰かさんは俺のことか?」
「さあ、どうでしょう?まあ、強いて言うなら殿下の印象は『可哀想な人』ですかね」
肩をすくめながら飄々というルイ。
アレックスは思わず腰にある剣を抜こうとするが、既のところで我慢した。
「あれ?図星でしたか?不敬に当たりますかね?・・・まあ、僕を罰するのは貴方には無理でしょうけどね」
耳元でルイはニヤリと笑う。
アレックスは黙ることしか出来なかった。全てが図星だから。
今の身分が嫌いで、誰にも愛されない可哀想な人で、歴史ある公爵家の令息をを罰するほど権力も第三皇子ごときが持っていない。
「それではお仲間同士、傷の舐め合いでもしてください」
そう言い残して、偉そうな公爵令息は立ち去っていった。
その後少しして、二人の男の子がアレックスに近づいてきた。
「殿下もあの方に酷いことを言われたようですね」
アレックスに最初に話しかけたのは、薄い緑髪のメガネを掛けた少年。
「おれらもあいつに『可哀想な人』って言われたぜ」
南部訛りの言葉で言うのは、ガタイの良い赤髪の少年。
「君らは?」
急にでてきた二人にアレックスは戸惑う。
「申し遅れました、ぼくはカッセル伯爵家三男、ハンネス・デ・カッセルです」
「地方の騎士爵ルース家の長男、フレッド・ダ・ルースだ」
二人は名乗る。
「さっき言ったことって本当なのか?」
「ええ、ルイ公爵令息に可哀想な人だの言われましたよ」
「ああ、本当にうざくて偉そうな野郎だぜ」
二人は口々に文句を言う。
「色んな人に言っているのか?」
「いいや、今のところおれらだけみたいだぜ」
「「ぷっ、ははは」」
アレックスの質問に答えたフレッドの一人称に思わず笑う二人。
「お、おい、おれの発音を笑うな!」
「「ははは」」
またしても笑ってしまう。
「いやいや、すまん。ついおかしくて」
王宮では聞かない語尾を上げる発音にアレックスは久しぶりに笑ってしまった。
「殿下も人が悪いぜ」
「ごめんごめん。それで、ルイ公爵令息のことだっけ?」
笑い終えたところで話を戻す。
「ええ。あの方は何なんでしょうか?心からの嫌悪がしてきます」
「俺も仲良くは慣れない気がする」
「おなじくだぜ」
三人はルイへの敵意がだんだん芽生え始めた。
そんな同じ気持ちを共有し合った彼らはだんだんと仲良くなっていった。
彼らがリリスと出会うのは二年後。
ルイと戦うことになるのは・・・・そう遠くない未来だろう。
11
あなたにおすすめの小説
【流血】とある冒険者ギルドの会議がカオスだった件【沙汰】
一樹
ファンタジー
とある冒険者ギルド。
その建物内にある一室、【会議室】にてとある話し合いが行われた。
それは、とある人物を役立たずだからと追放したい者達と、当該人物達との話し合いの場だった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ハーレムキング
チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。
効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。
日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。
青年は今日も女の子を口説き回る。
「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」
「変な人!」
※2025/6/6 完結。
チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました
Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である!
主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない!
旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む!
基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。
王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる