異世界貴族は家柄と共に! 〜悪役貴族に転生したので、成り上がり共を潰します〜

スクールH

文字の大きさ
63 / 188
少年編 4章

第63話 主人公⑪ (リリス視点)

しおりを挟む
10万字超えていました!
・・・まだ10万字でした。

―――


「冗談です!また会いましょう」

私はそう言って青髪の男の子に手を振って会場へと向かう。

[さっきの奴、君の知り合い?]
「そうではないよ。偶々いただけだよ」
[だよな。あいつ、どう考えてもいい身分な奴だよ]
「え!」

私はクロの言葉に驚く。

[リリス、格好やら容姿を見ていなかったのかよ。古びたローブを被っていたから分からなかっただろうけど、高価な衣服と剣を身につけていたぞ。しかも髪の毛はしっかり手入れされていて、どう考えても伯爵以上の貴族だぞ]
「そうだったかな~?でも、貴族でもいっぱいいると思うけど・・・」
[胸元見たか?自分のは見せてたけど、相手のは見てなかっただろ]
「え、えっと~」
[見てないな。ちなみに胸元には受験者のプレートが無かった。つまり受験者ではない。ただ、年齢的にリリスと同じくらい。伯爵以上は試験無しで入れるからそう思っただけだ]
「な、なるほど!クロ、名推理!」

私が感心して褒めると、クロは[それほどでもないよ]と照れる。

[ていうか、おい!早く行かないと試験に間に合わないぞ!]

会場に入ったためホッとして話をしながら歩いていたが、時間が無いのを思い出す。

「そうだった!」

方向音痴だったリリスは、学園に入ったはいいものの会場が分からず数時間も迷っていたのだ。

[相変わらずの方向音痴だな]
「それほどでも~」
[褒めてないよ!って、そこ左!]

話ながら走っていたため、曲がるべきところを通り越してしまった。

[はぁ~手のかかる]
「ごめんね」
[・・・精霊語で返す癖をつけろ。周りの視線が痛いぞ]
「・・・はぅぅ」
[おい、立ち止まるな!]

私はまたやってしまった恥ずかしさでその場で踞ってしまった。

精霊語を知らない人から見たら変な光景だ。
走っていた少女は一人ぶつぶつと呟いてたかと思うと、突然蹲る。

「受験番号五十番の方!五十番の方!」

[おい、呼ばれているぞ]

競技場へと続く通路からの大人の声で我に返った。

「あ、はい!私です!」

立ち上がり、走って向かう。

「え~っと、君はリリス・・・チッ」

学園の教師と思しき人が手元の名簿で私の名前を見た途端、ニコニコと笑っていた顔を歪め、露骨な舌打ちをする。

「平民風情が」

小さな声で更にボソリと呟く。

[平民とわかった途端、この態度か]
[まあ、こんなもんだよ]

家族から迫害されていた私の唯一の遊び相手が平民の子たちだった。そして師匠の家に住み始めてからも近所の子たちとよく遊んでいた。

だから、私に平民への差別意識は無い。

でも、今の貴族社会では平民と言うだけでいじめを受ける。

平民の入学が許されているこの学園でさえ、そういう風習があるのだろう。

でも、私は負けない!

家族に捨てられた日に比べれば、耐えられる。

「本日最後は、受験番号四九番、オルナット・デ・グランズ。受験番号五十番、リリス」

アナウンスで紹介されると同時に、入場のドアが開く。

私は緊張してバクバクする心臓を落ち着かせるため深呼吸を一回して、入場した。

足を踏み入れると、先程よりも緊張感を感じる。

円形の競技場。観客席は数メートルの高いところにあり、沢山の受験生達が座っている。

私のいる中央のフィールドの地面は柔らかい砂色の土。

立ち位置は決められているのか中央には向かい合う白線。

[凄いな]

クロはその一言しか言えない。私も人の多さに圧倒された。

「リリスさん、前へ」

私が会場をおろおろと眺めていると、審査員の人が優しく注意してくれる。

「す、すいません」

私は急いで指示された白線へと行く。

相対するように反対の白線にいるのは対戦相手。たしか、オルナット君だったっけ?

高そうな鋼で作られたロングソードを腰にかけている。服装は肩当てと胸当てを付けている動きやすそうなものだ。

「おい、お前は平民か?」

私が観察していると、突然話しかけられる。

「ええ、まあ」
「ふっ、汚らわしい。俺は子爵家だ」
「はぁ~」
「だから、ここで棄権しろ。命令だ」

[何なんだこいつ?偉そうだな]
[貴族だから、ね]

私はもう逃げない。もう、負けたくない!

「全力でお断りします!」
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【流血】とある冒険者ギルドの会議がカオスだった件【沙汰】

一樹
ファンタジー
とある冒険者ギルド。 その建物内にある一室、【会議室】にてとある話し合いが行われた。 それは、とある人物を役立たずだからと追放したい者達と、当該人物達との話し合いの場だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ハーレムキング

チドリ正明@不労所得発売中!!
ファンタジー
っ転生特典——ハーレムキング。  効果:対女の子特攻強制発動。誰もが目を奪われる肉体美と容姿を獲得。それなりに優れた話術を獲得。※ただし、女性を堕とすには努力が必要。  日本で事故死した大学2年生の青年(彼女いない歴=年齢)は、未練を抱えすぎたあまり神様からの転生特典として【ハーレムキング】を手に入れた。    青年は今日も女の子を口説き回る。 「ふははははっ! 君は美しい! 名前を教えてくれ!」 「変な人!」 ※2025/6/6 完結。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

チートスキルより女神様に告白したら、僕のステータスは最弱Fランクだけど、女神様の無限の祝福で最強になりました

Gaku
ファンタジー
平凡なフリーター、佐藤悠樹。その人生は、ソシャゲのガチャに夢中になった末の、あまりにも情けない感電死で幕を閉じた。……はずだった! 死後の世界で彼を待っていたのは、絶世の美女、女神ソフィア。「どんなチート能力でも与えましょう」という甘い誘惑に、彼が願ったのは、たった一つ。「貴方と一緒に、旅がしたい!」。これは、最強の能力の代わりに、女神様本人をパートナーに選んだ男の、前代未聞の異世界冒険譚である! 主人公ユウキに、剣や魔法の才能はない。ステータスは、どこをどう見ても一般人以下。だが、彼には、誰にも負けない最強の力があった。それは、女神ソフィアが側にいるだけで、あらゆる奇跡が彼の味方をする『女神の祝福』という名の究極チート! 彼の原動力はただ一つ、ソフィアへの一途すぎる愛。そんな彼の真っ直ぐな想いに、最初は呆れ、戸惑っていたソフィアも、次第に心を動かされていく。完璧で、常に品行方正だった女神が、初めて見せるヤキモチ、戸惑い、そして恋する乙女の顔。二人の甘く、もどかしい関係性の変化から、目が離せない! 旅の仲間になるのは、いずれも大陸屈指の実力者、そして、揃いも揃って絶世の美女たち。しかし、彼女たちは全員、致命的な欠点を抱えていた! 方向音痴すぎて地図が読めない女剣士、肝心なところで必ず魔法が暴発する天才魔導士、女神への信仰が熱心すぎて根本的にズレているクルセイダー、優しすぎてアンデッドをパワーアップさせてしまう神官僧侶……。凄腕なのに、全員がどこかポンコツ! 彼女たちが集まれば、簡単なスライム退治も、国を揺るがす大騒動へと発展する。息つく暇もないドタバタ劇が、あなたを爆笑の渦に巻き込む! 基本は腹を抱えて笑えるコメディだが、物語は時に、世界の運命を賭けた、手に汗握るシリアスな戦いへと突入する。絶体絶命の状況の中、試されるのは仲間たちとの絆。そして、主人公が示すのは、愛する人を、仲間を守りたいという想いこそが、どんなチート能力にも勝る「最強の力」であるという、熱い魂の輝きだ。笑いと涙、その緩急が、物語をさらに深く、感動的に彩っていく。 王道の異世界転生、ハーレム、そして最高のドタバタコメディが、ここにある。最強の力は、一途な愛! 個性豊かすぎる仲間たちと共に、あなたも、最高に賑やかで、心温まる異世界を旅してみませんか? 笑って、泣けて、最後には必ず幸せな気持ちになれることを、お約束します。

処理中です...