明と暗のバッファード

プロローグ

―ノイが外の世界へ出た。
俺がその知らせを受けたのは、真昼の12時50分。
俺は食べかけの昼食をそのままに、靴も履かずに外へ走りだした。外へ出て―外の世界へと繋がる道へ向かって無我夢中で走った。途中―見知らぬ顔の奴らに訝しい視線を向けられたが気にも留めずに、石を踏んで足が切れたのもお構い無しに一心不乱に走り続けた。もし彼女に追いつくことが出来なかった、あるいは追いついても引き止めることが出来なかったらどうしよう―
一瞬考えた―が、その時は俺もそのまま外の世界へ飛び出してしまうまでだ。あいつ1人で外の世界に行かせるのより幾分ましだ。
俺は焦燥にかられる脳をどうにか制御して、即座に答えを出した。
ーー息が切れ、足の痛みが脳に伝わり出した頃、少し遠くに外の世界へ通じる道が見えてきた。

……っ！よかった！間に合う！俺は、より脚の回転を早めると同時に、目だけで彼女の姿を捜した。だが、彼女の姿は見つからない。外へつながる道の前にも先にも見当たらない。―もうこのまま外の世界へ出るしかない！
ーそう覚悟を決めた時、外の世界へと通じる道が閉ざされ始めたのが見えた

くそ、あと少しなんだ！間に合ってくれ！間に合え！
「間に合えぇぇぇ！」
ー叫びながら閉ざされて行く道へ飛び込んだ。しかし外の世界に入る直前―道は閉ざされた。

まるでー俺と彼女の関わりのすべてを断ち切るように。

俺は飛び込んだ勢いをそのまま弾き飛ばされ地面に転がる。弾き飛ばされた衝撃と自分だけ外の世界へ出られなかった絶望感にうたれ、頭が真っ白になった。さっきまでずっと全力で走り続けていた疲れが、思い出したかのようにやってきて俺の体を地面にしばりつけた。

気づけば、呆然と視界に映り続けていた空がすっかり暗くなっていた。足から出ていた血が固まり、弾き飛ばされた時にぶつけた腕や膝には青あざが浮かんでいた。