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第一章 師匠'sとの出会い〜スケルトン軍団を昇天させます〜
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次の日、僕たちはウイスキーの瓶を持ってアレックスさんとヴィンセントさんの元を訪れていた。初めにクズハのことを紹介してから、僕たちは三つの瓶を差し出す。二人はすんなりと受け取ってくれたが、骨恐竜のネロアが首を横に振る。
『ダメ、エモノ、コウカン』
「え? ネロアにも手伝ってもらってるから、気にしなくて良いんだよ」
『ダメ、サケ、エモノ、コウカン』
頑なに受け取ってくれないネロアに僕が困り果てていると、アレックスさんがからからと笑いながら、僕の頭を撫でる。
『ネロアがお前たちを仲間と認めたということだから、好きにさせておやり』
僕が了承すると、ネロアはフシューッと鼻息を荒くし、どこかへ駆けて行った。追いかけっこの鬼役がいなくなったが、僕たちは真剣に午前中の訓練をこなす。レベルアップの効果なのか、僕たちは体力がかなり上昇しているのを実感していた。
昼になり、僕たちが午前中の訓練を終えて大木の根元に戻ると、ネロアが体長1mを優に超える大きな兎を咥えて待っていた。
『ニク、オマエノ、サケ、オレノ』
「ネロア、ありがとう。じゃあ、これどうぞ」
僕はウイスキーが入った瓶を置き、ネロアの鼻先を撫でる。ひんやりしているその体は確かに生気を感じないのだが、グルルと喉を鳴らすその姿とのギャップがなんだかおかしくて、僕はつい笑ってしまう。
僕が鼻先からそっと手を離すと、ネロアは兎をぼとりと落とし、ウイスキーの瓶を咥えてアレックスさんとヴィンセントさん方へと走っていった。残されたのは、息絶えた一羽の巨大な兎。
え……これ、僕たちが捌くの?
僕はちらりと徹の方を見る。徹はため息をつき、これだけでかい肉は捌く前に川に沈めて冷やせというアドバイスをくれた。僕たちは三人で川まで運び、えずきながらもなんとか太い血管を切り、内臓を抜いてから川に落とした。
午後からは、大空と徹は修業に向かい、僕はクズハとともにおじさんたちの元へ向かう。おじさんたちは相変わらず無気力に漂っていた。昨日よりも多くのおじさんたちを天に還した僕だったが、突然目の前が暗くなり、意識が遠くなる。
この世界に来てからこればっかりのような気が……。
目が覚め、僕の顔の上で眠っているクズハをどかすと、半透明なおじさんたちが薄ぼんやりとした目で僕のことを覗き込んでいた。
日はまだ沈む少し前、離れたところでは大空と徹が師匠たちと何やらしているのが見える。おじさんたちをこれ以上昇天させるのは難しいと判断した僕は、食事をつくることにした。
料理といっても兎の肉はまだ食べられないし、どうしよう? 簡単で美味しいあれにしよ♪
作った料理を皿に盛り付けていると、修業が終わったらしい大空と徹がこっちに走ってきた。二人は木箱をひっくり返した簡易テーブルの前に座るなり、口を開く。
「優太、腹減った!」
「美味そうな匂いで集中できねえよ。これ何だ?」
「あはは、コンビーフとジャガイモの炒め物だよ」
僕が作ったのは、茹でたジャガイモとコンビーフをニンニクと一緒にバターで炒めて、塩コショウで味を調えただけのもの。簡単なんだけど、めちゃくちゃ美味しいし、腹もちもいい。それに、お酒のあてにもなるから、師匠たちにも持っていってあげよ。
僕はフルーツ等の準備を大空と徹に託し、料理を持ってアレックスさんとヴィンセントさんの元へと向かった。二人は既にネロアとともにお酒を飲んでおり、賑やかなヴィンセントさんの声が聞こえて来た。
『わははははっ、ヒロは飲み込みがいいわい! わしの若いころのようだ!』
『そうだねえ、トールもユータも良い子で……わたしたちに子がいたら、三人のどれに似ていたのかねえ』
『人は一人ひとり違う! が、できれば儂はアルに似て欲しいのである!』
『ふふふ、私はヴィンスに似て欲しいよ』
そう言いながら、首なし騎士にしなだれかかる黒ローブ髑髏。僕は何か見てはいけないものを見てしまったような気がして、こっそりと引き返すのであった。
特訓の日々は続き、一日に昇天できる半透明のおじさんが100おじさんを超えた頃、僕は夜中に違和感を覚えて目を覚ました。テントの中はほのかに明るく、徹が小さな火を浮かせて本を読んでいた。
「徹、まだ起きてたんだ」
「ああ、これ読んどきたくてな」
「ふうん、あれ? 大空は?」
僕の疑問に、徹は出入り口を指差し、「外」と短く答えた。
「はあ? なんで?」
「見れば分かる」
僕は立ちあがり、訝しげな視線を徹に向けながらテントの出入り口から顔を出す。僕の目に映ったのは──
「うおおおおおお!」
カタカタッ、ヒョイッ。
「ふべらっ!」
──スケルトン軍団の戦争に混じっている大空の姿だった。
しかも避けられて派手に転んでるし……
「はあ……。何やってるのさ?」
「師匠たちがな、大空は『斬る』ことに慣れとけって。前衛の大空がいざというときに動けないと全員すぐに死ぬから。まあ、相手は斬っても死なないスケルトンだけど、人の骨格だから多少練習にはなるだろうってさ」
「……そうなんだ」
僕が呆れや恐怖といった複雑な心境で眺めていると、立ち上がった大空が再度長剣を振りかぶる。
「るあああああああ!! 【万夫不当】!」
スキルを発動したらしい大空は、先程よりも速いスピードで突っ込んだ。長剣が目にも止まらない速さで一体のスケルトンに迫る。
カタカタカタッ、ヒョイヒョイ、ゴツンッ!
「痛てえ!」
今度は転んだだけではなく、白っぽい棒のような何かで背中を叩かれる大空。周囲にいるスケルトンたちはカタカタと笑っているように見えた。
いつのまにか僕の横に立ち、戦いを見つめていた徹が呟く。
「相手は500年間毎日戦争してる戦闘狂だからな。恵まれた天稟ってのをもらった大空でも、いつ斬れることか」
「……寝よっか」
徹は「ああ」と答えながら頷いた。僕たちはテントの中に引っ込み、小火を消して眠りにつく──
「そおおおおおい!! ぎゃん!」
──大空が無事に帰って来れるように、なむなむと祈りながら。
『ダメ、エモノ、コウカン』
「え? ネロアにも手伝ってもらってるから、気にしなくて良いんだよ」
『ダメ、サケ、エモノ、コウカン』
頑なに受け取ってくれないネロアに僕が困り果てていると、アレックスさんがからからと笑いながら、僕の頭を撫でる。
『ネロアがお前たちを仲間と認めたということだから、好きにさせておやり』
僕が了承すると、ネロアはフシューッと鼻息を荒くし、どこかへ駆けて行った。追いかけっこの鬼役がいなくなったが、僕たちは真剣に午前中の訓練をこなす。レベルアップの効果なのか、僕たちは体力がかなり上昇しているのを実感していた。
昼になり、僕たちが午前中の訓練を終えて大木の根元に戻ると、ネロアが体長1mを優に超える大きな兎を咥えて待っていた。
『ニク、オマエノ、サケ、オレノ』
「ネロア、ありがとう。じゃあ、これどうぞ」
僕はウイスキーが入った瓶を置き、ネロアの鼻先を撫でる。ひんやりしているその体は確かに生気を感じないのだが、グルルと喉を鳴らすその姿とのギャップがなんだかおかしくて、僕はつい笑ってしまう。
僕が鼻先からそっと手を離すと、ネロアは兎をぼとりと落とし、ウイスキーの瓶を咥えてアレックスさんとヴィンセントさん方へと走っていった。残されたのは、息絶えた一羽の巨大な兎。
え……これ、僕たちが捌くの?
僕はちらりと徹の方を見る。徹はため息をつき、これだけでかい肉は捌く前に川に沈めて冷やせというアドバイスをくれた。僕たちは三人で川まで運び、えずきながらもなんとか太い血管を切り、内臓を抜いてから川に落とした。
午後からは、大空と徹は修業に向かい、僕はクズハとともにおじさんたちの元へ向かう。おじさんたちは相変わらず無気力に漂っていた。昨日よりも多くのおじさんたちを天に還した僕だったが、突然目の前が暗くなり、意識が遠くなる。
この世界に来てからこればっかりのような気が……。
目が覚め、僕の顔の上で眠っているクズハをどかすと、半透明なおじさんたちが薄ぼんやりとした目で僕のことを覗き込んでいた。
日はまだ沈む少し前、離れたところでは大空と徹が師匠たちと何やらしているのが見える。おじさんたちをこれ以上昇天させるのは難しいと判断した僕は、食事をつくることにした。
料理といっても兎の肉はまだ食べられないし、どうしよう? 簡単で美味しいあれにしよ♪
作った料理を皿に盛り付けていると、修業が終わったらしい大空と徹がこっちに走ってきた。二人は木箱をひっくり返した簡易テーブルの前に座るなり、口を開く。
「優太、腹減った!」
「美味そうな匂いで集中できねえよ。これ何だ?」
「あはは、コンビーフとジャガイモの炒め物だよ」
僕が作ったのは、茹でたジャガイモとコンビーフをニンニクと一緒にバターで炒めて、塩コショウで味を調えただけのもの。簡単なんだけど、めちゃくちゃ美味しいし、腹もちもいい。それに、お酒のあてにもなるから、師匠たちにも持っていってあげよ。
僕はフルーツ等の準備を大空と徹に託し、料理を持ってアレックスさんとヴィンセントさんの元へと向かった。二人は既にネロアとともにお酒を飲んでおり、賑やかなヴィンセントさんの声が聞こえて来た。
『わははははっ、ヒロは飲み込みがいいわい! わしの若いころのようだ!』
『そうだねえ、トールもユータも良い子で……わたしたちに子がいたら、三人のどれに似ていたのかねえ』
『人は一人ひとり違う! が、できれば儂はアルに似て欲しいのである!』
『ふふふ、私はヴィンスに似て欲しいよ』
そう言いながら、首なし騎士にしなだれかかる黒ローブ髑髏。僕は何か見てはいけないものを見てしまったような気がして、こっそりと引き返すのであった。
特訓の日々は続き、一日に昇天できる半透明のおじさんが100おじさんを超えた頃、僕は夜中に違和感を覚えて目を覚ました。テントの中はほのかに明るく、徹が小さな火を浮かせて本を読んでいた。
「徹、まだ起きてたんだ」
「ああ、これ読んどきたくてな」
「ふうん、あれ? 大空は?」
僕の疑問に、徹は出入り口を指差し、「外」と短く答えた。
「はあ? なんで?」
「見れば分かる」
僕は立ちあがり、訝しげな視線を徹に向けながらテントの出入り口から顔を出す。僕の目に映ったのは──
「うおおおおおお!」
カタカタッ、ヒョイッ。
「ふべらっ!」
──スケルトン軍団の戦争に混じっている大空の姿だった。
しかも避けられて派手に転んでるし……
「はあ……。何やってるのさ?」
「師匠たちがな、大空は『斬る』ことに慣れとけって。前衛の大空がいざというときに動けないと全員すぐに死ぬから。まあ、相手は斬っても死なないスケルトンだけど、人の骨格だから多少練習にはなるだろうってさ」
「……そうなんだ」
僕が呆れや恐怖といった複雑な心境で眺めていると、立ち上がった大空が再度長剣を振りかぶる。
「るあああああああ!! 【万夫不当】!」
スキルを発動したらしい大空は、先程よりも速いスピードで突っ込んだ。長剣が目にも止まらない速さで一体のスケルトンに迫る。
カタカタカタッ、ヒョイヒョイ、ゴツンッ!
「痛てえ!」
今度は転んだだけではなく、白っぽい棒のような何かで背中を叩かれる大空。周囲にいるスケルトンたちはカタカタと笑っているように見えた。
いつのまにか僕の横に立ち、戦いを見つめていた徹が呟く。
「相手は500年間毎日戦争してる戦闘狂だからな。恵まれた天稟ってのをもらった大空でも、いつ斬れることか」
「……寝よっか」
徹は「ああ」と答えながら頷いた。僕たちはテントの中に引っ込み、小火を消して眠りにつく──
「そおおおおおい!! ぎゃん!」
──大空が無事に帰って来れるように、なむなむと祈りながら。
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