雨に天国、晴に地獄

月夜猫

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第二話

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さっきまで何の関係もなかったはずだったし、実際なかった。
なにか、全力で巻き込まれたようなそんな気がした。
「なぜ、雨の中で傘もささずに歩いているんですか。風邪ひきますよ。あと、いい加減無視しないでくださいませんか?」
………は?!
何言ってんのかなこの人?!
言葉は同じはずなのに何を言っているのかかけらもわからない。
「人違いじゃないですかっ?!」
「そんなわけないでしょう。それとも、あなたは蒼司の娘ではないのですか?雨宮蒼司の」
雨宮蒼司の娘。それは確かにわたしだった。
だけれども、それがどうかしたのか。とういか、なぜこの男は知っているのだろうか。
「たしかに蒼司はわたしの父ですが。あなたは父の知り合いですか?」
「そうですね、部下というのが一番近いでしょうか。よかったです。人違いではなかったようで。では、いきましょうか」
そう男は言った。
「はい?」
わたしはさっき全力で“フラグ”を立ててしまったらしい。
本当に“面倒ごと”に巻き込まれた……
まさかのまさか。そんなバナナと言いたくなるような心境だ。
この人はいったいなにを言っているのか。いくら父の知り合いらしいとはいえ、見ず知らずの男性におとなしくついていくわけなんかあるはずがなかった。そもそも、どこに連れていくつもりなのか。
疑問は尽きない。
「どこにつれていくきですか?そもそも、わたしはいきませんが」
「それは困りましたね。あなたをこちらにお連れするのが私の仕事なので。どうしましょうか……」
男性はどこに連れて行く気かというわたしの質問に答えてくれる気はるでないようだった。
「ああ、そうだ。失礼しますね」
男性はそういって、わたしの手首をつかんだ。
「何を…?!」
カシャン
ガラスが砕けるような音がした。
わたしの目の前の世界がぐにゃりとねじれ、わたしは思わず目をつぶった。
目を開ければ世界は一転していた。

どこかの路地のようだったが、すぐむこうにとおりが見え、通りはまるで、時代劇の中のように日本家屋が立ち並んでいるのだった。見る人、見る人全員が着物を着ていた。なにより違っていたのは、人ではない姿を持つ者も多くみえた。
「どこここっ?!」
「かくりよでございます」
男性が言った。
「かくりよ……?」
何を言ってるんだろうこの人。それはいったい何なのか。昔、妖怪が出てくる物語の中で妖怪の住む世界で“かくりよ”という場所が出てきたがまさか、そんなことはないだろう。
「はい。私共あやかしのすむ、あなたがたの世界と重なって存在する世界の一つなのです」
うそん……まさかのまさかだった。
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あけましておめでとうございます
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
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