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白いウサギを追いかけて、帰らない子供たち。
それが示すのはアリスの物語。
赤い女王にトランプ。古い古いおとぎ話

夜光石の輝く部屋の中で僕は考え込んだ。
さて、おとぎ話の当事者にならないためにはどうしたらよいだろうか。
あらがってみる?予想もつかないような行動をして。
それともどうしようもないのだろうか。
いや、諦めたくはない。僕は外から見ていたいのだ。
であれば、現状どうにかするしかないであろう。
そう考えていると柏手の音が聞こえた。
「えーと、自己紹介でもしませんか?見ず知らずなので名前くらいは知っておきたいなあって……」
青年が言った。
確かに。もしかしたら、そっちの方が動きやすくなるかもしれない。
「では私からしましょうか。私はツェンといいます。後は多少魔法が使えるくらいです」

「じゃあ、次は僕が」とファーブラが言った。

「僕はファーブラといいます。ええと。とあるお屋敷の使用人をしています。あ。僕もある程度でよければ魔法使えます!」
……やっぱり、ネコをかぶるのって大切だよね。賭けてもいい。絶対に素のボクだと警戒された挙句に当事者にこそならなくてよくなるかもしれないけど、外野として観察すらもままならなくなってしまうだろう。
ふと、昔知り合いに言われた言葉がよみがえった。『おまえさあ、知れば知るほどあぶねーヤツだよなあ。なんつーかさあ、ニコニコうさん臭い笑み浮かべながら近づいてきて、油断した瞬間にグサリとやってきそう』
ホントに失礼な奴でした。……まあ、話していて楽しかったのは事実ですが。
「あ、あたしはアリアよっ」
アリアという少女が自分の名前を言ったのをきっかけに、ほかの面々も自分の名前を言った。
「さて、自己紹介も終わったことですし、今後のことを考えましょうか」
「そうですね」
「まずはここから出ることを考えましょうか」
「ここに出口など先に進めそうな場所はなかったですか?」
「少なくとも私は知りませんね」
「そうですか……」
やっぱり簡単には進まないか。
「……壁がへこむところならあったわ」
「「「「「え?!」」」」」
「な、なによっ!?」
びっくりするじゃないというアリアにこっちがねと心底思った。
前言撤回。
これは思ったよりも話が進むかもしれない。


「ここよ」
アリアに案内してもらい”へこむ”という場所を押してみる。
……確かにへこむ。
でも、押すだけじゃダメっぽいな?
魔力を流してみる、とかか?

ガコッ

「「「「「え」」」」」
「あ、いけた」
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