時計の魔女の追憶

結月彩夜

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1章

3.

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私が、所属することになったのは、クァール王国魔法師団第2隊解析班だ。
現在の私の仕事は、過去の記録の現代語訳である。古代クァール語と、現代語は文字からして異なっている。
ただ、私は、前衛向きだから何かあれば派遣される。
そのため、古代クァール語を読める人材は少なく、読める人物は後衛部隊に回されることが多い。
私もその口であった。私が王宮に務めるようになり、仕事に慣れてきた3日目のことだった。
「っ!き、緊急通信入りましたあああっ!」
第2部隊の通信担当の同僚が叫ぶ声が聞こえた。
キンッと空気が張り詰める。
私も、通信室に走り込んだ。
「状況を説明せよッ!」
上司である隊長が怒鳴るようにいう。
「同盟国である、サイラン王国からの通信ですっ。サイラン王国は、近いうちに、近いうちに…。」
「なんだっ!?はっきり言わんかっ!」
「っ!近いうちに、沈むということですっ!」
「「「「「はあああっ!!??」」」」」 
「沈むううっ!?」 
「通信担当によると、魔物“アメフラシ”が出現し、サイラン王国を沈めようとしているとのことっ!」
「すまんが意味がわからん…」
隊長が疲れ果てたようにいった。
大丈夫です隊長。私もよくわかってませんから…。
魔物“アメフラシ”については、知っている。
ただし、なぜ、アメフラシが国を沈めようとしているのかがわからないのだ。
「国民の避難に伴い、国民の受け入れを要請したいとのむねです。」
「我々の、一存では、決められん。宰相の所に連絡する。」
そう言って、隊長は退出していった。
しばらくして、戻ってきた隊長は、 言った。
「わが国は、サイラン王国の民を受け入れる。よって、一人でも多くの国民の命を助けるため、我々は、サイラン王国に向かい転移の陣を敷く。これは、決定事項であるっ!」
ずいぶんと、早く決まったなとそう思った。
「『時計の魔女ルー・ルー』っお前は、結界を張るなどして、アメフラシの意識をそらしてくれっ!」
「了解ですっ。」

軍靴のつま先をカツンと音を立てて、石畳に軽くぶつける。
転移方陣──展開
あたりが光って───景色が変わる。
そこは、一面のアオ。
空の青に、水の青。
うつくしい風景がそこにあった。
だけれども、その美しさは、犠牲のもとになりたった美しさだ。
水の青のその下には、サイラン王国の王都があった。
逃げ切れなかった人が其処此処そこここでもだえている。
力尽きてしまった人が浮かんでいる。
ああ、これは、
なぜかは知らないけれども、そう思った。

《うふ。うっふふふふっ!ああ、綺麗だな。やっぱり水がいちばんキレイ。うふふふふ。》

軽やかで、ひどく楽しげな笑い声があたりに響く。
それは、魔物“アメフラシ”の声だった。
ああ、これは、
また、そう思った。
これは、この魔物は、“楽しいから。”“キレイだから。”今回のことを引き起こしたのだ。
なのだから、これは、言葉ではこの魔物とはわかり合うことはあり得ないのだとわかった。
ともかく、私の仕事は“アメフラシ”の足止めだ。
ならば、それを果たすべきだろう。
「さあて、はじめますか。」
魔物“アメフラシ”は、水の魔物である。
ならば、火系統の魔法を使う?
いや、私の仕事は倒すことじゃない。
足止めだ。
ならば、“アメフラシ”の気を引けばいいのだ。
ならば使うべきなのは、水系統の魔法だろう。
魔法のルールは、世界とつながること。
とぷんっ
これで、世界とつながった。
さあ、はじめよう。
まずは──空を駆ける水の竜──
続いて──相手を絡め取る水の鎖──
さあ、こちらを振り向いて?
さあ、遊ぼうよ“アメフラシ”
《なにこれ?》
自分を絡め取って縛る鎖を不思議そうにみて、アメフラシはいった。
そうして、“アメフラシ”は、こちらを振り返った。
《っ!?ニンゲン…?なんでこんなとこにいるの?》
「あなたが、今まさに国1つ沈めようとしているからですが?」
《…?それがなあに?ねえ、きれいでしょう…?きれいだったから、水の中に入れてあげたの。だからね、もっともっと、きれいになったでしょう?》
ああ、この子とはわかり合えないということを私は、再確認した。


───
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