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第4章 後宮潜入編
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夜。
晏寿は楓茗の手を借りて、就寝準備をしていた。
髪を梳いてもらっているとどんどん睡魔が訪れてくる。
「毎日お疲れのようですね」
「うん…、殿下の言動には驚かされてばっかり」
「左様でございますか」
他愛のないことを話していれば、コンコンという扉を叩く音が響いた。
「安里?」
「殿下!?」
扉の向こう側から聞こえた声に驚いて、一気に覚醒する。
慌てて扉を開けると、薄着の京雅が立っていた。
「どうして夜遅くに…」
京雅を部屋の中へと促して、椅子に座らせる。
その間楓茗は隅に控えていたが、京雅がちらりと目配せしたことによってすっと部屋をあとにした。
人払いが済んだところで京雅がじっと晏寿を見た。
「僕なりに夫婦のあり方を考えたんだ」
「はぁ」
そのことをわざわざ報告にきたのだろうかと不思議に思って首を傾げた。
「世継ぎとかさ」
「…」
「それなのに、一緒の部屋で就寝しないっておかしいなって思ったんだ」
「…それで訪れたのですか?」
「うん」
無邪気に笑う京雅にうっすら殺意の芽生えた晏寿は京雅の頭に手刀を落とした。軽くであったが京雅はびっくりした顔をする。
「…いたい」
「痛いわけないでしょう、軽くやったんですから」
叩かれた所をさする京雅。
呆れた目で晏寿はその様子を見ていた。
「いいですか。まだ国のこともわかっていないあなたが跡取りの心配をしてどうするのです。それは今考えることではありません。何事も順序があるのです」
「…」
京雅は頭に手を置いたまま、動かない。
口もぽかんと開いている。
「京雅様?」
「…初めて叩かれた」
「…そりゃあ本来ならばやってはならないことですから」
「へへ」
京雅は何故か嬉しそうに笑う。
とうとうおかしくなったのかと晏寿は心配になった。
「大丈夫ですか?」
「ん、嬉しくて」
「嬉しい?叩かれて?」
「今まではっきりと言ってくれる人はいなかった。皆どこか余所余所しくて。でも、安里は違う。僕のことを本気で見てくれる。僕の知らないことを知ってて、それを教えてくれる。もっと安里のこと知りたくなっちゃった」
「えぇー…」
晏寿にとって予想外の反応だった。
まさか手刀で懐かれるとは思ってもみなった。
いいのか悪いのか、晏寿を見る京雅の目は輝いている。
「ねぇ、もっと安里のこと教えて?今日はいっぱい話したい気分」
「…明日に響かない程度なら」
「うん」
嬉しそうに笑う京雅に晏寿は否定ができなかった。
それから晏寿と京雅は色々な話をした。
といっても晏寿が殆ど話していた。
京雅が次々と晏寿に質問するからだった。
京雅は晏寿の話を本当に楽しそうに聞いていた。
しかし晏寿はだんだん疲れから眠くなり、京雅にそれを申し出た。
「京雅様…、今日はここまでにしませんか?」
「えー、もっと聞きたいよ」
「そろそろ寝ないと明日が辛いです。また明日もお話しますので…」
「…わかった。今夜はここで休むね」
「え!?」
一気に眠気が飛ぶ晏寿。
一方の京雅はきょとんとしていた。
「夫婦だから問題ないでしょ?それに今更僕の寝室には戻れないよ」
「…それもそうですね」
もしこの時間に京雅を帰したとなれば、晏寿から追い出されたのではないかと勘繰られてしまう。
それは避けたほうがいい。
瞬時に晏寿はそう思い、晏寿は許可したのだった。
「では京雅様はこちらでお休みください」
「安里は?」
「私はこちらの椅子で寝ますから」
晏寿は長椅子を指さして毛布を手にする。
しかし京雅はそれを拒んだ。
「駄目だよ、これは安里の寝台なんだから安里が寝なきゃ」
「しかし…」
「そうだ、一緒に寝よう。それなら問題ないよ」
問題大有りだ、と思う晏寿。
「大丈夫、安里には手を出さないから」
「…でも京雅様と同じ寝台に、なんて失礼になるんじゃ」
「僕が大丈夫って言ってるから大丈夫だから。
もう、早く寝よう」
そう言って晏寿を引っ張って寝台に入る。くあ、と欠伸をのんびりしながらもそもそとしている。
最初は京雅に引き込まれた晏寿だったが、寝台のぎりぎりの所まで距離をとった。
だが、それが京雅には気に食わなかったらしい。
「なんでそんなに距離を置くの?」
「…深い意味はありません」
「だから間違いは起こさないから。隙間があると寒いよ」
半ば強引に晏寿を自分の方へと引き込む京雅。
そのまま抱き枕のようにして寝てしまった。
そんな状態で、晏寿が寝つけるわけもなく。
脱出しようにもがっちり掴まれていて。
晏寿はため息をつき、この状況の打破を諦めて目を閉じたのだった。
そして、京雅はこの日から毎晩晏寿の元へと通うようになり、
「お世継ぎも遠くない」
という噂が流れるのには、そう時間はかからなかった。
晏寿は楓茗の手を借りて、就寝準備をしていた。
髪を梳いてもらっているとどんどん睡魔が訪れてくる。
「毎日お疲れのようですね」
「うん…、殿下の言動には驚かされてばっかり」
「左様でございますか」
他愛のないことを話していれば、コンコンという扉を叩く音が響いた。
「安里?」
「殿下!?」
扉の向こう側から聞こえた声に驚いて、一気に覚醒する。
慌てて扉を開けると、薄着の京雅が立っていた。
「どうして夜遅くに…」
京雅を部屋の中へと促して、椅子に座らせる。
その間楓茗は隅に控えていたが、京雅がちらりと目配せしたことによってすっと部屋をあとにした。
人払いが済んだところで京雅がじっと晏寿を見た。
「僕なりに夫婦のあり方を考えたんだ」
「はぁ」
そのことをわざわざ報告にきたのだろうかと不思議に思って首を傾げた。
「世継ぎとかさ」
「…」
「それなのに、一緒の部屋で就寝しないっておかしいなって思ったんだ」
「…それで訪れたのですか?」
「うん」
無邪気に笑う京雅にうっすら殺意の芽生えた晏寿は京雅の頭に手刀を落とした。軽くであったが京雅はびっくりした顔をする。
「…いたい」
「痛いわけないでしょう、軽くやったんですから」
叩かれた所をさする京雅。
呆れた目で晏寿はその様子を見ていた。
「いいですか。まだ国のこともわかっていないあなたが跡取りの心配をしてどうするのです。それは今考えることではありません。何事も順序があるのです」
「…」
京雅は頭に手を置いたまま、動かない。
口もぽかんと開いている。
「京雅様?」
「…初めて叩かれた」
「…そりゃあ本来ならばやってはならないことですから」
「へへ」
京雅は何故か嬉しそうに笑う。
とうとうおかしくなったのかと晏寿は心配になった。
「大丈夫ですか?」
「ん、嬉しくて」
「嬉しい?叩かれて?」
「今まではっきりと言ってくれる人はいなかった。皆どこか余所余所しくて。でも、安里は違う。僕のことを本気で見てくれる。僕の知らないことを知ってて、それを教えてくれる。もっと安里のこと知りたくなっちゃった」
「えぇー…」
晏寿にとって予想外の反応だった。
まさか手刀で懐かれるとは思ってもみなった。
いいのか悪いのか、晏寿を見る京雅の目は輝いている。
「ねぇ、もっと安里のこと教えて?今日はいっぱい話したい気分」
「…明日に響かない程度なら」
「うん」
嬉しそうに笑う京雅に晏寿は否定ができなかった。
それから晏寿と京雅は色々な話をした。
といっても晏寿が殆ど話していた。
京雅が次々と晏寿に質問するからだった。
京雅は晏寿の話を本当に楽しそうに聞いていた。
しかし晏寿はだんだん疲れから眠くなり、京雅にそれを申し出た。
「京雅様…、今日はここまでにしませんか?」
「えー、もっと聞きたいよ」
「そろそろ寝ないと明日が辛いです。また明日もお話しますので…」
「…わかった。今夜はここで休むね」
「え!?」
一気に眠気が飛ぶ晏寿。
一方の京雅はきょとんとしていた。
「夫婦だから問題ないでしょ?それに今更僕の寝室には戻れないよ」
「…それもそうですね」
もしこの時間に京雅を帰したとなれば、晏寿から追い出されたのではないかと勘繰られてしまう。
それは避けたほうがいい。
瞬時に晏寿はそう思い、晏寿は許可したのだった。
「では京雅様はこちらでお休みください」
「安里は?」
「私はこちらの椅子で寝ますから」
晏寿は長椅子を指さして毛布を手にする。
しかし京雅はそれを拒んだ。
「駄目だよ、これは安里の寝台なんだから安里が寝なきゃ」
「しかし…」
「そうだ、一緒に寝よう。それなら問題ないよ」
問題大有りだ、と思う晏寿。
「大丈夫、安里には手を出さないから」
「…でも京雅様と同じ寝台に、なんて失礼になるんじゃ」
「僕が大丈夫って言ってるから大丈夫だから。
もう、早く寝よう」
そう言って晏寿を引っ張って寝台に入る。くあ、と欠伸をのんびりしながらもそもそとしている。
最初は京雅に引き込まれた晏寿だったが、寝台のぎりぎりの所まで距離をとった。
だが、それが京雅には気に食わなかったらしい。
「なんでそんなに距離を置くの?」
「…深い意味はありません」
「だから間違いは起こさないから。隙間があると寒いよ」
半ば強引に晏寿を自分の方へと引き込む京雅。
そのまま抱き枕のようにして寝てしまった。
そんな状態で、晏寿が寝つけるわけもなく。
脱出しようにもがっちり掴まれていて。
晏寿はため息をつき、この状況の打破を諦めて目を閉じたのだった。
そして、京雅はこの日から毎晩晏寿の元へと通うようになり、
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