59 / 133
第4章 後宮潜入編
16
しおりを挟む
晏寿からの文で紅露の行動を知った秀英は悪態をつきたい気持ちでいっぱいだったが、そうも言ってられなくなった。
度々行われていた奴隷の現場視察の核心部分を今日視察に行くのだ。
いつも飄々としている景雲でさえ、どこかピリピリとしていた。
「秀英、準備できたか」
「ああ」
短く返事をして、二人は視察へと向かった。
向かう先はまさに人身売買が行われている場所で、何か一つでも証拠を掴めればというところだった。
身分・顔を隠し、秀英が建物の中に入っていく。中は禍々しい空気が漂っていた。
「御来店は初めてでしょうかぁ?」
一人の男が秀英に近づき、声をかけてきた。
顔は隠しているものの、身につけている物で顧客だと思ったのだろう。
厭らしい笑みを浮かべて、いかにも胡散臭そうだ。
「ああ。少し興味があって、見たいと思っていた」
「そうですかぁ。ではこちらへ」
促されて、秀英は奥へと入っていく。
奥は更に異様な空気が流れていた。
秀英は思わず眉間に皺を寄せる。
それをにおいのせいだと思ったのだろう、男は「ああ、臭くてすみませんねぇ」と軽く頭を下げた。
眉間の皺はにおいのせいではなかった。
呻きと泣き声、そして汚らしい笑い声。
何かが弾けるような音。
この空間全てがおかしいと感じたのだった。
「どういったのをお探しですかぁ?力の必要な労働者?それとも若い娘?」
「種類は豊富なのか」
「へぇ、色々揃ってますよぉ。なんせ各地で攫ってきてますから」
「各地から…力の強い者や体つきの良い者は大変ではないのか」
「普通に向かったって骨が折れるだけですよぉ。コツがあるんですよ、聞きます?」
「いや、いい」
そこまで知る必要はないと感じ、切り捨てる。
そして秀英は各地で起こっていると聞いた神隠しの原因もここではないかと考えだした。
思わぬ収穫があったと思っていると檻が見えたが、暗くて中まではしっかり見えなかった。
「暗くて見えないが、ここに収容しているのか」
「へぇ。数が多いんで、ここともう一か所に入れてます。全部で七、八十はいるって聞きました」
「そうか」
それから男は聞いてもないことをぺらぺらと喋り出した。購入価格や売れ筋、他の顧客の情報まで喋っていた。この男は口が軽い、と思った秀英は質問を投げかけた。
「ここの顧客にあの糸 稜現はいるのか」
「あー…ここだけの話ですよぉ?
稜現様はここのお得意様でして、ぶっちゃけここの売上の八割は稜現様だって聞いてますぅ。
しかも投資までしてくださってるとかも聞きましたねぇ」
「なるほど…色々わかった。今度また来たときに金は揃えてくる。今日は持ち合わせがこれだけだから、お前の懐を潤す程度で収めてくれ」
「えぇ、こんなに!?是非とも御贔屓にっ!」
相当な金額の金の入った巾着を男に握らせて、これでこの男は大丈夫だと秀英は思った。
そして、建物の外へと足早に出ていった。
度々行われていた奴隷の現場視察の核心部分を今日視察に行くのだ。
いつも飄々としている景雲でさえ、どこかピリピリとしていた。
「秀英、準備できたか」
「ああ」
短く返事をして、二人は視察へと向かった。
向かう先はまさに人身売買が行われている場所で、何か一つでも証拠を掴めればというところだった。
身分・顔を隠し、秀英が建物の中に入っていく。中は禍々しい空気が漂っていた。
「御来店は初めてでしょうかぁ?」
一人の男が秀英に近づき、声をかけてきた。
顔は隠しているものの、身につけている物で顧客だと思ったのだろう。
厭らしい笑みを浮かべて、いかにも胡散臭そうだ。
「ああ。少し興味があって、見たいと思っていた」
「そうですかぁ。ではこちらへ」
促されて、秀英は奥へと入っていく。
奥は更に異様な空気が流れていた。
秀英は思わず眉間に皺を寄せる。
それをにおいのせいだと思ったのだろう、男は「ああ、臭くてすみませんねぇ」と軽く頭を下げた。
眉間の皺はにおいのせいではなかった。
呻きと泣き声、そして汚らしい笑い声。
何かが弾けるような音。
この空間全てがおかしいと感じたのだった。
「どういったのをお探しですかぁ?力の必要な労働者?それとも若い娘?」
「種類は豊富なのか」
「へぇ、色々揃ってますよぉ。なんせ各地で攫ってきてますから」
「各地から…力の強い者や体つきの良い者は大変ではないのか」
「普通に向かったって骨が折れるだけですよぉ。コツがあるんですよ、聞きます?」
「いや、いい」
そこまで知る必要はないと感じ、切り捨てる。
そして秀英は各地で起こっていると聞いた神隠しの原因もここではないかと考えだした。
思わぬ収穫があったと思っていると檻が見えたが、暗くて中まではしっかり見えなかった。
「暗くて見えないが、ここに収容しているのか」
「へぇ。数が多いんで、ここともう一か所に入れてます。全部で七、八十はいるって聞きました」
「そうか」
それから男は聞いてもないことをぺらぺらと喋り出した。購入価格や売れ筋、他の顧客の情報まで喋っていた。この男は口が軽い、と思った秀英は質問を投げかけた。
「ここの顧客にあの糸 稜現はいるのか」
「あー…ここだけの話ですよぉ?
稜現様はここのお得意様でして、ぶっちゃけここの売上の八割は稜現様だって聞いてますぅ。
しかも投資までしてくださってるとかも聞きましたねぇ」
「なるほど…色々わかった。今度また来たときに金は揃えてくる。今日は持ち合わせがこれだけだから、お前の懐を潤す程度で収めてくれ」
「えぇ、こんなに!?是非とも御贔屓にっ!」
相当な金額の金の入った巾着を男に握らせて、これでこの男は大丈夫だと秀英は思った。
そして、建物の外へと足早に出ていった。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
自由を愛する妖精姫と、番にすべてを捧げた竜人王子〜すれ違いと絆の先に、恋を知る〜
来栖れいな
ファンタジー
妖精女王と精霊王の間に生まれた特別な存在――セレスティア。
自由を愛し、気ままに生きる彼女のもとに現れたのは、竜人族の王子・サイファルト。
「お前は俺の番だ」
番という名の誓いにすべてを捧げた彼は、王族の地位も未来も捨てて森に現れた。
一方のセレスティアは、まだ“番”の意味すら知らない。
執着と守護。すれ違いと絆。
――これは、ひとりの妖精姫が“特別”に気づいていく物語。
甘さ控えめ、でも確かに溺愛。
異種族の距離を越えて紡がれる、成長と守護のファンタジー。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる