柔よく剛を制す

薬袋 藍(ミナイ ラン)

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第4章 後宮潜入編

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晏寿からの文で紅露の行動を知った秀英は悪態をつきたい気持ちでいっぱいだったが、そうも言ってられなくなった。

度々行われていた奴隷の現場視察の核心部分を今日視察に行くのだ。
いつも飄々としている景雲でさえ、どこかピリピリとしていた。

「秀英、準備できたか」
「ああ」

短く返事をして、二人は視察へと向かった。
向かう先はまさに人身売買が行われている場所で、何か一つでも証拠を掴めればというところだった。
身分・顔を隠し、秀英が建物の中に入っていく。中は禍々しい空気が漂っていた。

「御来店は初めてでしょうかぁ?」

一人の男が秀英に近づき、声をかけてきた。

顔は隠しているものの、身につけている物で顧客だと思ったのだろう。
厭らしい笑みを浮かべて、いかにも胡散臭そうだ。

「ああ。少し興味があって、見たいと思っていた」
「そうですかぁ。ではこちらへ」

促されて、秀英は奥へと入っていく。
奥は更に異様な空気が流れていた。
秀英は思わず眉間に皺を寄せる。
それをにおいのせいだと思ったのだろう、男は「ああ、臭くてすみませんねぇ」と軽く頭を下げた。

眉間の皺はにおいのせいではなかった。
呻きと泣き声、そして汚らしい笑い声。
何かが弾けるような音。
この空間全てがおかしいと感じたのだった。

「どういったのをお探しですかぁ?力の必要な労働者?それとも若い娘?」
「種類は豊富なのか」
「へぇ、色々揃ってますよぉ。なんせ各地で攫ってきてますから」
「各地から…力の強い者や体つきの良い者は大変ではないのか」
「普通に向かったって骨が折れるだけですよぉ。コツがあるんですよ、聞きます?」
「いや、いい」

そこまで知る必要はないと感じ、切り捨てる。
そして秀英は各地で起こっていると聞いた神隠しの原因もここではないかと考えだした。

思わぬ収穫があったと思っていると檻が見えたが、暗くて中まではしっかり見えなかった。

「暗くて見えないが、ここに収容しているのか」
「へぇ。数が多いんで、ここともう一か所に入れてます。全部で七、八十はいるって聞きました」
「そうか」

それから男は聞いてもないことをぺらぺらと喋り出した。購入価格や売れ筋、他の顧客の情報まで喋っていた。この男は口が軽い、と思った秀英は質問を投げかけた。

「ここの顧客にあの糸 稜現はいるのか」
「あー…ここだけの話ですよぉ?
稜現様はここのお得意様でして、ぶっちゃけここの売上の八割は稜現様だって聞いてますぅ。
しかも投資までしてくださってるとかも聞きましたねぇ」
「なるほど…色々わかった。今度また来たときに金は揃えてくる。今日は持ち合わせがこれだけだから、お前の懐を潤す程度で収めてくれ」
「えぇ、こんなに!?是非とも御贔屓にっ!」

相当な金額の金の入った巾着を男に握らせて、これでこの男は大丈夫だと秀英は思った。
そして、建物の外へと足早に出ていった。
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